2015年12月08日

2015年12月の読書

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:9527ページ
ナイス数:317ナイス

台湾で日本を見っけ旅 ガイド本には載らない歴史さんぽ台湾で日本を見っけ旅 ガイド本には載らない歴史さんぽ感想
そして台湾のマンガルポも第二弾が出ていました。ついに「KANO」の舞台でもある嘉義にいったかと思えば日本からの移民が多数暮らしていて今も色濃く往時の姿を残している花連あたりも網羅していてますますマニアックな世界に突入。でもルートを観る限りあまり台北からも離れていないようなので少しじっくりと旅したくなる。さらに台東あたりだと少数民族の生活ぶりも垣間見えたりこれまた映画の「セデックバーレ」の世界だったり…。ウェイダーシェンの世界観が日本人のアイデンティティも呼び起こす現象は何とも不思議かつ興味深く読みました
読了日:11月29日 著者:おがたちえ
なつかしい日本をさがし台湾なつかしい日本をさがし台湾感想
映画「KANO」のプロデューサーでもあるウェイダーシェンの作品なんかで日本統治下の台湾というのがクローズアップされている。この本がでたのは14年夏だからちょっと被るのかな。台北の博愛地区から始まる旅は比較的台北は少なめで台南や高雄など中心。ガイドブックでもほとんど触れられていない地域だけど近年は日本人も随分増えたようだしなんといってもご高齢の方が日本語をしゃべれるので感激する人が多いのも納得。多分三十路ぐらいの著者も案の定昔ならではの人との交流に喜んでいる様子。八田興一が作った鳥山頭ダムが惹かれたなあ
読了日:11月29日 著者:おがたちえ
ビビアン・スーの我愛Taiwanビビアン・スーの我愛Taiwan感想
10年以上前の本なのでかなり情報はアップデートされているかもしれませんが台北はもとよりビビアン出身の台中や父親が経営をしていた中華料理店(現在は閉店)の淡水なんかも紹介していてかなり有意義。セデックバーレでもクローズアップされた少数民族についてもまだアイドルだった彼女は積極的に発言していてこれはこれでかなりアイデンティティが誇示されていて素晴らしいと思った次第。よくよく調べるとこの本きっかけで結構今でも日本人が通う店というのができたみたいで「女娘的店」は不便そうだけど金城武も行きつけらしいから行きたいなあ
読了日:11月29日 著者:ビビアンスー
ニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたちニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたち感想
音頭とはこれまた意表をつく題材でしたが「東京音頭」のできるまでや炭坑節に始まり戦後の音頭ブームの様相。そこからパロディ(スパイクジョーンズや大滝詠一)に誌面を割きつつアイドルやアニメの挿入歌まで多種多様な音頭の世界を読み進めばっちりとはまってしまった。BGMはYOUTUBEで聴きつつ自分の過去にも随分と聴いていたことに気づきます。最後には音頭でDJをしているフクタケ氏も紹介しているが確かにDOMMUNEで放送した時にはえらい数の人が食いついたのは身近だったからでしょう。でも花柳界が起源とは何と最近なのか
読了日:11月29日 著者:大石始
和ラダイスガラージBOOK for DJ ([テキスト])和ラダイスガラージBOOK for DJ ([テキスト])感想
MXテレビの「DISCOTRAIN」を観ていたらマイケルフォーチュニティの解説であのマハラジャグループの総帥・成田勝バージョンについて言及されていてうわ懐かしいと和物の積ん読本をおもむろに読み出した次第。永田一直氏といえばトランスソニックやマニュアルとかテクノや珍品レコードに定評のある審美眼の持ち主。そんな彼が近年力を入れている和物のパーティが本書のタイトル。もはや和物のパーティは珍しくないけどレコードガイドは何だか怪しげなアイテム満載。巻末に幻の名盤解放同盟と対談していてその流れを引き継いでいる印象だ
読了日:11月26日 著者:永田一直
映画秘宝EX ドラマ秘宝vol.1 ~マニアのための特濃ドラマガイド (洋泉社MOOK 映画秘宝EX)映画秘宝EX ドラマ秘宝vol.1 ~マニアのための特濃ドラマガイド (洋泉社MOOK 映画秘宝EX)感想
