2016年05月06日

2016年4月の読書

2016年4月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:5791ページ
ナイス数:153ナイス

スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち (ShoPro Books)スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち (ShoPro Books)感想
今月はこの大著に随分時間がかかりましたが充実の内容。DCコミックスのライターを務める著者が調べあげたアメコミのヒーローものの歴史の概説でありスコットランド出身ならではの80年代に起きたイギリスのライターによるアメコミの作品群のブームについても言及していて日本にはなかなか伝わりにくいアメコミの歴史を知る上では第一級の資料でもあります。どうしてもDC出身なのでバットマンなどの話題が中心だが作画と脚本が分業になっているアメコミの世界をライターの変遷で捉えていてこれこそ映画監督で楽しむ映画と近いものがあったと実感
読了日:4月29日 著者:グラント・モリソン
覚えない記憶術覚えない記憶術感想
前著の読んだら忘れない読書術をバージョンアップさせた内容でむしろ記憶するには事前の準備が大事という点を強調したり、ストレスコーピング的なメンタルやコンディションをパフォーマンスがいい状態に維持しながらインプットしていきましょうという内容がほとんど。結局、記憶の焼き付け方などはそれほど大きく変化するものではないだけにより汎用性の高い解説にしたというところか。個人的にはこの一連の作業は時間がかかるからより時間の管理術が大事になっていくのではと思うばかりです
読了日:4月28日 著者:樺沢紫苑
読んだら忘れない読書術読んだら忘れない読書術感想
前半と後半にある読書の効用とか本の選び方は外山滋比古先生とかの方がためになるから蛇足。本のタイトルにある忘れない部分ではメモやマーカーをひいて記憶に定着させる。しかも1週間に3回アウトプットを含めてするというのは納得。以前にみらじゅんさんも「記憶に定着させなくちゃ」といそいそとメモをとっていた感覚と一致する。しかもわくわく感をもって読書するというのはちょっと難しいと思うのだが「モノより思い出」よろしく旅するように読書をすればいいというのも至極真っ当だ。読書の冊数を減らしつつある現状だけに気づきも多かった
読了日:4月28日 著者:樺沢紫苑
京都のツボ  識れば愉しい都の素顔京都のツボ 識れば愉しい都の素顔感想
以前にも著者で京都在住の柏井さんの本は読んだがかゆいところに手が届くというかどこか覗き見趣味的に京都の知られざる一面を紹介してくれるのがいつも楽しい。おばんさいが京都の家庭料理の質素なありようだという話や直裁的な表現を避ける京都人のコミュニケーションのありようなど本当に面白い。しかも鍾馗さまと鬼瓦が向かい合わせにならないように屋根に配置する(お互いに邪気をはねつけあうかららしい)とかちょっとした古の都ならではのエピソードも微笑ましい。今ちょっと京都への興味が薄れているからまた盛り返したら読み直そうと思う本
読了日:4月27日 著者:柏井壽
江戸の健康食: 日本人の知恵と工夫を再発見江戸の健康食: 日本人の知恵と工夫を再発見感想
小泉先生の本なのでゲテモノや発酵食品の紹介と思いきや今回は至って真摯に江戸時代の食生活とその知恵を探求しています。結構今の日本の食生活にも残っている天ぷらやソバの効能だったり甘酒が夏の暑さを乗り切るための栄養食品だったりとか目から鱗の話も多い。中でも印象的なのがクジラの様々な食べ方や部位の頂き方などを解説しているページで日本人の食文化の中で実に固有の文化遺産としての意義が大きいなあと思うばかりでこの手のグローバルスタンダードにあわせるがあまりに消え去っていく食べ物があるというのも理不尽な気がします
読了日:4月27日 著者:小泉武夫
故人サイト故人サイト感想
故人サイトというタイトルがインパクト絶大。このタイトルでぱっと気づいたのが「32歳ガン漂流レボリューション」という著書が単行本化した編集者の奥山さんだったけどその範疇は広い。しかしブログだったりネット上のログというのは果たして死後どうなるのかというのは大きな問題で本でも紹介されているブログのいくつかをのぞいたがスパムなどで荒れ果てているものもあれば、管理人がいてそのまま存続しているものもある。故人の記録って本人の遺言でもあればいいのだが事故死したブログとか読んでいてい悲しくなる。すごく色々考えさせられた
読了日:4月27日 著者:古田雄介
KISSジーン・シモンズのミー・インクKISSジーン・シモンズのミー・インク感想
KISSのジーンシモンズがビジネス書を書いているというだけでも興味津々で手に取る。中身はどちらかというとセルフヘルプ的な内容だけどイスラエルから移住してきて身を起こしていくというアメリカンドリームの体現者でありセルフプロデュースの手法についても述べていて小難しいビジネス書よりも遥かにためになる内容ではないか。それでもあくまで成功するまでは節約せよとか恋愛や家族よりも仕事を優先しろというのは彼の持論を読み進めるうちに納得するから素晴らしい。しかもリアリティ番組にも出ていたエピソードも微笑ましくDVDで観たい
読了日:4月26日 著者:
中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ感想
この本は抽象論に陥りがちな中小企業のゴーイングコンサーンを知る上で実践的で尚かつ役に立つような内容だ。中でも資金繰りのことと儲けの仕組みをいかに作るかという点に誌面を割いていてそれこそ企業の存続の本質であるというのはよくわかる。そしてその先には節約であったり銀行との付き合い方だったりまともな節税のありかたについてもきちんと説明していて表紙の怪しい帽子のイメージも最後まで読むと払拭されること請け合いだ。多分、自主制作に近い本だと思うけどかなり踏み込んだ経営論で個人的にはとても参考になった。何度も手に取りたい
読了日:4月26日 著者:鈴木和宏
言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)感想
最近出た「読まなくていい本の読書案内」と副読本とも言える内容。橘さんの考え方にある合理性だったり科学的な部分がこの数十年の進化論とその周縁にある科学の進歩についてその成果をのべている。その本質的な論議は世の中の問題は99%解決しているといってもいいのかも。人間における環境要因と遺伝要因はそれぞれ一定の条件とともに調整統合されているがそれはどこまでいっても種の保存という進化の行動様式の範疇から抜け出せないという視点でもある。だがそれを知ることによって自意識ってもっと変わるのではないか。そう思わざるを得ない
読了日:4月25日 著者:橘玲
本質を見通す100の講義本質を見通す100の講義感想
著者の森さんって小説家らしいけど小説は読んだことなし。エッセイのみというのは森さんの場合は遠藤周作だという。本当にそうだ。小説に手が出なくてもエッセイが好きな著者っている。そんな人だ。見開きの文章の中に恐妻家ぶりもありつつ小説のテレビ家の話もある。著者が好きなのがどこまでも悪口をいっていても未来にある種の楽観があることだ。過去より今の方が良くなっている。便利にもなっているからきっと今後もよくなるといいなあぐらいな読後感がとても誠実に感じるばかり。特に仕事の取り組み方も威張るでもなく卑下もしない姿勢がいい
読了日:4月25日 著者:森博嗣
これが「買い」だ:私のキュレーション術これが「買い」だ:私のキュレーション術感想
マイクロソフトの社長だった成毛さんって軽やかに仕事のキャリアを捨てて投資家になったりHONTOを作ったり人を巻き込むのが上手い。その本質にあるのは帯にもある逆ばりの発想だ。いつ儲かるかわからないけれどもディスカウントされて下がっている株式に投資していつ実を結ぶかわからないというのがあるのを楽しんでいる感覚というのがこれこそ投資に勝つ人だというのが肌感覚で気づいてしまった。それに圧倒的な合理主義なんだけどホリエモンのような身もふたもない感じがないところまでいかないあたりが日本人的で養老さんとも近い気がしたな
読了日:4月25日 著者:成毛眞
分類脳で地アタマが良くなる 頭の中にタンスの引き出しを作りましょう分類脳で地アタマが良くなる 頭の中にタンスの引き出しを作りましょう感想
マッキンゼーのMSCEに似た手法でなるほどと思った次第
読了日:4月17日 著者:石黒謙吾
明日の幸せを科学する(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)明日の幸せを科学する(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
この前橘玲さんの本を読んでいたらこの科学の進歩がもたらした知見の数々はそれ以前の学問的成果を軽く凌駕してしまうようなインパクトがあるなあと実感する今日この頃。そういえばこの手の幸福論はそれこそギリシャの哲学者からずっと討論されてきたが科学の分析はかなりその大枠については捉えつつあるなあというのが率直な感想。著者は幸福を分類すると感情と道徳、判断の幸福の3つに分けている。これはマグローに近いかもしれない。ただ人間は未来を想像することで幸福を味わうという生き物であり誤り対し落胆する前頭葉の働きに着目している
読了日:4月17日 著者:ダニエル・ギルバート
めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワードめくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード感想
全編著者の書いたイラストがこれでもかと書いてあるのでいわゆるハウトゥーマンガ的なイメージで読むとかなりの高度な内容。基本的には現代アートの黎明期デュシャンから現代までのアーティストの紹介といわゆるその潮流を解説した内容。後半になるほど現代進行形のアートの最前線をかいま見ることができるが「現代アート」時代がもはやプレ現代の枠にはめ込まれているというのがよくわかる。バンクシーとか好きな人には物足りないかもしれないけど網羅的に知るにはかなり重宝。よくよく考えれば今に生きる人には現代アートこそわかりやすいジャンル
読了日:4月17日 著者:筧菜奈子
世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ世界史の逆襲 ウェストファリア・華夷秩序・ダーイシュ感想
駐シリア臨時大使の著書だったので身構えて読んだけどシリアの状況を踏まえて読むと大規模戦争の時代が終わり国境を問わない局地戦や紛争が噴出する時代はむしろ非常にカオスな時代に時代に突入したことを示唆する。その端緒となったのが三十年戦争を機とするウェストファリア秩序と呼ばれるもの。オスマン帝国の解体に中国の台頭という地勢上異なるエリアでの動向を踏まえつつそれぞれ解説している。イスラム、中東圏についてはほぼイスラム学者の中田考先生の史観を重なるし中国の華夷思想はこれまで随分言われているが難民のリアリティが心に残る
読了日:4月17日 著者:松本太
大武道!  vol.1大武道! vol.1感想
格闘技通信と紙のプロレスの編集長だった人たちが作ったムック。それだけにプライドK-1の絶頂期とそれ以前の総合格闘技の独自の進化を遂げていた時代に立ち返ろうとしているあたりが面白い。でもこの人たちの圧倒的な残念ね点は興行に進出してしまっていることで元極真の数見さんのインタビューとか当時を知る人には懐かしいんだけど興行に出したがるスタンスがどうも誌面の端々から出ていて嫌な気がした。どこか傍観者で面白いからやってくださいよ的な部分が欲しい。あと先日亡くなった堀辺師範は強さを可視化されて残念。本当に惜しい人でした
読了日:4月17日 著者:
マンガで学べる仏像の謎 (単行本)マンガで学べる仏像の謎 (単行本)感想
マンガってわかりやすく仏教の世界観も解説しているのでかなりわかりやすい初心者向き。それはそれでいいけどちょっと中級者ぐらいだと物足りないかも。でもマンガを通じて仏像の種類を覚えるにはいいかもしれない
読了日:4月9日 著者:田中ひろみ
鬱屈精神科医、占いにすがる鬱屈精神科医、占いにすがる感想
「占い師が一番悩みが多い」というのはよく言われるけど精神科医もしかり。ましてや学問的に自分の内面を分析していく明晰な文章はここでも健在。読んでいるとなるほど過去の自分に向き合い母親に愛されたいという渇愛が文章の中でまるで教会での懺悔のように赤裸々に吐露していく。それは歳をとって自分の居場所がなくなっていくことに対する焦燥であったり老いに対する恐れでもある。そこで占い師にあえて飛び込み会話の中でぼろぼろと号泣する場面が印象的だ。人に話すことでなぜ救われるのか。何かに身を委ねる経験に内省を深める後半もユニーク
読了日:4月9日 著者:春日武彦
ゾンビ映画大事典 (映画秘宝COLLECTION)ゾンビ映画大事典 (映画秘宝COLLECTION)感想
これはもはや趣味の域ではないですね。ゾンビ映画の歴史に加えそれぞれの作品のレビューが300以上もある。なんなんだこれは…と手に取って愕然としてしまった。実際ゾンビ映画って駄作が結構あるのでまさに好きこそ物の上手なれである。しかもおおむね世間の評判が頼りになるジャンルでもあるので最近のウォーキングデッド以前のシーンはほぼ網羅できていると確信できた。それでもやっぱりジョージAロメロだつたりサムライミだったり監督の作品群の素晴らしさがゾンビのように伝播していった歴史もわかって楽しかったかも
読了日:4月9日 著者:伊東美和
日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術 (講談社ARTピース)日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術 (講談社ARTピース)感想
日本の絵画の保守本流が淋派や狩野派の流れからすると辻惟雄先生の「奇想の系譜」、さらに先にあるのが「おとぼけ」や「素朴」などの流れではなかろうか。前半には白隠などの禅画や水墨画に加え、題材としての寒山十得のようなちょっと気味が悪いものも視野に入れていて面白い。この系譜というのはある種の「文人画」と同様に職業的でない画家とかが結構日本の中では独自の位置を占めているというのがわかる。それゆえの素朴さだったり稚拙さだったりするのだけれど背景には様々な物語を絵画で文脈づける文化があるなあと思わされるばかりだ
読了日:4月9日 著者:金子信久
好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則感想
個人的には「経営漫談」と読んでいる楠木健先生の新刊。サイトに寄せられた質問に答えているんだけどスタートアップ関連のアホみたいな自慢の質問にはまともに取り合わないのが好感持てます。結局楠木先生のロジックにはストーリーとしての経営者のロジックだったり「好きなことに夢中になれ」「集中と注意はトレードオフである」という過去の著作の金言を質問の解答のキラーフレーズとしており込む一貫性があるのが面白い。他の学者の先生は金言の持ち込み方や例の出し方がワンパターンですがその隘路には当てはまらない「漫談」ぶりを今回も堪能!
読了日:4月7日 著者:楠木建
ひとりビジネスの教科書: 自宅起業のススメひとりビジネスの教科書: 自宅起業のススメ感想
この手の本って00年代の初めに藤井孝一さんの「週末起業」からそのブームは何度もあるけどこの時期に及んでそのノウハウの蓄積というのはかなりのものだなあというのが雑感。著者は情報商材とかで売っていそうな内容も紹介していて教科書というのは言い得て妙と言えそう。ただ個人的には起業している人でセルフプロデュース的に異業種交流会なんかに参加している人というのがちょっと苦手なのでそんな雰囲気も本から感じたのも事実。ネットでの起業というのはどコストがかからないからいいのだけれど死屍累々の状況をみているだけに(?)がつく
読了日:4月3日 著者:佐藤伝
ブッダも笑う仏教のはなしブッダも笑う仏教のはなし感想
やっぱりしゃべりの商売の人の講話は面白い。幼き頃から写経していたという笑い飯の哲夫さんの本。メインは仏教の歴史といわゆる経典に由来するブッダのエピソードを紹介するのがメイン。それだけにとどまらない蘊蓄や仏教教団の変遷や日本での展開も触れていますけどブッダのエピソードはおそらく何度も話しているからかとても面白く読めます。こういう物語を通じて人間は世の真理である「法」を学んだり規範や道徳を身につけるのでありましょう。物語が人間に必要であるという視点で考えると宗教の持つ教典の意味についてちょっと再認識しましたわ
読了日:4月3日 著者:笑い飯哲夫