世界史への興味からチューダーズという海外ドラマにハマり気づけば表紙のウォーキングデッドにすっかり釘付けというまさかの展開になりつつある今日この頃。高校生の頃に夢中になったジョージAロメロの世界で盛り上がっていた自分がこの年でもゾンビ映画を見ているとは思わなんだ。というほど中毒性の高いドラマの世界をかなり濃いメンツが解説しています。当然、ブレイキングバッドなど網羅しつつ最近の作品中心のセレクトは食指が伸びるものばかりです。個人的にはこの「時間泥棒」とどう付き合うかという小文がなかなか心に刺さりました。同感。
読了日:11月26日 著者:町山智浩,青井邦夫,アサダアツシ,♪akira,杏レラト,池田敏,伊東美和,大内稔,大森望,岡本敦史,キシオカタカシ,桑原あつし,堺三保,澤井健,神武団四郎,セルジオ石熊,添野知生,田亀源五郎,てらさわホーク,中野貴雄,長野辰次,長谷川町蔵,馬飼野元宏,松江哲明,真魚八重子,光岡三ツ子,森直人,柳下毅一郎,山崎圭司,鷲巣義明
できれば服にお金と時間を使いたくないひとのための一生使える服選びの法則できれば服にお金と時間を使いたくないひとのための一生使える服選びの法則感想
良書。そろそろ若い服装もきついなあという人が世の中の標準的な服装のイメージに寄り添いつつちょっと自分なりの個性をトッピングしたいという学生服の裏ボタン探しのような本だ(ちょっと大げさ)。確かに一つのショップに絞ってそろえつつ少しアレンジを加えるという方法はなかなかに参考になる。ユニクロや無印の効用なんかも書いていてこれは40代以上にはかなり意欲が湧いて出てくるかも。著者はコンサバな感じなのであとは自分で好きな服に合わせればいいのでしょうね!
読了日:11月26日 著者:大山旬
今井正映画読本今井正映画読本感想
今年に入って突如見だした今井正監督の発言やプロフィール、全作品紹介などファンにはたまらない内容。どちらかというと社会派監督としてのイメージが強かったけど往時の記事や山際永三さんの今井正論などを読む限りあくまで社会に寄り添った巨匠監督であるというのがわかる。とはいえ独立映画というカテゴリーの中でテレビ作品の製作をしたり屑拾いまでしたというのも苦労が忍ばれる。ひめゆりの塔の賛否両論ぶりなんかも意外で戦後すぐの戦争をいかに描くかというイデオロギーな時代なのが隔世の感。あくまで庶民の娯楽を貫く今井監督が素晴らしい
読了日:11月26日 著者:
仏教図像学: インドに仏教美術の起源を探る仏教図像学: インドに仏教美術の起源を探る感想
正直こういう本が欲しかったです。仏像が誕生する以前からインドの仏像そして中国や日本に渡ってきた仏像の種類やいわゆるアトリビュート的なものさらに印相に至るまで事細かに書いてあるのは著者が学生用の教科書として準備していたという原稿だからだろう。だがこれがまた仏像鑑賞の上ではとてつもなく意味のある解説でそれぞれの仏像がどのようなメッセージを持って作られているのか。それだけでなく日本の場合は習合という縄文と古代神道とのハイブリッドで生まれた部分や庚申信仰(道教)なんかも入っていて実に芳醇な味わいがあり興味津々です
読了日:11月24日 著者:田中公明
芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本感想
お手軽な本かと思って手に取ってみましたが後半はかなり硬派。絵の見方みたいなものをさらりと紹介しているのですがそれぞれ著者のそれまでの経験を積み重ねたような実践的かつ面白い鑑賞の仕方が書いてあって面白かった。買い付けをするイメージだったり、とにかく1つの作品の前で3分間立ってみるというのは国立近代での藤田の作品展の時に実践してみたら思いのほか色々な言葉が自分の中から出てきて面白い経験をしました。あとカフェを有効に使うという普段使いの美術館というのはこれからの高齢化社会を考える上では本当に重要だと思ったりした
読了日:11月23日 著者:藤田令伊
プロレスで〈自由〉になる方法プロレスで〈自由〉になる方法感想
プロレスに関するロジックでは一家言ある鈴木みのるの言葉を集めたもの。元々雑誌の連載なのでリング上の出来事とリンクした話が中心になるので新日本の再ブレイクとそこからスズキ軍をノアリングに持ち込むプロセスとも重なるので「外様レスラー」の矜持みたいなものを感じさせる。外様は最終的にトップにはなれない訳でそこでみのるがどうモチベーションを保つのか。プロとは何かという興行論でもある。以前に武藤が会場人気と興行人気という言葉で興行での選手の本質をいい得ていたがみのるの場合はもっとロジカルで実に頭の良さに恐れ入るばかり
読了日:11月23日 著者:鈴木みのる
いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)感想
橋本治さんがまさか自分の老いについてここまで赤裸々に書いているとは思わなかった。さらにバブル期にマンションを購入してそのローンをひたすら払い続ける日々。まるで団塊世代のサラリーマンのようなありような告白にいささか面食らってしまったが、いつになく読みやすい文章で大満喫。自身の病気や入院もどこかしらユーモアに書いているもののそこからにじみ出てくる寂寥感なんかは今までの橋本さんの文章からは感じることができなかった気がする。でもそこがいい。今までのようなどこか他者に対して突き放したような感じの先がもっと読みたい
読了日:11月23日 著者:橋本治
むなしさの正体 正しい幸せの求め方むなしさの正体 正しい幸せの求め方感想
正直、書道家が「むなしさ」についてなんで書いているのかと思いきやこの人の略歴から意外にもサラリーマンなどを経験して書道家になったという。その時の経験がこの「むなしさ」のベースになっている。つまり競争の中で求めながら生きていくとそこにはむなしさが生じるという。つまり比べない、競争に加わらないというのは仏教そのものの教えのように思える。依頼者から書を求められた時に色々話を聞いてそこに念をこめるという。漢字の由来などからクライアントのメッセージを読み取るあたりはさながらカウンセリング。本書もそんな内容だ
読了日:11月23日 著者:武田双雲
仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン感想
身近だけど意外と知らない宅配の実態を「ユニクロ帝国の光と影」の著者が書いているからガンガン突っ込んでいるのは当然のこと。あのいけ好かないユニクロの感じとは違いヤマト運輸は最終的には取材にも応えているのがとても面白い。それでもやはり潜入をモットーとするような宅配の中枢でのバイトの体験はやはり衝撃的。ベトナム人を中心とした外国人がオペレーションできているようになっているというバックヤードはやはり衝撃的。一方、佐川急便は創業者の佐川清の叩き上げぶり等は興味深いし、運転手に話を聞いたり実に行き届いた取材で良書です
読了日:11月23日 著者:横田増生
これからの「売れるしくみ」のつくり方 SP出身の僕が訪ねた、つくり手と売り手と買い手がつながる現場これからの「売れるしくみ」のつくり方 SP出身の僕が訪ねた、つくり手と売り手と買い手がつながる現場感想
ケトルの人が書いているのでかなり突っ込んだ話かと思いきやSPというセールスプロモーションの話が中心。ようは顧客に興味を持たせる施術としてのケーススタディが中心なんだけどちょっと読んでいて大きなバジェットのエピソードが中心でがっかり。大予算のSPならばうまくいく確率があがるのは当然のこと。もっと小バジェットのありようを知りたかったかも。でもケトルは出版も志向していて本屋大賞のエピソードなんかはほほえましくもあり力強くもあった
読了日:11月23日 著者:石原篤
山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015 (講談社+α文庫)山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015 (講談社+α文庫)感想
序章は山口組の分裂以降に書かれた分だが、元の本は11年頃なのでまだ弘道会が我が世の春だった時期に書かれたものだという。それなのに著者の視点は常に一定していて弘道会の厳しい回避の取り立てや一人勝ちの状況に苦言を呈していた。くしくもそれが今回の分裂では会費やトイレットペーパーや水の押しつけなど資金の吸い上げに神戸側が百姓一揆のように謀反を起こしたという構図で説明している。しかもヤクザを取り巻く状況は暴対法や国際的なマフィア資金の締め付けなどもあり今後一つの解答として税金の追徴というパターンで追い込むのだという
読了日:11月23日 著者:溝口敦
安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)感想