読書メーター
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2016年04月07日

2016年3月の読書

2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:29冊
読んだページ数:6555ページ
ナイス数:185ナイス

佐藤優さん、神は本当に存在するのですか? 宗教と科学のガチンコ対談佐藤優さん、神は本当に存在するのですか? 宗教と科学のガチンコ対談感想
中村うさぎさんとの対談も面白かったけどお互いキリスト教系の学校出身ということもあっていささかキリスト教以外には対立項がなかった。今回は竹内久美子さんという科学専門家との対談。ドーキンスの「神は妄想だった」から会話がスタートするのはスリリング。竹内さんは読者の素朴な「なぜ神を信じるの」と直球な質問。そこには啓蒙主義以降のプロテスタントの「心の中にいる」という言説とそれ以前のカトリックの「福音派」の進化論を否定する方向に向かうという解説なんて聴いたこともなかったw。キリスト教の神に対する考え方の疑問も氷解した
読了日:3月31日 著者:竹内久美子,佐藤優
節約する人に貧しい人はいない。節約する人に貧しい人はいない。感想
ニュースサイトの編集者である著者が自己啓発本を書くとは思ってもみなかった。しかし「ウエブはバカと暇人のもの」での厳しい批評眼は健在でこれまでの自身の金銭感覚だけでなく「虚栄心」がいかに無駄であるかと説くとともにこれまでのお金の話をしていく。ベースにあるのは固定費に近い家賃をいかに安くするか。そして家賃のウエイトが大きい人ほど見栄っ張りで社会や会社の変化で年収が下がった時に対応できないと喝破する。結局は「足るを知る」的な低く暮らすことでも生活を楽しむというスタンスは清々しくもある。投資の失敗談も赤裸裸だ
読了日:3月31日 著者:中川淳一郎
資本主義がわかる本棚 (日経プレミアシリーズ)資本主義がわかる本棚 (日経プレミアシリーズ)感想
水野和夫さんの「利子率革命」という歴史観には圧倒的な説得力があるんだけれどその背景には膨大な読書と検証の手続きがあったというのはこの本をよむとつくづくわかる。それにしても菟集という人間の欲望が海への航海に繋がりそれが利息の発生だったりそしてフロンティアとしての金融空間からサーバースペースへの広がりと帝国主義的な大国の思惑などは水野さんの史観を通してみると実にありありと見えてくるのだから不思議だ。あの柔らかい表情から垣間見える冷徹な人間の征服欲からの転換が求められるのは行き詰まっている資本主義の帰結なのかも
読了日:3月30日 著者:水野和夫
ランニング思考──本州縦断マラソン1648kmを走って学んだことランニング思考──本州縦断マラソン1648kmを走って学んだこと感想
外資系企業から起業してNPOの代表もしているという御仁の体験的マラソン日記。メインは本州縦断マラソンのエピソードと日記なんだけど最初にでてくる佐渡島のウルトラマラソンの話が面白い。それはマラソンを人生のプライオリティにしている人たちの朗らかで豪快な日常も微笑ましく描いていて楽しく読めた。ただいかんせんこの著者を手助けする女子がでてくるのがいらっとしたかもw
読了日:3月29日 著者:慎泰俊
オレって老人?オレって老人?感想
伸坊さんのとぼけた文体を久々に堪能した。赤瀬川さん亡き後、この飄々とした文章を読む機会が減っていたので正直ほっこりしました。老人は楽しい
読了日:3月29日 著者:南伸坊
アートの入り口 美しいもの、世界の歩き方[アメリカ編]アートの入り口 美しいもの、世界の歩き方[アメリカ編]感想
この本を読んでいたら90年代のスタジオボイスを思い出した。しゃれたアートや写真の情報はその本から入手していた。あれから20年あまり現代アートの中心地としてのアメリカは揺るぎないものを思わせる。そして戦後にアートのアイデンティティのない世界からトップランナーに躍り出るには絵画の新たな潮流や斬新な映像に写真の技法と言った「ルール」や「発明」があったからに他ならない。その手法は結構デザインや広告などで間接的に消費されていて現代人のビジュアルやアメリカのイメージとも連なっているという米国歴史の蓄積を感じさせられた
読了日:3月29日 著者:河内タカ
蚕: 絹糸を吐く虫と日本人蚕: 絹糸を吐く虫と日本人感想
蚕という装丁の大きな文字を見て懐かしい感じがした。祖母の家の納屋にはかつて蚕を飼っていて夜ともなるとムシャムシャと桑を食べる音がしたという話を思い出す。自分が小さな頃には蚕はいなかったけどそのイメージは映画のモスラにも通じる。そう、日本の農家の原風景には蚕を育てていたというのがこの本の中から浮かび上がってくる。そしてそれが信仰の対象になり桐生市では白滝姫伝説にも連なっているというエピソードばかりか生人形まで作られていたというのには驚くばかり。個人的には豊蚕信仰の変遷が日本人の信仰のありようが感じられた良書
読了日:3月29日 著者:畑中章宏
「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)感想
「黄金の羽根の拾い方」という海外資産投資の鏑矢となった本からまさかの知の最前線まで網羅する作品を生み出すとは正直驚きであります。読書案内もさることながらその底流にあるのは自然科学の成果が人文科学のそれをはるかに凌駕しているという事実。分野は複雑系に進化論、ゲーム理論に脳科学と功利主義だ。それぞの分野は行動科学や生理学に統計学も駆使しつつ日々アップデートされているという話で行動科学ではおなじみの囚人のジレンマやべき分析なんかもさらりと書いていますがかなり高度。フロイトのこき下ろしぶりも容赦なくて驚くばかり
読了日:3月26日 著者:橘玲
もう迷わなくなる最良の選択: 人生を後悔しない決断思考の磨き方もう迷わなくなる最良の選択: 人生を後悔しない決断思考の磨き方感想
スマナサーラ師の本は最近ちょっと出すぎなので遠ざかっていましたがこれは仏教に限定しない人生訓が満載でかなり違う視点で読めた。あえて自分の選択の基準が「理性」なのか「感情」なのかと問う。その上で感情による判断は99.9%間違っていると喝破する。この感情なんてものはというある種のラジカルな考え方が結構初期の仏教なんかにはあってゾクゾクする感じか。理性を育むためには仏教では修行になるのだろうがこの本では「レッスン」と置き換えたり愛情を否定したりするのも面白い。うまく生活に取り入れられる部分だけ真似ればいいと思う
読了日:3月24日 著者:アルボムッレ・スマナサーラ
ぼくらの仮説が世界をつくるぼくらの仮説が世界をつくる感想
講談社出身の佐渡島さんが漫画家のエージェントとマネジメント会社コルクを創設したのが12年のこと。その契機がドラゴン桜だったり宇宙兄弟だったりするのが古く感じるが個人事業主である漫画家が作品に集中できる環境を整えるという意味ではかなり斬新なモデル。これが会社としてまわすには結局人気作家を抱えるということなのだがそれを既存の「情報→仮説」から全人的直感に基づく「仮説→情報」に落とし込むというのが佐渡島さんのビジネス論なのだがこれは可視化は勿論言語化するのも難しいテーマで具体例は面白いけどちょっと消化不良でした
読了日:3月24日 著者:佐渡島庸平
スピルバーグ その世界と人生スピルバーグ その世界と人生感想
スピルバーグとルーカスは幼心にださいと思っていた。王道のSFでのハリウッド大作。しかし時間がたつにつれそれもまたよしと思える境地になりましたw。しかもスピルバーグ自身はヒット作と社会派作品を交互に出して良識派の映画人としてその地位は揺るぎないのも事実。著者はスピルバーグと親しくその発言もかなり網羅しながら多様な作品をデビューから丹念に紹介。ヒット作はもちろん「カラーパープル」から始まる社会派の作品群も結構誌面を割いているばかりかインディジョーンズをバッサリと切っていたりとなあなあになっていない評も見事です
読了日:3月24日 著者:リチャードシッケル
日本人はどこから来たのか?日本人はどこから来たのか?感想
これまで縄文時代あたりまでの興味でしたがこの本を読んで一気に石器時代のホモサピエンスの広がりについても俄然関心が湧くような本。アフリカから誕生した新人がその後3万8千年前頃にはオーストラリアやシベリアなどに移動。そして様々なルートを通じて日本にも到着していたという変遷を石器などの事実から積み上げていくのが途方もない。しかも対馬に来た人類は神津島に石を採掘するために航海までしていたことや南方ルートを辿ってきた人々が台湾から日本まで100キロも航海していたのではないかという仮説は現在進行形で検証するのも愉快だ
読了日:3月24日 著者:海部陽介
食の日韓論食の日韓論感想
韓国料理は韓流ブームとともに日本にも紹介された感じがなきにしもあらずだが日韓関係の冷え込みとともに落ち着いている。その一方で著者によれば日本食の韓国での進出ぶりは目を見張るものが多いという。そうした中で韓国産のアワビやパプリカは日本にもかなり輸出されているというから日本と韓国の食のつながりは深い。だが韓国に置ける日本食はもはや日本食ではなくローカライズされていておそばやとんかつは日本の味とは全く別な進化を遂げている現状をレポしている。そうした中で冷麺を日韓の架け橋として取り上げる視点がユニークではあるかも
読了日:3月22日 著者:八田靖史
大脱出――健康、お金、格差の起原大脱出――健康、お金、格差の起原感想
良書。人間の幸福とは何かーという問いに対しついてまわるのは経済に寿命の問題。それを健康とお金に絞って議論したのがノーベル経済学賞もとっている著者の最新作。中でも世界の中でも最貧国でもあり経済成長もしているというアンビバレンツなインドを研究しているだけあって格差の問題も言及しているが健康と寿命の部分にかなりのウエイトをかけていて西欧諸国の寿命の伸びを感染症と慢性疾患で捉えて分析しているのがユニーク。西欧はインフラの改善で衛生環境がよくなり感染症による胎児の死亡が激減。慢性疾患も薬物の研究開発で変化しつつある
読了日:3月21日 著者:アンガス・ディートン
モンスター大図鑑 (ネコ・パブリッシングのビジュアルガイドブック)モンスター大図鑑 (ネコ・パブリッシングのビジュアルガイドブック)感想
海外ドラマのマイブームからなぜかホラー映画を再び見続ける日々になりつつある中で今更のおさらいもありつつ過去のモンスターに想いを馳せる本。著者のジョン・ランディスの名前を聞いたことあるなあと思ったら「狼男アメリカン」の監督もさることながら「ブルースブラザース」もそうだった。そのホラー映画に対する造詣の深さもさることながらサムライミのインタビューとかで何とも敬意を払っている様子から気づく。そのモンスターの起源や恐怖って人が持つ普遍的な人格や共感覚に深く根付いていてそれが擬人化されていく歴史の重みを堪能しました
読了日:3月21日 著者:ジョン・ランディス
ドキュメンタリーは格闘技である: 原一男 vs 深作欣二 今村昌平 大島渚 新藤兼人 (単行本)ドキュメンタリーは格闘技である: 原一男 vs 深作欣二 今村昌平 大島渚 新藤兼人 (単行本)感想
原一男監督の作品は大体見ているけどそのパーソナリティは本人が直接的に出演していないので「しつこく被写体を追う人」というイメージにすぎなかった。「CINEMA塾」というイベントでの巨匠の面々との対談をまとめた対談集。これがまさに原監督の人となりがよくわかりかつドキュメンタリー作品論でもあるのが面白い。何しろ白眉なのが最初に登場する深作欣二監督との対話。やたらと「共演した女優と性的関係を持つと後の撮影はしにくくないか」という疑問で後に登場する今村昌平にも聞いているから相当気になっていたのかな。何とも人間臭いw
読了日:3月21日 著者:原一男
線で読み解く日本の名画線で読み解く日本の名画感想
美術の本は好きだけど中心にあるのは美術史的な見方だったりする。そうした中で技法についての一般向けの解説書は中々いいのが見当たらなかったりすがこれは歴史的に過去からなぞっていて非常に読みやすかった。鳥獣戯画をここでも取り上げているがその漫画の原点と言われた作品がなぜここまで日本の美術史において意義があるのかは後の絵草紙になぞられる物語の時間的推移を見せるという点やシンプルな線で写実ではない日本美術の特性がすでに確立していたことにも着目している。そうした線を巡る物語は水墨画に至るという文脈解説の手腕は見事です
読了日:3月17日 著者:安村敏信
愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史感想
文士と恋愛って相性がいい。宇野千代さんだったり寂聴さんの過去の恋愛話も面白いがこちらに出てくる12の物語はストーカーあり掠奪愛ありだったりするが壮絶なのは吉野せいさんのエピソードだ。70代にして夫の混沌という詩人の死去からようやく解き放たれて書いた記録文学の評価のすさまじさもさることながら貧困の開墾農家で子育てに奔走した人生を思うとその凄まじいまでの情熱が文章の行間から読み取れてうなってしまった。また近松秋江という色に狂った作家が京都の芸妓に捨てられたあげく正宗白鳥と女の取り合いをする話は色に溺れて素敵だ
読了日:3月17日 著者:梯久美子
水上マーケットの朝、アヒル粥の夜 あっちこっちベトナム旅ごはん水上マーケットの朝、アヒル粥の夜 あっちこっちベトナム旅ごはん感想
南北に長いベトナムの地図が表紙にある。それは実に多様な地域性があることに気づくのはページをめくるたびに感じられた。南部のホーチミンと北部のハノイがまったく別の気候だと知らないレベルのベトナムの知識しか持ち合わせていなかっただけに目から鱗の話が多数。北部はなんだか鶏にしても何にしてもかなり少数民族の影響が大きいような食生活だしフランス統治下のバインミーのようなフランスパンの食事とかが日常の中にあってかなり興味深い。しかもハノイはかなり冬場も寒いとかフォーはハノイの方がおいしいって納得。焼き鳥屋通りも気になる
読了日:3月17日 著者:高谷亜由
美の考古学: 古代人は何に魅せられてきたか (新潮選書)美の考古学: 古代人は何に魅せられてきたか (新潮選書)感想
考古学(つまり古代以前の人)の時代の日本人が美を感じていたか。それはイエスであろう。では何に対して美しいと感じたのか。それを発掘された土器や道具、古墳から考えていくのがこの本の企みだ。著者は「物時計」という概念を持ち込む。物の形を観てそれを新しく感じるか古く感じるかという視点。そして物地図は民族性を体現する。日本においては中国や朝鮮の物地図も取り込みつつ素朴段階→複雑段階→端正段階を経るという。これは世界共通のようだ。小林秀雄は「装飾性」「物語性」に分離して東日本の複雑期には物語を感じる。現代美術も同様だ
読了日:3月17日 著者:松木武彦
ゾンビ映画年代記 -ZOMBIES ON FILM-ゾンビ映画年代記 -ZOMBIES ON FILM-感想
ウォーキングデッドの大ブームでつい手に取ってしまった。個人的なゾンビ映画はジョージAロメロのゾンビで止まっていたんだけどその後もものすごい勢いでスプラッターや28日後…なんて作品も出ていてついつい本を読みながら随分作品を観てしまいました(笑)。でもロードオブザリングのピータージャクソンとか人気の作家ってブレイク以前に低予算のゾンビ映画を手がけているケースが多々あってやっぱりゾンビという素材は何だか知らないんだけど人を魅了する部分があるんだなあと思った次第
読了日:3月16日 著者:オジー・イングアンソ
Wassup! NYC_ニューヨークヒップホップガイド (音楽と文化を旅するガイドブック)Wassup! NYC_ニューヨークヒップホップガイド (音楽と文化を旅するガイドブック)感想
オールドスクールからミドルスクール(デラとかトライブとか)のあたりが好きな人にはたまらんだろうな。ニューヨークのクールハークがパーティをしたスポットからラッパーの経営しているファーストフード店まで網羅していてこれは思ったよりもマニアックでうれしい。しかもビースティのミュージックビデオにも登場する場所も紹介されていてこれは期待していないスポットなので「おおっ」とたじろいでしまったのは言うまでもない。しかもエリアの紹介もブロンクスから始まるあたりもわかっていらっしゃる。ヒップホップの歴史を知らなくても楽しめる
読了日:3月16日 著者:水谷光孝
世界を食べよう!  ―東京外国語大学の世界料理―世界を食べよう! ―東京外国語大学の世界料理―感想
この本は旅行本のようでありレシピ本でありとてもユニークな企画。世界の様々な土地を研究する人たちがフィールドワークで集めた食の文化誌でありおいしそうな写真もたっぷりでしかもそれぞれの国の食文化を紹介しているのが面白い。意外と韓国のジョン(お好み焼きと天ぷらみたいな油の揚げ物)だったり生春巻きが簡単そうだったりしたかと思えば、旧ソ連圏の食事のボルシチみたいな煮込み料理の文化圏もあったりして本当に世界は広いと思わされる。個人的にあんまり情報のない中東圏の食事が知らないレシピだわおいしそうわでなんだか興味深かった
読了日:3月16日 著者:
市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)市川崑と『犬神家の一族』 (新潮新書)感想
春日太一さんって優しい顔をしながら本音がズバリとはいることがある。時代劇本では司馬遼太郎の司馬史観の問題点を斬りつつ今回は吉永小百合の監督クラッシャー論。市川崑を日本映画の人柱とまで言う。そこまで自己主張が強い訳ではない人柄だったりパートナーである和田夏十が亡くなってからの迷走ぶりも書いていたりしてなるほどとうならざるを得ない。個人的には犬神家だしそれがタイトルになっているのだけれど市川崑のキャリアから考えるとかなりの後期なのがわかる。そして黒い十人の女とか小西康陽の再評価でようやく陽の目を見たのかと驚く
読了日:3月16日 著者:春日太一
神社の解剖図鑑神社の解剖図鑑感想
神社がどこから来たのか。そして形式や神の系譜などもわかりやすい。同社のビジュアルシリーズはとても親切!!
読了日:3月7日 著者:米澤貴紀
絵解き「江戸名所百人美女」 江戸美人の粋な暮らし絵解き「江戸名所百人美女」 江戸美人の粋な暮らし感想
ここまで完全に江戸時代の浮世絵を解説した本はないかもしれない。出典は3代目歌川豊国という人が書いた「江戸名所百人美女」だ。これを時代考証の専門家が見事な解説するのがこの本。場所にモデルまでもわかるし様々な衣装や飾りなどからその人がどういう背景があるのかもたどっていく。西洋美術のアトリビュートではないがある種のサインを本から読み取れてビジュアルも見事。編集力の勝利
読了日:3月7日 著者:山田順子
ヒット曲でわかる! ROCK&POPの音楽理論 コンパクト・ガイドヒット曲でわかる! ROCK&POPの音楽理論 コンパクト・ガイド感想
すごくベーシックな音楽理論の解説書なのですが最近のヒット曲がサンプルで挙げられていてとてもわかりやすいのでした。後半にジャンルの解説もあってこの本から得られることが多い
読了日:3月7日 著者:ジュリアウィンターソン,ポールハリス
ラーメンの語られざる歴史ラーメンの語られざる歴史感想
そもそもこの本ってアメリカ人が書いたとされるのであるがちょっと怪しい(笑)。その博覧強記な内容でラーメンの歴史に肉薄している。流行のラーメンの蘊蓄よりも麺の素材である小麦が日本でどのように浸透していったか。あるいは支那そばと言われるように外国人の料理人がいかにになっていたか。さらには安価な食事として田舎から都会に出てきた人たちのソウルフードとして認知されていったかなどを考察しているのがメイン。むしろ80年代以降のラーメンブームについては他の本に任せてしまっている麺がむしろ誠実。日清食品の話がタブー的でよい
読了日:3月4日 著者:ジョージソルト
やせるおかず 作りおき: 著者50代、1年で26キロ減、リバウンドなし! (小学館実用シリーズ LADY BIRD)やせるおかず 作りおき: 著者50代、1年で26キロ減、リバウンドなし! (小学館実用シリーズ LADY BIRD)感想
この本のレシピはやせるというのもさることながらそんなに高くない食材が満載で一品あたりの食費がそれほどかからないのがいいかな。それとあまり多くの食材を使わずに作る点が他のダイエットレシピとは違う気がします。ヒットしたのもうなづけます。あとダイエットレシピ特有の寂しい感じがないのもいい。
読了日:3月4日 著者:柳澤英子