「ドンキホーテ」の創業者の一代記。なんでこのタイミングで出たのかと思いきや経営の第一線を後進に任せたからということ。とはいえ前の著書でもその独特のガッツのある語り口は健在でその背景には貧乏やモテたいという強烈なハングリー精神にある。以前にはあんまり触れていなかったフリー麻雀の話や運についての言及は独特の野生勘や勝負勘が働いたりととにかく面白い。その人材に対する考え方や海外進出なども基本的には逆ばり。それこそが弱者の兵法なのだと気づいてしまった。もたざる物は素人ならではの感覚でどん欲にいけというエールだ
読了日:11月23日 著者:安田隆夫
過剰な二人過剰な二人感想
林真理子さんの認識を改めたのが「野生のすすめ」だった。一方の見城さんは初期の本が面白かったのだが幻冬舎の株式買収騒動のあたりから中々本音を書かなくなっていたのでちょっと寂しい限りだった。そんな二人が16年間も絶縁状態だったのは知らなかったがきっかけが「本が売れていない」と見城さんが指摘したことだという。だが作家というのはしぶとい。そこから見事に自分のコンプレックスを作品にして今回の対談でも何のてらいもないのが心地よい。見城さんはまだそこに経営者としての防衛本能が働く。どこか編集者を演じている。そこが面白い
読了日:11月23日 著者:見城徹,林真理子
新・日本のワイン新・日本のワイン感想
日本のワインに興味のある人であれば必読の本かもしれない。前半は日本のワイン史をなぞりつつ、大手のメーカーのワイナリーの紹介から、全国の蔵元のガイドも実に懇切丁寧であります。特に気になるエリアのワイナリーの項目を読むだけでも楽しいが意外になかなか由来のわからない大手のメーカー発のワイナリーは実は日本のワイン史を語る上では欠かせなかったりしてちょっと認識が新たになりました。それにしても地域で見た時の東北地方がもうちょっと盛り上がってほしいと思ったり山形のワインのうまさも物語で納得したりしました
読了日:11月23日 著者:山本博
日本人にとって美しさとは何か (単行本)日本人にとって美しさとは何か (単行本)感想
高階先生の本はどうしてもベースとなる知識がかなり必要なのだけれどこの本は講演などをまとめたものなので比較的読みやすかった。中でも冒頭。日本人が絵と文字を併存させながら美術を独自に開花させていったことに注目していてさらに万葉がなの美しさ。古の日本人が詩を読むということの敷居の低さなどに西洋人が驚いたという例を解く。他にも平面的な構図だったりするけれど、そのモチーフが写実ではなく心象風景だったり時間の経過も含めて描いている。そこには文字を含めた物語性もあったり「写実」ではなく「見えないもの」を書くベースがある
読了日:11月21日 著者:高階秀爾
男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋感想
「女たちよ!」とかで厳しい言説の中にもするどい視点満載だった湯山さんが今度は男性を斬るというので楽しみにしていたのだがこれまた痛快でありました。何しろ今時の男はとどのつまり「金と出世モテ」で虚勢を張るところに行き着くというのがオトコの本音だという。そこで昨今のカフェブームで職場以外のエスケープ場所を見いだすもののそこでも「金と出世モテ」を求めるというパラドックスに陥るという話は納得。さらにはカフェ文化以前の「リラックス」の雑誌なんかや渋谷系のテキストからのオトコのこじらせぶりは知識偏重で旧態然ぶるに愕然
読了日:11月19日 著者:湯山玲子
世界はこのままイスラーム化するのか (幻冬舎新書)世界はこのままイスラーム化するのか (幻冬舎新書)感想
島田先生とイスラームに詳しい中田さんは東大の宗教学での先輩後輩というだけあって中田さんの舌鋒はいつもより若干おとなしめか。それでもイスラームというのが仏教や聖書のように作者がイマイチわからんのと違いムハンマドが聞いた神の声にムハンマドの言行録を起点としてそこからイスラム法学者による法の解釈や生活習慣に及ぶまでの規則などにも話が及ぶ。カリフ制の再興を願う中田さんはそこでもISについても言及していて批判的な論旨も非常に明確。最高幹部がカリフの系譜にあるというのも驚かされる。かなりイスラームのイメージ変わった
読了日:11月19日 著者:島田裕巳,中田考
哲学な日々 考えさせない時代に抗して哲学な日々 考えさせない時代に抗して感想
東大の教鞭をとる哲学者が書いたエッセイなのだが決して難しくないのがみそかな。哲学というのは一般的には過去の哲学者の難しい理屈を噛み締めるように足跡を学んでいくのが常だがそこをこの先生は自分の身の回りに置き換えて思索する。そしてん散歩する。やっぱりギリシャの哲学者や外山滋比古先生よろしくの歩く哲学はいいのかもしれない。また論理学でも大家であるだけに論理学の思考法はイチイチ文章を考える上での道筋を考えていくのに適しているのかと思ったり最近の反知性主義の批判もありつつとても受難で幅広い論考で堅苦しくないのがいい