読書メーター
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2016年03月18日

2016年2月の読書

2016年2月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:9322ページ
ナイス数:230ナイス

つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)感想
縄文時代ひいては歴史というのは常にアップデートされているのだなあと思わされる一冊。縄文時代という概念もそもそも石器時代との対照ではなく元を正せば土器の文様だったり貝塚の発見などの発掘されたものから規定していくがこれが二転三転していたというのだから面白い。特に縄文というのを日本の独自のアイデンティティを結びつけるような動きが戦後の考古学の動向の中であったりしたという。一方で人類学的には縄文時代には既に原日本人ともいえるずんぐりむっくりとした骨格の骨が発見されているというから驚き。日本人とは何か問い直したい
読了日:2月27日 著者:山田康弘
脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち感想
前作の日本を捨てた男たちにはフィリピンに渡り女性に捨てられてホームレスのような暮らしをする人が出てきた。それを読んだ時にフィリピン人とか東南アジアの女性に惚れて失敗したり散財する男性というステレオタイプな日本人と東南アジアの女性の物語もありつつそれだけにはとどまらない多くの渡航例が出てくる。その先鞭となった女性は本の中ではマニラ暮らしを満喫していたがその後、老人ホームに入居する際に騙されて最終的に身ぐるみはがされて日本に帰国して死んだそうだ。金の無心をして著者と決別する男性などとにかく人間臭い
読了日:2月27日 著者:水谷竹秀
『罪と罰』を読まない『罪と罰』を読まない感想
古典の作品って意外と読んでいないのが多い。ドふとエフスキーの罪と罰もその代表的な作品。しかも罪と罰を読まないまま4人がそれぞれの情報の範囲で(一部訳した翻訳者やテレビであらすじを見た人だったり)順番にストーリーを勝手に想像を膨らませる。その中心にいるのが超適当だけどいちいち笑わせてくれるのが三浦しをんさんでこの人の天真爛漫ぶりと数々の作品を読んできた読書家としての一面も見えたりして罪と罰をちゃんと読まなくてもすっかり読んだ気がするのは気のせいか。本当にストーリーは覚えなくてもいい気がした
読了日:2月27日 著者:岸本佐知子,三浦しをん,吉田篤弘,吉田浩美
身辺図像学入門―大黒からヴィーナスまで (朝日選書)身辺図像学入門―大黒からヴィーナスまで (朝日選書)感想
文脈というのを意識するようになったのは西洋美術のアトリビュートや仏像の持ち物から読み取ることを学んだからだ。絵画やデザインの題材もしかりで七福神や八仙人、寒山十得みたいなものもある。中でも驚いたのが福助の由来の俗説だがあまりにもひどい昔ならではの語源もありこれは非常に1個1個知っているだけで世界が広がる。水引が生魚を示すものだったりとイチイチ学びが多い。こういう本をもっと読みたい今日この頃
読了日:2月27日 著者:岡泰正
一回半ひねりの働き方 反戦略的ビジネスのすすめ (角川新書)一回半ひねりの働き方 反戦略的ビジネスのすすめ (角川新書)感想
平川さんのデビュー作がまさかの2回目の復刊らしい。どうも以前に読んだことがあったようなので既読感もあったんだけどそれはそれで小商いのすすめに繋がるような起業論でありモチベーションでもありました
読了日:2月27日 著者:平川克美
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)感想
タイトルは柳沢健さんの「1976年のアントニオ猪木」の翻案。98年というCD売上が最高だった時期の女性アーティストを扱っている。ロッキンオンの出身だから椎名林檎なんかの論考は読みやすかったけどaikoはちょっとその世界観を表現できずに菊地成孔の文章で楽曲構成になってしまったのはちょっと残念。正直aikoや浜崎みたいな同性人気の強いアーティストをいかに男性の評論家が書いてくれるのかという素朴な期待もあったのだがちょっと食い足りない。その分、宇多田は完全にロッキンオン的なバイオで振り返る手法が功奏していたかも
読了日:2月27日 著者:宇野維正
情報の強者 (新潮新書)情報の強者 (新潮新書)感想
毎週、伊藤さんのポッドキャストを聞いているのでこの人の情報の取捨選択力というのはなかなか的を得ているというか英語圏のNY TIMESやウォールストリートジャーナルを読みこなしてグローバルな文脈(すごくオーソドックスな経済の流れや政治の解説)をしているので参考にしていた。その伊藤さんの情報の取り込み方を読んでみるとそんなに特別なことはしていない印象。ただここでも定点観察と時間のない中でのいかにネット上のノイズを排除していくかというのに腐心しているのがわかる。さらにインプットとアウトプットのルーティン化かな?
読了日:2月21日 著者:伊藤洋一
宗教に関心がなければいけないのか (ちくま新書)宗教に関心がなければいけないのか (ちくま新書)感想
小谷野さんのフィールドである古今の文学をあげつついかに日本の近現代史の中で宗教的なテーマ性が強いかというのを紹介している。それもそのはず、著者の小谷野さん自身も誰よりも死の恐怖から逃れられずにいる訳で実はタイトルと真逆な宗教的な人でありました。そこで宗教性と宗教への関心を切り離していて結局、宗教が持つ集団制や原理的な部分に拒否反応を示しているのが結論。宗教=組織でありオカルトでなく事実が個人主義を軸とする生き方だと高らかに宣言していて何とも痛快な着地点に脱帽するばかり。オカルトの否定も徹底していて愉快だな
読了日:2月21日 著者:小谷野敦
プロ格闘家流 「できる人」の身体のつくり方 (イースト新書Q)プロ格闘家流 「できる人」の身体のつくり方 (イースト新書Q)感想
修斗のトイカツといったら派手なファイトスタイルで結構懐かしいとか思いつつたくさんのジムの経営しているやり手の経営者になっていたとはそれだけで驚き。しかも運動によるダイエットに着目していてその項目も筋トレというよりは柔道の練習でやっているエビだとかブリッジとか補強でやっいた項目があるのは格闘技好きにはちょっと信用できるなあ。食事についても至ってまともで体のいいものをとるという原則から低GIを推奨していたりするのもいいかも。有酸素運動よりも無酸素というのは石井直方さんと一緒だしどれも至極まともで読み応えもあり
読了日:2月21日 著者:戸井田カツヤ
ブッダから、ほとけへ――原点から読み解く日本の仏教思想ブッダから、ほとけへ――原点から読み解く日本の仏教思想感想
原始仏教が日本にたどり着くまでには大きな変遷がある。根本分裂も含めてそのキーワードや仏教の根本的な理論について解説しているのですがこれが仏典を軸にどのように展開していったかということに着目していてブッダがその存在から仏典を通して概念化していくこと。さらには厳正から過去生や未来性までを包括した宇宙の原理も解説していてとてもまとまっていてうなるばかり。中でもヨーガやマンダラと言った実践としての仏教の意味とか瞑想についての手法の違いについてはかなり本格的な解説で身体技法としての変化についてとても参考になった
読了日:2月21日 著者:立川武蔵
出版アナザーサイド出版アナザーサイド感想
著者の藤脇さんと言えば90年代の初めに「出版幻想論」という素晴らしい本を書いて話題となった。裏方が本を出すのはせいぜい編集者ぐらいだったが営業の社員が出版の世界を語るというだけでなく「本は売れなきゃ意味がない」といったのだからかなりセンセーションに捉えられた。あれから約四半生紀がたつがその予言はいわば今読んだら当たり前の話だろう。その藤脇さんが定年を迎えて主に編集としての自叙伝的な内容がこちら。主に音楽やサブカルチャー、中でも小林信彦や大瀧詠一との交流とかうらやましい限り。白夜書房という時代の徒花の一代記
読了日:2月21日 著者:藤脇邦夫
味なメニュー味なメニュー感想
平松さんの本の中でも有名なB級グルメや大衆酒場のスポットに足を運んで関係者に話を聞きながら原稿にするスタイルの文章は久しぶりに読んだかもしれない。しかし、ここに登場するお店のどれもがやっぱり平松さんのセレクトと思えるような身近なお店の数々にメニューはどれもお腹がすいてきます。中でも都内にワゴンでお弁当を売っているアジアンランチを紹介していていやはやそうそうとその目配りぶりについついほくそ笑んでしまったのはいうまでもない。東銀座のシチューがおいしい「銀之塔」も超定番ではあるけどそれは平松さんの文章なら楽しい
読了日:2月21日 著者:平松洋子
芸者論―神々に扮することを忘れた日本人芸者論―神々に扮することを忘れた日本人感想
著者の岩松さんが和のイメージと芸者の歴史というのが結びつかなかった。そこにはどうしても白拍子や売春といった部分や吉原の花魁と芸者の違いなど露骨に性を語らざるをえないところがご本人の語り口とは相容れないと思っていたからだ。ところがそうした杞憂はまったく必要なかった。その原点に折口信夫をあげているように日本古来の性のありようから風流の洗練に至り貴族社会での性のやり取りなども実に巧みかつわかりやすく解説していていちいち納得するばかり。その性の歴史もおおらかというのではなく極めて風流と一期一会の狭間も感じるばかり
読了日:2月18日 著者:岩下尚史
残酷な王と悲しみの王妃2残酷な王と悲しみの王妃2感想
またまた中野ワールドを堪能。今回登場するのはバイエルン王国のルートヴィヒ2世。ワーグナーのパトロンでもありノイシュバウンテン城も作っただけでなく男色家としても有名だったとか。スペインハプスブルクのカルロス4世はゴヤの庇護した人物で有名ですが妻のマリアルイサと愛人のエピソードからナポレオンによる介入など実に波瀾万丈。他にはデンマークがらみでロシアに嫁いだアレクサンドル3世妃のマリアだったりイギリスから統合失調症を患っていた夫の元に嫁いだカロリーネ・マティルデなどこれまた側近医師と恋に落ちて子供産むとは大胆
読了日:2月18日 著者:中野京子
人間にとって寿命とはなにか (角川新書)人間にとって寿命とはなにか (角川新書)感想
本川先生の新作。今回も刺激的な内容満載でしたがドーキンスの「利己的遺伝子」の説に近いながらも生命である私を伊勢神宮と対照して考えていて遷宮のように自分が新しくなって次の世代にバトンタッチされるというエピソードから本川先生の生命観みたいなものが垣間見える気がした。その上で生態系のネットワークの中の私という捉え方をしていた上田閑照さんの哲学論も紹介していて「私」を拡張して周辺の他者や自分に関わるものを私的に捉える手法はかなり仏教的な感じ。現役時代は遺伝子の奴隷であり老年世代は次世代のため奉仕せよは著者の心情か
読了日:2月17日 著者:本川達雄
台湾おしゃべりノート 地球の歩き方編集女子が見つけたTaiwan最強の楽しみ方教えます (地球の歩き方BOOKS)台湾おしゃべりノート 地球の歩き方編集女子が見つけたTaiwan最強の楽しみ方教えます (地球の歩き方BOOKS)感想
地球の歩き方に関わっているライターや編集者の生の情報が詰まった本。どこから読んでもいいし若干古いけど二度目以降のリピーターにはうれしい内容。付箋だらけでちょっと次回の旅の参考になった。かなり台湾料理には詳しくなれますw
読了日:2月17日 著者:富永直美著,阿多静香著,谷口佳恵著富永直美著,谷口佳恵著
宗教消滅 資本主義は宗教と心中する (SB新書)宗教消滅 資本主義は宗教と心中する (SB新書)感想
この本では戦後の日本を皮切りに宗教の信者が減っている動向に注目。その背景を国ごと固有の理由だったりグローバリズムとの関連で捉えている。日本の場合は失われた25年と経済の停滞という中で葬式の簡略化が進むことで宗教なき日本での葬式仏教の意義自体が問われていくとといている。一方、宗教が持つコミュニティ的な機能もインターネットや家族回帰の流れの中でどう宗教が役割を果たしていくのかというのは一神教の中でも巨大な流れかも知れません。そうした中で信者を広げるイスラムもISなどの矛盾も内包するそんな問題意識に気づかされる
読了日:2月17日 著者:島田裕巳
自分の人生を生きられないという病 (ベスト新書)自分の人生を生きられないという病 (ベスト新書)感想
キーワードは「ポジティブNO」と「ネガティブYES」である。前者は前向きに生産性を高められる人であり後者はその逆であることは言うまでもない。著者は日本人の特性として後者の「ネガティブYES」が長年続けてきた悩み相談をする人の共通項として底流に流れているとする。それはある種の日本人が共通する抱えた病といってもいいのかもしれない。そうした時代は閉塞感をもたらす訳でそこから一歩飛び出しましょうというのが趣旨だ。本書にはその答えはあるもののその手段は書かれていない。世界観を手に入れるのはその人次第ということらしい
読了日:2月17日 著者:加藤諦三
動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書)動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書)感想
心というのは独自にあるものでなくて行動から生じるものもあるよというのが本著の趣旨。これは石田淳さんの行動心理学とも通じる議論だったり昨今の腸の健康の問題だったりして人間が認知する心の問題は実に多岐に渡る。心の声を聞くというのは、実は内臓や皮膚や統合系の反応もさることながら他者や環境との相対から湧き出てくるものとして考えた方がいいというのは著者の主張。そう考えると自分の意志というのは様々な反応の統合した結果ともいうことができる。それなら行動を変えれば自ずと体の気分も違うというマインドフルネスにも注目している
読了日:2月17日 著者:春木豊
中国語はおもしろい (講談社現代新書)中国語はおもしろい (講談社現代新書)感想
かなり前の本ですがとにかく中国語大好きな著者の愛情と様々な体験が込められた一冊でとても読んでいて楽しめた。中国語圏というインターネットのクラウドにアクセスするには語学を学べば広がる訳で昨今のネットの辺境的な考えとかに閉塞感を感じる人にはいいかもしれない。中でも線核問題が日本で顕在化する以前の1971年にアメリカに帰属していた尖閣が日本に一括返還された時に北米の留学生の間で反対運動が起きたこと。香港返還前年の96年にも香港で激しい尖閣返還運動が起きて死者も出たという現実も大きなフレームで捉えている。おすすめ
読了日:2月17日 著者:新井一ニ三
終末の思想 (NHK出版新書 398)終末の思想 (NHK出版新書 398)感想
晩年近くに書いていた野坂さんの文章には日本に対する諦感みたいなものもありつつどこかでファイティングポーズをとっているという強さがある。そこには敗戦の経験でありその人間感や国家を信用しないという組織に対する猜疑心も含めてとても共感するばかり。震災後の反原発の文章の力強さには舌を巻いた
読了日:2月14日 著者:野坂昭如
怪しいものたちの中世 (角川選書)怪しいものたちの中世 (角川選書)感想
中世の古典に出てくるエピソードを解説しているのですが怪しいというのが当時は巫女や夢の話。陰陽師に朴占などが平然と貴族社会の意思決定に入り込んでいる部分でしかも天皇の存在が時代によって軽んじられたり、南北朝からニセの天皇の親戚が現れたり昔も今も怪しい人とは多いものです。中でも詐欺の元祖ともいえる天竺冠者の存在は中世の怪しさを象徴する人物。博打打ちから徒党を組む人物に力を持っていると吹聴させ民衆を騙した結果、天皇に捉えられる話は面白い。しかも博打打ちと巫女というのは八卦の世界で表裏の関係で語られていたとは慧眼
読了日:2月14日 著者:本郷恵子
お金持ちになるための本お金持ちになるための本感想
Dr.榊原の本は2000年代前半頃に読んだけど至ってまともな企業分析の内容で個人的には随分と参考にさせていただきました。表紙のフェラーリとかの金満なイメージとは違って中身はすごくまとも。収入を増やしましょうというのと投資でお金に働いてもらいましょうというのもすごくオーソドックス。不動産投資の利回りの考え方はなかなかわかりやすいし投資の解説もそれほど進化はしていないですが機をてらっていないので好印象を持ちました。複業の勧めも起業までに至らないリスクヘッジもきちんと解説していたり信用取引も否定していて納得です
読了日:2月14日 著者:榊原正幸
客家(はっか)―最強の華僑集団 ルーツ・パワー・ネットワークの秘密客家(はっか)―最強の華僑集団 ルーツ・パワー・ネットワークの秘密感想
客家の存在を意識したのは先頃にいった台湾でのこと。客家料理というのがとても質素で食材を無駄にしないという話からとても生活が苦しかったというエピソードから。そのルーツを辿っていくと広東省の大浦あたりの山間部に北方から追われて移り住んだ人たちのことを刺すという。そのルーツからユダヤ人とも比べられるけどそのバイタリティゆえに中国人の強さの秘密を見いだしているのがこちらの本。実際に客家の人の里帰りにも同行しているのだけれど至って普通(笑)。むしろ貧しいが故のハングリースピリットがこの客家の強さの秘密なのですね
読了日:2月14日 著者:根津清
物語の命題 6つのテーマでつくるストーリー講座 (アスキー新書)物語の命題 6つのテーマでつくるストーリー講座 (アスキー新書)感想
物語の命題や共通項というのはほとんどジョーゼフキャンベルの神話の分類で言い尽くされているのですがそれを神話学の理論と結びつけて日本ならではの折口信夫の「貴種流離譚」や山口昌夫の周縁の理論なんかとで理由づけをしたりしていて中々にスリリングな議論でありました。
読了日:2月14日 著者:大塚英志
Tarzan特別編集 ストレッチ 本当に効くランキング 《完全版》: 100人のトレーナーが選ぶ症状別/部位別/スポーツ別 全149ストレッチTarzan特別編集 ストレッチ 本当に効くランキング 《完全版》: 100人のトレーナーが選ぶ症状別/部位別/スポーツ別 全149ストレッチ感想
トレーナーが選んだというフレコミ通り地味ながら効きます。それに尽きる。体が伸びる喜びったらない。
読了日:2月12日 著者:
ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場からルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から感想
宅配便同様、労働集約産業の最たるものであるコールセンター。日本では沖縄にかなりの部分が集まっているという実態に切り込みつつもその現場の様子を読んでいるとブロイラーの鶏舎を思い出してしまった。後半にはカルビーのようにお客様相談室を内製化している成功例も紹介しているがどこも定着率が悪く悪戦苦闘しているのが正直なところ。介護しかり日本のサービス過剰社会に対して著者の記者は疑問を呈しているがここでは感情労働という概念を紹介していて人とのコミュニケーションがいかにストレスになるかについて触れられているのが大きな収穫
読了日:2月12日 著者:仲村和代
触楽入門触楽入門感想
人間の五感の中で触感というのは意外と軽視されがちだということからその重要性や可能性について入門書的に解説したのがこちら。著者は触感を研究するグループのメンバーで現在では他者の感じる触感をシュミレートするような作品を開発したりしていて中々ユニークな活動をしています。著者の中でも触感が人間の生存に置いても重要な役割をしていることを先頃なくなった精神科医のオリバーサックスの患者の例や先天的に視覚を失っていた人が手術で開腹した時に目が見えるのかなどのエピソードで紹介していて認知や身体感覚にも繋がる話は驚きは多いな
読了日:2月12日 著者:仲谷正史,筧康明,三原聡一郎,南澤孝太
性のタブーのない日本 (集英社新書)性のタブーのない日本 (集英社新書)感想
橋本治さんの古典案内シリーズと勝手に思っていますが古典文学から当時の風俗や生活を語る作品はどれも深い考察と洞察があってとても好きな索引が多い。今回も同様。性という切り口で「交わい」と視線の「交差」が同じ意味を持つことだったりタブーはないがモラルはあるとする日本の性に対する認識について古典を題材に解説しています。中でも小柴垣草紙といわれる元祖春画について天皇が執筆したりと日本の性のありようはちょっと世界と違うし稚児草紙といわれるこれまた橋本さんならではのBL論も面白かったり。伴大納言絵巻の背景解説にも納得!
読了日:2月12日 著者:橋本治
溜池通信 いかにもこれが経済溜池通信 いかにもこれが経済感想
毎日、かんべえさんの溜池通信を読んでいるのでその総集編をしかも10年前ほどのものを読むと隔世の感もありつつ今の話に通じる「日本の失われた20年」を感じさせる不景気なテーマも満載で楽しめた。映画館の隣でずっと空いているテナントのエピソードはいつ読んでもほくそ笑んでしまう。クスリとさせるかんべえさんの真骨頂ですね
読了日:2月11日 著者:吉崎達彦
「こころの定年」を乗り越えろ 40歳からの「複業」のススメ (朝日新書)「こころの定年」を乗り越えろ 40歳からの「複業」のススメ (朝日新書)感想
著者によれば40ぐらいになると自分の老い先は会社での行き着く先が見えてきてすっかり老け込んでしまうことを「こころの定年」としつつそれを乗り越えることを考えましょう。会社以外の部分での自分の人生設計をしましょうということだ。これは会社員が一日の半分ぐらい費やしている会社での時間をのぞいた時にそれを埋める何があるのかという自問自答の本でもある。ここでは著者のように人事での経験を生かした本の執筆から始まり起業やボランティアや趣味…ちょっと前に週刊誌で読んだ森永卓郎さんの提言「アーティストになれ」を思い出したかも
読了日:2月11日 著者:楠木新
圏外編集者圏外編集者感想
とにかく「TOKYO STYLE」から都築さんの仕事ぶりは追っかけていますがようやくご本人の編集論とも言えるものが出た。本人曰くマニュアルはないというのは編集はそうで社員編集者とは違うフリーの矜持みたいなものが詰まっていて読んでいてパワーを感じるばかり。その変遷はマガハ時代から始まるが一貫してアナログな人と会って情報を集めてそれを取材していくというのは面白い。写真の素養もまったくないけどそれをOJT的に何でもやっていくうちにレイアウトしかり身につけていくというのは花森安治さんに通じる美学があっていいなあ
読了日:2月11日 著者:都築響一
人間は料理をする・下: 空気と土人間は料理をする・下: 空気と土感想
上巻もさることながら下巻はより食から環境や生態系までつながるストーリーてリングと取材で一気に読んでしまった。空気編は主にパンの製造にチャレンジ。いかに酵母菌を作るのか悪戦苦闘しつつパンと人間の歴史、そして精白粉の問題点や全粒粉と呼ばれる小麦の実態についても言及。さらに土編は酵母の話からチーズの製造の法律や大腸菌が発生しない自然の製法を巡るシスターと米当局のやりとりなんかも取材。それに当然ながらワインなどのアルコールや納豆などの食品もしかり。中でもチーズの腐るギリギリの異臭への人間と文化の関係など洞察も深い
読了日:2月11日 著者:マイケル・ポーラン
台湾の民族と文化台湾の民族と文化感想
日本統治下の台湾の原住民を調査していた日本の研究者3人による鼎談集。さらりと文中に出てくる当時の原住民の写真を見るだけでもほんの100年ほど前に暮らしていた原住民の生活の一端ぶりが垣間見える。征服者の研究者とはかなり違うイメージ。それでも霧社事件の「タイヤル族の反乱」の見方を否定しつつ当時の部族の分布や考え方についても言及。事件を起こしたマエボ社と他の部族の関係についても系統分類的に話していて深い知見に感激。部族によってはすぐ自殺する部族もあるとかフィールドワークから得た興味深いエピソードも多い。
読了日:2月11日 著者:宮本延人,瀬川孝吉,馬淵東一
1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)感想
個人的にはこの頃って完全にベストテンとか森田浩一の青春ベストテンの時代ですね。そうした中でCMソングというヒットパターンが出てきたり、歌謡曲にアイドルにニューミュージックも百花繚乱だという視点でとらえたのでありましょう。ヒット曲の羅列でもありコード進行をメインにした楽曲解説ありと盛りだくさんです。表紙にあるようなジャケットの曲を懐かしめる人にはお勧めです!
読了日:2月7日 著者:スージー鈴木
プロレス 悪のアングル (別冊宝島 2431)プロレス 悪のアングル (別冊宝島 2431)感想
一貫したスタンスでプロレスの暗部を暴き続ける根性はここでも健在。中邑の移籍騒動とかはそれほど太いパイプがないみたいだけれどノアや全日系の話はダントツに詳しい。今回もノアのレフェリーの失踪騒動の顛末も突っ込んでかいていて逮捕の話まで出てくるとちょっと引いてしまいます。色々風当たりも強いようですが露悪的かつきっちり取材しているスタンスは応援したいです
読了日:2月7日 著者:
人間は料理をする・上: 火と水人間は料理をする・上: 火と水感想
良書。人間の料理の進化を火(焼くこと)と水(煮ること)空気(パン)と土(発酵)の世界に導く。前半の上は火と水。火の章ではバーベキューやッ豚の丸焼きの世界へと誘う。南部で黒人と唯一の交流の場であったバーベキューの歴史だったり、人類の人類たる所以を火に求め料理する人間が文化を築けたといったレヴィストロースの議論なんかを皮切りに幅広い議論と実践はとても深みのあるエピソードの連続。後半では玉ねぎなどの野菜を刻んだ肉とともに炒めて水を入れて煮るというシンプルでも料理の世界の広がりは煮物とともにあったという解説。見事
読了日:2月6日 著者:マイケル・ポーラン
台湾生まれ 日本語育ち台湾生まれ 日本語育ち感想
自分が日常的に使っている言語にはそのバックグラウンドにその使っている人々や祖先が育んできた文化や生活様式などが染み付いているということをしみじみと考えさせられる作品。著者は台湾に生まれて3歳から日本に育った女性。中学生になり改めて中国語を習い留学も経験する。しかし自分の育った国は中国語とは違う台湾語だったりする。でも一番使ってきたのは日本語であり身近な母親の話す台湾語。それぞれの文化が言語の中には含まれている。そして自分の母国は何か、そしれ母国語とは…。突然、作家の故・李良枝に影響を受けた話とか心に刺さる
読了日:2月6日 著者:温又柔
男だけど、男だけど、感想
男性だけど自分の内面にある女性性にクローズアップしたエッセイ集。かわいいものなんかに惹かれる心情を自分の中のOLという設定にしたりするのだが、30代の著者の割にはバックパッカー風に様々な海外での珍道中なんかがあったり放送作家だけあって言葉選びのセンスが宮沢章夫さん風というか一人ぼけつっこみの様相もあったり装丁のイメージよりも年配にアピールする内容であるかと思った。中でも昔ブームになった自分の人生がすべて記録されているというアガスティアの葉を探しに出かけて占ってもらうシーンはなかなかの筆力。冷静な分析も共感
読了日:2月6日 著者:ワクサカソウヘイ
アートディレクションの「型」。: デザインを伝わるものにする30のルールアートディレクションの「型」。: デザインを伝わるものにする30のルール感想
電通から独立したホッチキスの水口さんのアートディレクター論。実はちょっと気になっていたクリエイティブの守破離を体験的に語っていて些末なことの積み重ねと成功体験の連続につきるのだなと思った次第。結局、過去の文脈をいかに繋げつつそれを多くの人に提示して驚かせることでクライアントの問題解決に繋げるということを丹念に解説しています。正直、ここまで手の内を明かしていていいのかしらと思いますが、手順ではなくどこまで愚直にできるのかというのを一流のクリエイターのエピソードを読んでいくとわかります。細部に魂が宿るも納得。
読了日:2月6日 著者:水口克夫