読了日:11月19日 著者:野矢茂樹
河合隼雄の幸福論河合隼雄の幸福論感想
またまた河合先生の本。こちらは東京新聞に連載されていたエッセイをまとめたものだけど幸福についての議論があれこれ綴られている。その中でいつものように断定調ではないが幸福に見える人はどういう人が多いのかということで気づきがあったと書いている。ひとつには夢中になるものがあるということ。それと自分のよりどころになるものがあるということを書いていた。この幸福感は確かによくわかる。仏教でいう「三昧」だったりキリスト教にある聖母信仰の現場をスペインで見た時に感じたことだったりするのがある種の境地なのかなと思ったりしたな
読了日:11月16日 著者:河合隼雄
三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町 (幻冬舎新書)三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町 (幻冬舎新書)感想
一般的に遊郭のイメージって五社英雄だったりするんだけれど女性のドロドロの部分はさておき実際の暮らしぶりや当時のお金のかかり方なんかを現在の貨幣価値に置き換えたりしながら現代人が読んでもわかりやすく解説しているのが本書。太夫と花魁の違いとか正式な遊郭と明治以降の遊郭、さらには岡場所といった公認の場所以外での売春の実態なんかも書いていてなかなか興味深かったです。それにしても後半では男色の衆道の話も出てくるがそちらの方がよほど男女間の関係とも違い「粋」とは正反対の情念の世界が感じられて怖く思ったのは確かだ
読了日:11月10日 著者:堀江宏樹
日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編感想
ああっ、やっぱり旅行っていいなあと思える本。最初に出てくる北海道の砕氷船や流氷に乗るのも楽しい。でもこの本の表紙に出てくる宮崎の高千穂峡の旅が読んでいて神楽に自然にへんてこな真鍋大師の仏像を観ているとこれまたなんと日本のヘタウマな信仰の態度についほくそ笑んでしまう。やっぱり貴族の文化とは違う素人的な素朴さと自然は日本的だと思わされてしまうばかりなのであります。高知の沢田マンションも家族に内緒でいってみたい超ワイルドな感じもいい
読了日:11月10日 著者:宮田珠己
[新版]こころの天気図[新版]こころの天気図感想
最近、禅のお坊さんが書いている本を読んでいると河合先生の文章を思い出した。この何とも弛緩して人間の怠惰や悩みに対して肯定的に受け止めるというのはまさに河合先生のセラピーそのものではないか。そう思って久々に読んでみると大それたことは書いていないのだがそれでも読後感がどこか脱力した自己肯定感が残るというのは不変なのだなあとしみいるのでありました。振り返れば20代前半ぐらいに河合先生の書物から感じる仏教感というのが今の坊さんの本を読むと既視感を感じる理由がわかった。多分、その手の仏教エッセイは自分には必要ないな
読了日:11月9日 著者:河合隼雄
私の異常な愛情―不肖・宮嶋流 戦争映画の正しい観方私の異常な愛情―不肖・宮嶋流 戦争映画の正しい観方感想
報道カメラマンで戦場や自衛隊の撮影でも定評のある宮嶋カメラマンがこれまで観てきた戦争映画をメジャーから超マニアック作品まで紹介している。基本的に戦争映画を男の子の通過儀礼的にとらえている御仁だけに男臭い作品になると俄然筆致がエキサイトしてくるというのが読んでいてどの作品が面白いのかを知る上での参考になる。名作でも「スターリングラード」のようなソ連の横暴ぶりを知るような映画はなかなか日本人にはなじみがないけど丁寧に解説もしたり「ワイルドギース」のような傭兵にもシンパシーを感じていたりと見たい作品も増えたな
読了日:11月9日 著者:宮嶋茂樹
八紘一宇 日本全体を突き動かした宗教思想の正体 (幻冬舎新書)八紘一宇 日本全体を突き動かした宗教思想の正体 (幻冬舎新書)感想
八紘一宇の塔を形作っている石というのはかつての「東亜」の思想に感銘した芸術家が第二次大戦中の植民地からもってきたという話を聴いて驚いた。しかもその石を返還しろと今更中国などが言いがかりをつけるのも驚いた。「八紘一宇」という戦争のイデオロギーの象徴のような言葉は元を正せば田中智学という日蓮宗の信者が広めたものだという。石原莞爾や宮沢賢治しかり日蓮の教えというのは戦前から天皇を国家の中心に据える「国体」の理論的な支柱の役割をしていた。宗教家が意識的に国家論を示していた時代。まさに「政」と宗教というのは不可分だ