読書メーター
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2016年02月09日

2016年1月の読書

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:6797ページ
ナイス数:231ナイス

デザインの手本 文字・イラスト・写真・素材・特殊加工デザインの手本 文字・イラスト・写真・素材・特殊加工感想
日本を代表する装丁デザイナーの鈴木成一さんの過去の装丁をジャンル別に紹介した本。でも以前は文字の使い方に特徴があったんだけどかなりイラストを活かした装丁が多くてちょっと同じ人とは思えない作品も多かったのが以前とは大分違うイメージ。おそらく事務所が大きくなったことで別のデザイナーのアイディアを元にプレゼンしたものも多くなっている気がします。それはそれでやはり鈴木さんの真骨頂ともいうべき白の余白や字間の微妙な空きっぷりとかは好きなんですよね。でも気づいたのは最近の装丁で作字をしているのも結構ポップで好きかも
読了日:1月25日 著者:鈴木成一
台所に敗戦はなかった: 戦前・戦後をつなぐ日本食台所に敗戦はなかった: 戦前・戦後をつなぐ日本食感想
定番料理が今のようなカタチになる前に試行錯誤があったというとどこか不可思議な気がしますが膨大な資料からレシピの謎に迫ったのが魚柄先生。すき焼きがなぜかハンバーグだったりサンドイッチの味付けが味噌だったりするのがユニーク。たびたび指摘しているんだけどこの何でも和食化しようとする当時の料理研究家さんの悪戦苦闘ぶりというのが日本の家庭料理を築いていったような気がしてなりません。後半にワインやカルピスまで作り方が出ていてこれがまたアイディア満載で実に豊かな日本の食のイマジネーションがとっても素敵に思えましたね
読了日:1月25日 著者:魚柄仁之助
デザインについて:バウハウスから生まれたものづくりデザインについて:バウハウスから生まれたものづくり感想
圧倒的な装丁の美しいテキスタイルに目を奪われてしまう。バウハウスでパルクレーに師事しながら戦争でアメリカに渡ったテキスタイルデザイナーの随筆を集めた作品。工芸デザイナーというワードが頻繁に出てきていてアメリカの大量生産が本格化している中での工芸のありようだけでなくアートとは何か。工業デザイナーとの違いなんかについても自説を挙げているが目立つことを嫌う「民藝」や最近の深澤直人さんなんかの議論にも似ていてとても興味深い。この凛とした文章は読んでるとルーシーリーとかにも繋がると思ったりスゴく勇気の出る文章でした
読了日:1月24日 著者:アニ・アルバース
ソクラテス われらが時代の人ソクラテス われらが時代の人感想
ギリシャ哲学なんて正直自分の生活に入り込む余地がないほどの距離感を感じていたんだけどこの前、アリストテレスの本を読んだらついソクラテスにも興味がわく。内容自体は評伝形式でソクラテスのみならずその当時のアテナイの社会や人となりにもスポットを浴びていて堅苦しさは皆無。しかもソクラテス自身は本を書いていないことから弟子のプラトンの対話編なんかも「どこまでがソクラテスの主張でどこまでかプラトンの持論なのか」ということも懐疑的に書いていてかなり親切な内容でした。表紙の装丁もかなりソクラテスの実際の顔に忠実ですw
読了日:1月23日 著者:ポール・ジョンソン
この野菜にこの料理: 大好きな素材を3倍おいしく (単行本)この野菜にこの料理: 大好きな素材を3倍おいしく (単行本)感想
今年は暖冬の影響で野菜が安く手に入るようになりました。よくよく考えれば野菜はカロリーが少ないのでもりもり食べるには有元さんのレシピってやっぱりよい。野菜を蒸してオリーブオイルをかけるだけで十分においしくなるようなレシピが多いのがうれしい限り。今回も野菜別なんだけど作り込まない感じで春から冬の野菜のレシピ満載。キャベツとか白菜の消費に重宝しそうです
読了日:1月23日 著者:有元葉子
韓流スターと兵役 あの人は軍隊でどう生きるのか (光文社新書)韓流スターと兵役 あの人は軍隊でどう生きるのか (光文社新書)感想
男性韓国スターの動向をウオッチしていくとどうしても避けられないのが徴兵の問題。しかし派手派手しいお見送りの場面とか見ているとちょっと違和感を感じるのは日本に徴兵がないからだろう。この本はそんな韓国の徴兵制度について細かく紹介している。当然、東方神起やJYJのメンバーなんかを挙げながら韓流ファン向けにゆるく解説するのかなと思いきや後半になるとピとキムテヒの密会騒動の話やイビョンヒョンがなぜ兵役に入らなかった事情も含め芸能界の差別的な社会での位置づけなどさりげなく突っ込み満載なのがかなり役に立ったかもしれない
読了日:1月23日 著者:康熙奉
物欲なき世界物欲なき世界感想
いわゆるスローライフやダウンサイジングが最近のキーワードになっている世の中の潮流みたいなものをアメリカのポートランドや中国のロハスマガジンなどを紹介しつつ日本の「下り坂社会」の現状まで著者の取材を元にその最前線をレポートしている。以前に読んだ「ヒップな生活革命」と前半の内容はさほど変わらないんだけど貨幣の電子化とか3Dプリンターの動向とかもなかなか興味深かったが最後の資本主義そのものが行き詰まっているという指摘も説得力があった。物欲なき後はより個人のパーソナリティが信頼に置き換えられ価値を持つということか
読了日:1月18日 著者:菅付雅信
風姿花伝 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)風姿花伝 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)感想
世阿弥って足利義満のお稚児さんだったりその後の不遇の時代もあったりしながらこんな能についての年齢ごとだったり役ごとについてのアドバイスがあったり今で言うとハゥトゥー本のような感じで正直面食らってしまった。それに加え日本の猿楽の歴史についても神事と仏教側の両面が何事もなく調和した形で成立していたのも驚き。聖徳太子が秦河勝に命じたエピソードなども端的に言えば秘伝書でありながら能の権威をきちんと演出した本であったことなどこちらの想像していた内容とまったく違っていたので決して長い本ではないがそれにしても面白すぎた
読了日:1月18日 著者:世阿弥・著夏川賀央・現代語訳
南洋と私南洋と私感想
リゾート地にまったく関心の湧かない自分のような人間には南方のマーシャル諸島がかつてドイツから譲渡されて日本領だったというのは本当に記憶の片隅にもなかった。ただこの著者は文字通り「私」というフィルターを通して南方の日本統治下の歴史を丹念に掘り起こす。オーラルヒストリーとなると戦後70年だけに往時を知る人はかなりのご高齢。日本人はいい人だっただけの表面的な感想にならないのもいい。中でもサイパンで活躍した日本人僧侶青柳貫孝のエピソードは感動的。ナンパされて南十字星を教えてもらおうとする話もオチを含めぐっときた
読了日:1月17日 著者:寺尾紗穂
心は少年、体は老人。心は少年、体は老人。感想
池田先生は養老孟司さんと仲がいいからちょっとニヒリスティックなモノの見方とかが個人的には好み。ここまでおおっぴら近藤誠先生の擁護をしていたかと思えば東京オリンピックをこき下ろしたりととにかく自由に発言されているのは年をとったからこそだとご本人も開き直っていたりするところも好きだったりします。結構論旨に一貫性がある分、あんまり色んな著書を読むと話題が重複しがちですがこの本は雑誌の連載をまとめたものなのでそんな感じもなく楽しめましたとさ
読了日:1月17日 著者:池田清彦
野菜女子のレシピ帳野菜女子のレシピ帳感想
最近のテーマはいかに野菜をきれいに使い切るかにある。つまりキャベツなど大きな野菜の場合は1つの素材で何品もの献立を考えないと行けない訳でしてその点で各種の野菜を4品ぐらいずつ献立を紹介しているこの本はコンパクトながら実践度がかなり高いです。中でも前半に枝元なほみさんが出てくるのですがさすがにレシピはシンプルで普段の献立にも応用できそうなものばかり。ポタジェの柿沢さんは手が込んでいていてメインでも頂けそうな一品が多いしYOMEさんはマクロビ的な素材の質感を生かしていて好みに応じて三者三様のメニューが作れます
読了日:1月16日 著者:枝元なほみ,柿沢安耶,YOME
トヨタの段取りトヨタの段取り感想
OJTソリューションズの本は要は基本の徹底、つまりトヨタ式にあると思うのですがこの中に「究極的には自分の仕事をなくす」ことを目的にするというのは忙しいビジネスパーソンについてすごく心に響く言葉ではないか。コンピューターがもたらした業務の細分化と24時間化をどう乗り切るのか。社会人でも中間管理職以上にはより身につまされることが多い。具体例も豊富で読んでいて大変参考になったのはいうまでもない
読了日:1月16日 著者:(株)OJTソリューションズ
井田真木子と女子プロレスの時代井田真木子と女子プロレスの時代感想
ものすごくマニアックな本。クラッシュに関してはここ数年では柳沢健さんの本があったけどクラッシュブームの最中に月刊のデラプロ誌上で展開されていた長与のインタビュー連載やジャパン女子でジャッキー佐藤との確執の末にフリーになった神取の動向に迫っていた記録集としても価値が高い。ましてや執筆していたのが後の大宅賞作家の井田氏なのだから面白くない訳がない。当時の編集長が次長と呼ばれた宍倉さんだけにターザン山本系の活字プロレスの様相もありつつ長与がインタビューを受けるたびに活字でプロレスラーを自問していく展開は懐かしい
読了日:1月16日 著者:井田真木子
「忙しい」を捨てる 時間にとらわれない生き方 (角川新書)「忙しい」を捨てる 時間にとらわれない生き方 (角川新書)感想
しばらく大乗の本ばかり読んでいたのでバランスをとるべく上座の長老の本を読みます。著書も多いので重複はやむを得ませんがここでも無常の概念から時間を読み解くという内容から死の問題、寿命について語ります。このあたりはまさに仏教特有の考え方でなかなか人間の生理的には受け入れにくいが仏教では体系だっているのですっと中身がわかります。後半では無常の中では保守主義が怠惰に繋がるとして現代の日本社会がこのまま退化して滅びるのではないかと指摘する。知の劣化も嘆いていてある種のアニマルスピリッツの勧めのようで感動的ラストです
読了日:1月16日 著者:アルボムッレ・スマナサーラ
信頼はなぜ裏切られるのか―無意識の科学が明かす真実信頼はなぜ裏切られるのか―無意識の科学が明かす真実感想
久々に行動科学の本を読みましたがなかなか網羅的で興味深かった本。信頼というより意思決定する際に何を基準にするのかという人間の心理的な仕組みを解明しようという内容で有名な囚人のジレンマも最初に追いやられるほど日進月歩な分野なのでしょう。信頼はどこから生まれるのかという点では誠実さがこれまで喧伝されていたがさらには能力の問題も再三指摘する。また意思決定の際の立脚点は長期利益にあるのか短期利益にあるのかという点を計算しているというのも面白い。これが人間やネットでの取引などそれぞれに解読していて散漫だが充実の内容
読了日:1月16日 著者:デイヴィッド・デステノ
完本 市川崑の映画たち完本 市川崑の映画たち感想
どういうわけか春日太一さんの本も含め生誕100周年で市川崑監督がクローズアップされているよう。この本も92年の旧版に加えて亡くなるまでのインタビューや晩年の作品までも触れられていてまさに「完本」といえる内容と言っていい。個人的には圧倒的に金田一耕助シリーズのイメージだけど過去の作品とか見ていると日活とか大映時代の作品が結構気になるかもしれない。多作な監督だけに作品に対する思い入れとかについてはさらっと語っていて実に職人っぽい部分も感じられてちょっと作品を鑑賞したくなる。巻末の資料集も充実している。
読了日:1月14日 著者:市川崑,森遊机
戦略がすべて (新潮新書)戦略がすべて (新潮新書)感想
著者は若者をアジテートする文章を書かせたら天下一品かもしれない。前著もそうだがこの本でもプラットフォーム戦略だったりセルフブランディングなんかも著者の手にかかればあたかも未来のビジネスの道しるべになるのが面白い。どうしてもある程度の年齢にさしかかった私のような立場からするとちょっと大げさなようにも思えるけどホリエモンのようなニヒリスティックな視点よりも好感を覚えるから不思議。それにある種の熱血漢というのはいささかアナクロに扱われがちだがそこに再びスポットライトをあてているのも世代的には好感が持てる内容
読了日:1月14日 著者:瀧本哲史
酒肴日和: 「そうざい」エッセイ選集 (徳間文庫カレッジ)酒肴日和: 「そうざい」エッセイ選集 (徳間文庫カレッジ)感想
池波正太郎の本ってグルメエッセイも含めて敷居が高そうな先入観がありましたがそんなことはありませんでした。しかも掲載されているエッセイや対談が晩年のものも多く洋食やうなぎなども普通に出てきて意外と普通だと思ったり…。ただその大食漢ぶりと言いましょうか自宅での食生活も書いているんだけど深夜にまたご飯とか食べたりしてこれはなかなか年齢を考えるとかなりの量で驚かされます。その分、昼間がおそばだったりそういう食生活を知ると食通の池波正太郎の食い道楽の実態が垣間見えて楽しく読めました
読了日:1月13日 著者:池波正太郎
本当はエロかった昔の日本:古典文学で知る性愛あふれる日本人本当はエロかった昔の日本:古典文学で知る性愛あふれる日本人感想
前作も面白かった著者の古典探訪の旅はいよいよ日本のエロスに迫った。しかも源氏物語をはじめとする文学や史料を駆使して往時の日本人のおおらかな性に迫るというスタイルはこの本でも遺憾なく発揮されている。著者の大塚さんは江戸時代以降の男性社会化された日本の文学よりもおおらかで女性社会だった平安に想いを馳せる。そこには不倫は当たり前。誰の子かわからなくても余裕があれば育てる文化の醸成などにも言及している。また性と笑いの問題も論じていて女性器を見せて笑わせる古事記や新年の笑い初めの話などもきちんと論じていてまた堪能
読了日:1月13日 著者:大塚ひかり
ガバちゃんの対談集 その道の達人と、人生をめぐる話。ガバちゃんの対談集 その道の達人と、人生をめぐる話。感想
懸賞の達人で有名なガバちゃんこと長場典子さんの対談集。桐谷さんの対談がやっぱり至極ですがガバちゃんのバックグラウンドにある普通のOLがいかに自立していくかというようなテーマが感じられて個人的にはすごく共感する内容。森永卓朗氏にしてもいかに好きなことをする為に汗水流して働いているのかという話もありつつ株をやっているガバちゃんはいかに経済的に自立するのかを自分の中で考えつつ提示していく。その一つの到達点が懸賞達人という道なのだけれど何とも言えず読後感がよかった。持たざるものがいかに楽しむかという具体例が満載だ
読了日:1月13日 著者:長場典子
走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー  運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!感想
著者のみやすのんきの名前を目にしたとき「懐かしい」とうなってしまった。かつて「やるっきゃ騎士」というマンガの作者が一念発起してサブスリーのランナーになるというまさかの展開に驚く。しかもその本気っぷりが伝わるのが序盤のマラソンの理論編の部分。これまでのマラソンの常識を覆すようなフォームなんかを自己流に解説しているからかなりの本格的な内容だ。そこから目もくらむような努力のエピソードの数々と村上春樹のマラソンの本を読んだことのモチベーションのギャップにも驚かされるばかり。太っている人間は自分に甘いは耳が痛い言葉
読了日:1月13日 著者:みやすのんき
日本人の心日本人の心感想
河合先生が解説する日本人論や宗教論は心理学という別の視点から眺めているだけに意外にも納得できるような説明が多い。実は幸福論もしかりで氏の問題やよるべきものがあるかどうかというのが幸福論の要諦であるというのも納得だし、日本人の宗教観の根本としてもったいないがありそれが失われたことで新たな宗教観の醸成が必要というのも深い見識を感じます。本では渋谷陽一のインタビューに始まり対談が中心なので難しい話もかわりやすくなっているのがみそかな。顕在的なものを合理主義として見えないものを神秘主義として対比させるのもユニーク
読了日:1月10日 著者:河合隼雄
絵を描いて生きていく方法?絵を描いて生きていく方法?感想
SFが好きな人なら一度は目にしているはずの寺田克也さんのインタビュー連載をまとめたもの。そこには職業としてイラストレーターをしていた矜持みたいなものがほとばしっていてこれは日本版の「アートスピリット」だとちょっと大げさだが思った次第。日本においてはキャラクターが幅を利かせるマンガの世界が主流な訳でそこに余白や想像の余地のある小説の挿絵やイラストというのはキャラとは違う世界観の落とし込みみたいな作業があると思う。しかもその超絶的なテクはメビウスに影響を受けているけどもはやワンアンドオンリーでそこもまたスゴい
読了日:1月10日 著者:寺田克也
小泉今日子書評集小泉今日子書評集感想
小泉さんがまさか読売新聞で10年間も書評をしているとは知りませんでした。その扱っている範囲も短編を中心とした女流作家が中心。正直、まったく読んでいないジャンルなのだけれど特に初期の紹介した作品は軒並み映画やテレビの原作になっていたりと映像の作り手としての視線があったのかもしれない。とりわけ甘糟幸子の白骨花図鑑はまるで亡くなってから土に帰るまでの九相図のような耽美な美しさが文章から漂っていてとても抑制的で素晴らしい。あと久世光彦さんや岸田今日子さんとの交流がさりげなく出てきて大人に憧れる彼女の気持ちが伝わる
読了日:1月10日 著者:小泉今日子
超・反知性主義入門超・反知性主義入門感想
もともとは日経のサイトの連載をまとめたもの。そういう意味では反知性主義について明確に語ったものではないです。しかし、ネットにはびこるような言論やマスコミの論調についていつものようにちょっと斜めにみつつ論評する文体は健在。真骨頂はネットやツイッターの書き込むある種の露悪的で批判する人たちの心のひだを読むというか心理を分析する面でご本人もAKBについて言及して炎上した経験から実にクールに書いているのが印象的。アメリカ発の反知性主義は最後の森本あんりさんとの対談がほとんど。ちょっと意味を曲解していたのに気づいた
読了日:1月10日 著者:小田嶋隆
インド哲学史インド哲学史感想
著者の宇井先生は中村元先生の師匠筋にあたる方のようでちょっと文章が堅苦しくもあるがかえって論旨が明快でわかりやすい。これが第二次大戦前に書かれていたとは驚き。内容は後半に仏教の特異性をあげつつ説明しているが前段のヴェーダの思想ともいうべき転変説と積聚説(シュウジュ)を掘り下げていくアプローチに目がウロコ。転変説は一般的に理解しやすいが積聚についての考え方はもともと多数のものが存在し世界を構築するという神話の解釈からスタートしていてむしろ中国の気なんかとも通底するものがあるなあと思ったり。頭が整理されたかも
読了日:1月6日 著者:宇井伯寿
人間らしさ  文明、宗教、科学から考える (角川新書)人間らしさ 文明、宗教、科学から考える (角川新書)感想
タイトルは堅苦しいけど帯にチャップリンのモダンタイムスの写真が出ていてピント来たので読んでみた。チャップリンが時計の歯車になる描写から冒頭著者が教鞭をとる東工大の生徒が女生徒から「人間味がない」と指摘されるエピソードから始まる。その理由を「人間がロボットであっても言い方が変わらないような人たち」といわれたことが本のアイディアにある。この人間味を感じないというのは何か。そこに人間のかけがえなさや本質論と構築論などの議論もイチイチ面白。中でも妻が女子アナだという著者の一期一会の出会いこそ人間らしさ。珠玉の言葉
読了日:1月6日 著者:上田紀行

読書メーター
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2016年01月04日

2015年12月の読書

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:33冊
読んだページ数:8176ページ
ナイス数:219ナイス