読了日:11月9日 著者:島田裕巳
誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす「わびさび」 (光文社新書)誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす「わびさび」 (光文社新書)感想
この前国立博物館に兵馬俑を観に行ったら兵馬俑には元々色が塗られていたのを知ってえらく驚いた。日本の仏像も然りで確かに色を塗られていた往時の菜食を再現するのが本書の著者の仕事でもある。帯にある阿修羅像の色の皮膚の鮮やかな赤もさることながら衝撃的だったのが俵屋宗達の「風神雷神」の色彩のド派手なこと。どちらかというと琳派のような洗練のイメージだったがむしろ辻惟雄先生の「奇想の系譜」に連なるものであるなあと思った次第。むしろド派手な色彩感覚というのが日本人の色の基層にあるのではないかと感心してしまった。目から鱗
読了日:11月9日 著者:小林泰三
大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ (筑摩選書)大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ (筑摩選書)感想
仏教というのは何とも不可解というのか人によって解釈が随分違うなあという問題意識から手に取ってみてかなり疑問も氷解した。大乗というのは仏陀を超人的な人格としてとらえるのかあるいはサンガ(出家者集団)を率いていた人間としての捉え方の違いが大きいようだ。お布施を巡る金銭の授受を認めるか否かというのが根本分裂の大きな要因だったのだろう。他にもストゥーパを巡る遺骨が仏陀の本性なのか違うのかなんかの議論は仏像の誕生とも関連しているエピソードのようで興味深い。転生についての考えの違いも根本部分はこの辺がきっかけのようだ
読了日:11月9日 著者:平岡聡
ブッダは実在しない (角川新書)ブッダは実在しない (角川新書)感想
いわゆるブッダというのは「覚りを開いた人」ということでいわゆるブッダ個人ではなく様々な人がいたというのが本書の趣旨。今でいう阿羅漢の逸話と創作が結集させたのが様々なお経なのだろう。そうした中でブッダのエピソードが固定化していくというプロセスを最近の仏教研究からつまびらかにしている。しかも仏教の研究はかなり遅くてまだまだ進んでいないというのが正直なところらしくかなり不明な点が多いなあというのが印象。日本に来ている大乗仏教がかなり独自な展開をしていることを考えると仏教というのは宗教というより死生観に近いな
読了日:11月9日 著者:
偶然の科学偶然の科学感想
複雑系といういってしまえば当たり前のテーマは自分の中にも切実なものとして考えるようになってきた。A→Bに至るプロセスには考えるべき要素がありすぎて整理しきれない、ましてや予測もできない。著者の処方箋は起きたことをその場でエイヤッと対応せいというまさかのアドリブのすすめなのであります。これってでも戦略ストーリーの楠木健さんのいう経営者(意思決定者)のセンスが問われる部分でトヨタなんかはOJTとして仕組み化しているがそれは有効かと考えさせられる。カイゼンの揺るがなさもそこにあるわけで示唆に富むエピソードも満載
読了日:11月2日 著者:ダンカン・ワッツ
「居場所」のない男、「時間」がない女「居場所」のない男、「時間」がない女感想
タイトルがショッキングだったのでエッセイの類いかと思いましたが意外としっかりしたワークライフバランスの本でした。居場所のない男へのエールはさほどなく(笑)むしろ中心にあるのは都市で暮らす女性たちの動向への危惧。いわゆる出産年齢の問題や育児の為のインフラの不足を嘆くのですがやはり現役の主婦でもあるだけに心の叫びのようなものは切実でありました。この男女のすれ違いというのはどうしても戦後における家事と労働の役割分担の時代から低成長の時代となった日本の女性が家事+仕事という二重の負担を負うようになったのが大きいな
読了日:11月2日 著者:水無田気流
発信力の育てかた:ジャーナリストが教える「伝える」レッスン (14歳の世渡り術)発信力の育てかた:ジャーナリストが教える「伝える」レッスン (14歳の世渡り術)感想
いわゆるネット時代の記者の取材の作法術なるイメージなのだけれど読み進めていくとメディアリテラシー、つまり昨今の怒濤の玉石混淆の情報とどう付き合うかみたいなものが中心のテーマとして浮かび上がってくる。商業ジャーナリズムに固執するあまり後半はいささかハードルの高い項目(他人に読んでもらえとか…)が並び現実的ではないけれど、ブログにしろツイッターにしろ匿名と記名で状況は随分違う訳でその辺のプロではない人の啓発にスポットを当てるべきだったかなあと思った次第。でも一次情報に当たれとかは今の時代こそ有効なアドバイスだ
読了日:11月2日 著者:外岡秀俊
水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)感想
なんとなく読んだことがあったのは「芸術新潮」が初出だったからか。鬼太郎登場の最初のバージョンが読めたり水木先生の原点にある戦争体験についても断片的にしか読んでいなかったので色々気づきがあった。最近になって鬼太郎に出てくる妖怪の多くが江戸時代にあった妖怪の系譜を辿っていたのも何となくわかっていたがこうしてみると日本の妖怪やハロウィンのホラー的な要素の原点が水木先生ではないかと思ってしまう。どこか恐ろしくてユーモラス。そこには目に見えないものの営みを身近なものとして扱う希望の側面もある。擬人化は希望の証なのね
読了日:11月2日 著者:水木しげる,呉智英,梅原猛
〈癒し〉のダンス  「変容した意識」のフィールドワーク〈癒し〉のダンス 「変容した意識」のフィールドワーク感想
アフリカのクン族ではダンスが共同体の中で占める意味が大きいという。その一番の部分が病気の治癒ということなのだけれどそれ以外にも通過儀礼の部分もあるらしい。このフィールドワークのレポートでは未開とされる部族の生活や儀式、自然観なんかも垣間見える。曖昧でいて言葉だけではないエネルギーを上昇やそれを病気の人の治癒に使うというエネルギーや魂の交換みたいなものが現代人の呪術やスピリチュアルとは違う具体的なイメージの共有の中で生活に根ざしているのが面白い。仮面にしろダンスにしろある種の体験のための儀式なのだと再認識
読了日:11月2日 著者:リチャード・カッツ
中村元の仏教入門中村元の仏教入門感想
仏教学の大家であった中村先生の大学の講義をまとめたもの。中でも初期の上座と大乗になる以前の釈尊の教えとはどういうものであったのかというのをヴェーダや初期の仏教聖典などをあげながらしゃべっているので非常にわかりやすかったです。仏教の難しいのは日本だと大乗というかなり間口の広いしかも民衆の教化のために呪術やローカルの信仰を取り入れてきた経緯があるだけにその歴史的な変遷の部分を取り除いたエッセンスのようなものが垣間見えるのがよかった。さらには分裂した際の経緯なんかもわかるし仏教というのは宗教というも道徳に近いな
読了日:11月1日 著者:中村元
おしゃべりな腸おしゃべりな腸感想
腸が身体の中でも重要な器官だというのは藤田紘一郎先生とか三木成夫先生の本でも再三指摘されているが外国の見識で知れたのは大きな収穫。しかも腸万能という感じではなく具体的に腸の司る機能について検証していく。いわば糞袋であるという視点から健康を左右するのと共に口臭や唾液との相関関係などもあったり実に興味深い視点が満載でした。でも脳への影響では鬱病はもとより道徳観もそう。ストレスがたまると下痢をする現象なんかはわかりやすい例かもしれない。腸内フローラや免疫系のシステムのエピソードも実に参考になったかも
読了日:11月1日 著者:ジュリア・エンダース
中国人の頭の中 (新潮新書)中国人の頭の中 (新潮新書)感想
中国の市井の人々は日本についてどのようなステロタイプなイメージを持っているかというのを知るのに最適な本。長年、中国に滞在している著者の皮膚感覚でのエピソードが満載だ。中でも抗日ドラマが随分と浸透しているみたいで「日本人なのにいいやつだ」といういわれ方が一般的らしい。でもそうだろう。中国の内と外をシビアに分ける考え方にすれば日本人は外に存在する関係性だが中国語を話す日本人というのは内側に入るための資格をある程度クリアしていることなのだから。あと安心安全の国である日本は周囲に壁をもたなくていいのは大きな強みだ
読了日:11月1日 著者:青樹明子

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