旅の賢人たちがつくったアジア旅行最強ナビ旅の賢人たちがつくったアジア旅行最強ナビ感想
20代前半の頃にバックパッカーに憧れたことがある。沢木耕太郎に加えて当時は蔵前仁一さんやグレゴリ青山さんが出だした時期で自由な生活と文章に魅力された。久々にこの手の本を読んでいてそんな気持ちが思い出しアドレナリンが出た。でももはやバックパッカー自体はスマホでWI-FIがマストな時代ではそれほどの価値があるのかなと思ったけど働きながら旅に想いを馳せるような時間を取り戻すというのもいいかもしれないと思った。アジアの東南アジアが中心だけどインドや台湾韓国までも網羅しているし中央アジアも情報少なめだが触れている
読了日:12月25日 著者:
エロ本黄金時代エロ本黄金時代感想
エロ本黄金時代というが主に著者の本橋さんや東良さんが活躍していたビデオザワールドと白夜書房の印象が強い。同時代に10代だった身からすると圧倒的に80年代や90年代は英知出版がメインで白夜はサブだった時代。今でも語り部がこうして記録を残していった方が後の世代に受け継がれるというのは聖書の頃から変わっていないのかもしれない。それでも宇宙企画の創始者である山崎さんの貴重なインタビューとかこじままさきさんとかの名前が出てくると感慨深いものがある。ここでも奥出哲雄さんの異彩ぶりのリスペクトはさすが奥出門下ならではか
読了日:12月25日 著者:本橋信宏,東良美季
ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン (単行本)ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン (単行本)感想
これって論理学をわかりやすく解説した本なんだけどもともとテレビで放送していただけに非常にわかりやすい。舞台を高校の映画部と言う設定で自主制作映画のセリフを巡る言葉の使い方を論理的に説明するという試みはテレビを見ていない人にも十分にわかるはず。三段論法の展開だけでも個人的にはへぇ〜っと思うことが実に多くて読んでいて何度もうなづいたりして…。仕事柄ロジカルな文章力が必要とされるからもっと真剣に取り組んでいきたいテーマだったりしました。うむ
読了日:12月24日 著者:NHK『ロンリのちから』制作班
打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力感想
一応、大友さんの本でもあるのだけれど鍼の先生と施術を受けている患者さんの対談集という趣もありつつその実際はかなり新旧の世界とか身体感覚だったり音楽との共通点だったりするのだけれど…。結局は音楽も波動であり人間のカラダからもある種の波動が出ているからそこを細かく感じ取ってくという心の声を聴く的な話になりがちなのはやむを得ないがそこからさらにボサノヴァの進取性だったりいわゆるアドリブと鍼の共通点などいささかこじつけの気もなきにしもあらずだが、お二人の波動があうからなのかどこかほっこりした対談なのが微笑ましい
読了日:12月22日 著者:竹村文近,大友良英
GO!GO!台湾食堂―台北で発見した美味しい旅 (Taiwan通 1)GO!GO!台湾食堂―台北で発見した美味しい旅 (Taiwan通 1)感想
これは普通のガイドブックで紹介されているグルメ店では物足りない人向けの本。結構コアな店も押さえつつ女性向けにあまり汚いような店を紹介していないあたりがかなり良心的。日本が大好きな台湾人の人のブログがきっかけになっているようだけど妙齢の台湾女性がちょっとマニアックな店を知っているかどうかは若干なぞだがそれもいいでしょう。いきなりNHKの入りづらい居酒屋に登場したお店に客家料理のお店だったり、ビビアンスーが紹介して有名になった台湾料理の店もあったり(今では天母はおしゃれになったけど)セレクト的にもたまりません
読了日:12月21日 著者:哈日杏子
驚くべき日本美術 (知のトレッキング叢書)驚くべき日本美術 (知のトレッキング叢書)感想
著者の二人はいずれも門外漢の美術ファンにもわかりやすい解説で定評のある人物だけにざっくばらんな美術のエッセンスをまるで話芸のように解説しているので面白い限り。基本線にはやはり山下さんと赤瀬川さんの日本美術応援団にあると思うんだけど橋本さんのボケに対して突っ込みが入るあたりも読んでいて心地よくもある。その対象はこれまで江戸時代までのものが大半だったが後半は明治以降の奇想の系譜や岡本太郎の縄文と弥生という文化論にまで及んでいてキッチュなサブカル的な世界も垣間見えるのがユニークでありました。
読了日:12月21日 著者:山下裕二,橋本麻里
幸福と成功だけが人生か幸福と成功だけが人生か感想
山折先生の人生訓話みたいなものかと読み進めてみるといきなり宮沢賢治が妹の死についてなげく詩の話が始まる。そうした「哀しみ」のエピソードの数々を紹介しながらその折々の感情を丹念になぞっていきながら文章は進む。かなり不思議な内容で面食らっていたら後半になり友人である江藤淳の自殺について著者の交友と共に語られるその哀しみの深さに驚かされる。世の中に成功譚があれば悲劇譚もあってもいい。そんな内容であった。哀しみこそが日本人の深い根の部分にあるのではないかという視点に深く共感した。ハレでなくケの文章も味わい深い
読了日:12月21日 著者:山折哲雄
ドキュメント パナソニック人事抗争史ドキュメント パナソニック人事抗争史感想
サラリーマン社会に身を置いているといかに人事というものが組織人にとってのニンジンの役割をしているのかを痛感するのだが松下という巨大組織になればそのうねりは会社の業績そのものを左右するというお手本のようだ。ソニーしかり巨大メーカーは創業一族とその後の経営体制というのが大きな課題となるようでここでは松下幸之助の娘婿である松下正治氏に焦点が当たるがただそれ以上に朝令暮改でやり過ごしてきた日本の経営者のありようというのがグローバル社会や情報化の中では中々たちゆかない事実をまざまざと見せつけたのがこの本の要諦だろう
読了日:12月21日 著者:岩瀬達哉
持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない感想
以前に仏教学者の佐々木閑さんがニートの有用性みたいなことで評価していたのと論点が似ている。すべてにおいて人にはそれぞれのポリシーや生き方があり生産や効率が苦手な人間は必ずしも組織というものにこだわる必要がないというのが著者の主張。実際にシェアハウスや地方での生活に加え小商いを複数持つことで年間100万円に満たない生活費でやりくりをしているという。そうした生活は仏教のサンガやキリスト教の修道士の生活スタイルに近いと思う。自給自足ではなく薄く社会にコミットして暮らす。ネット社会ならではだと思うがしんどそうだわ
読了日:12月21日 著者:pha
伝説のヨガマスターが教えてくれた 究極の生きる知恵伝説のヨガマスターが教えてくれた 究極の生きる知恵感想
著者の二人が共に沖ヨガの門下だったとは知りませんでしたがその身近で見た沖先生の生活や信条などを通してそのヨガの本質に迫るという往復書簡風の内容だが難しくない。ヨガを梵我一体と唱えるだけあっていかに自分の心身を機嫌良くメンテナンスしていくのかということがヨガの本質だという。そこから自分のまわりの環境も風通しよくするというのが断捨離でありモノを溜めこんでいくと澱がたまっていくというのがヨガの本質的なものかもしれない。川のように流れつつもいつもそれ自体が川であるという理屈は三木成夫先生と共通しますね
読了日:12月20日 著者:龍村修,やましたひでこ
情熱の伝え方情熱の伝え方感想
実はあの各界の第一人者ともいえる人たちがどのように出演しているのかと思いきや意外とオーソドックスな手法なので驚くばかり。やはりアサヒビールというスポンサーもあるが30名ほどのリサーチャーや放送作家がプランを持ち寄りそこから取捨選択されていくというのだから自ずとそれほどでもない時期がありそうだがクオリティの高さはプロデューサーの志の高さによるものなのだろうな。元々ラジオや東京への左遷人事も乗り越えてきただけにガッツも人一倍。ある種の報道経験から得た胆力もあったりしてそれが粘り強い取材に繋がるという好例かも
読了日:12月20日 著者:福岡元啓
儒教とは何か 増補版 (中公新書)儒教とは何か 増補版 (中公新書)感想
儒教研究における日本の第一人者の本の増補版。基本的に儒教関係の本は読んだことがなかっただけにかなり新鮮。いつも儒教は宗教なのか否かというのがあるがこの著者は一貫して宗教であると主張する。その大きな点は祖先崇拝を元にした宇宙観や死生観があるというのは納得。日本の仏教は葬式を担っているが儒教の祭祀を引き継いでいるという。さらに儒教の前時代も取り込んだ歴史区分とかイチイチその影響の大きさを感じるばかり。民族宗教としての神道に対して東アジア文化圏の中での儒教の位置づけについて想いが及んでそのスケール感に感服した
読了日:12月18日 著者:加地伸行
台湾1000円でできること台湾1000円でできること感想
山下マヌーさんってリゾートとか東南アジアのイメージだったけど台湾編も出していたというのは驚き。それでも初心者向けの店も網羅しつつちょっとバックパッカーも喜びそうなチープな感じも楽しい。ただ調べていくと少し物足りない部分もありつつ…かなりマニアックなスポットも紹介しているので台湾いく人は一読してもいいかもしれない
読了日:12月18日 著者:山下マヌー
やまと教―日本人の民族宗教 (新潮選書)やまと教―日本人の民族宗教 (新潮選書)感想
ひろさちやさんは仏教がもっぱら専門なのですがここでは日本人にとっての民族宗教とは何かという問いについてかなり独断と偏見もありつつ力強く書いていて説得力のあります。その要諦は縄文的な民衆神道的なものにヤマト国家の誕生により皇室神道が民衆神道を組み込んでいく様子。さらには仏教の伝来によりそれまで体系化していない祭祀のスタイルが仏教との参照の中で生まれていった様子を検証していく。それゆえに縄文的な東日本にヤマト的な関西と区分なんかも日本人論として面白いのでした
読了日:12月18日 著者:ひろさちや
古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年 1895−1945古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年 1895−1945感想
台湾国内でも日本統治下の時代が改めてクローズアップされているのだけれどこの本は当時の資料を駆使して台北から始まり地方の様子も写真で紹介していてかなり楽しめる。特にリピーターのツーリストは日本の往時の雰囲気を残した遺構を楽しむツーリズムが人気みたいなのでそのサブテキストとしても有効かもしれない。カラー写真もまるで外国人が明治の日本を撮った写真のようなエキゾティズムを感じさせてくれます。少数民族の写真とかが違和感なく収まっているのもちょっとした驚き
読了日:12月18日 著者:片倉佳史
東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版感想
宮沢さんの「80年代地下文化論」は出版当時の06年版も読んだが久々に読んで大分色々なものが消化できた。というのもその間にかつての沈黙がウソのように本やNHKのサブカルチャー講座は「話芸としてのサブカルチャー」や宮沢さんのとめどもない会話に再びで出会えたことが大きい。そしてシンガリの決定版では80年代の「オタク」「ピテカン」を総称して非身体性というキーワードの落とし込むことが出てきていてなんとも刺激的な内容であった。「80年代はスカ」というのは90年代の言説で今や80年代はやっぱりサブカル時代だったのだな
読了日:12月17日 著者:宮沢章夫
「絶筆」で人間を読む―画家は最後に何を描いたか (NHK出版新書 469)「絶筆」で人間を読む―画家は最後に何を描いたか (NHK出版新書 469)感想
ちょうど少し前に中野さんが原作を務めたマンガ西洋美術史というのがあったんだけどあれもいい本だっただけに今回の本もドンピシャ。ボテッチェリとかテッツィアーノとかの並びもよくよく考えてみるとマンガ〜からの流れを踏襲している部分が多いかもしれない。しかしストーリーテラーの中野さんで絶筆という視点によってその既視感の部分は払拭していてまことに面白い読み物になっているあたりが素晴らしいです。中野さんとキュツウするのは今イチ日本だと評価の低いラファエロを絶賛していてたり…。金持ちのルーベンスすらドラマティックに描く
読了日:12月14日 著者:中野京子
和食の知られざる世界 (新潮新書)和食の知られざる世界 (新潮新書)感想
和食というのが世界でどのように食べられているのかはテレビなどを中心に見聞きする機会が多かったが辻調のトップがどのように考えているのか気になっていたがむしろグローバルに広がるのはチャンスという見方が面白い。文化としての和食と外食としての日本企業の見方が若干混在していて読みにくい部分もあるがとりわけ中国から入ってきた食文化を日本人が本膳料理として確立していく様子を偶数から奇数と膳の数で説明していくあたりが真骨頂でさらには東西の食文化を東は寿司やソバなどのファーストフードに見立てていく解説は見事な食通ぶりでした
読了日:12月14日 著者:辻芳樹
日本霊性論 (NHK出版新書 442)日本霊性論 (NHK出版新書 442)感想
内田樹さんの特徴って簡単にいうとスピリチュアルの問題も積極的に視座に入れていることだろう。スピリチュアルではなく霊性と言い換えたのはカウンターカルチャー発のニュアンスを回避する為だろうが積極的に「見えないもの」について言及していて面白くなる。評論や宗教というのはその言葉にできるものや見えるものとそうでないものの境界線をなぞる作業という氏の主張もユニーク。しかも人間は見えないものを察する能力がありそれを日本人は劣化していると指摘する。その産物が山本七平の指摘する「空気」だという。異質同質性はそこから生まれる
読了日:12月12日 著者:内田樹,釈徹宗
民間社会の天と神仏―江戸時代人の超越観念 (日本歴史私の最新講義 17)民間社会の天と神仏―江戸時代人の超越観念 (日本歴史私の最新講義 17)感想
天というのは元々中国で形成された概念なのだが、神道や仏教からくる神仏と違いどのような経緯で日本の社会に根付いたかというのがイマイチわからないというのが問題意識としてあっただけにこういう本の存在はありがたい限り。著者は儒教が日本で広く流布した江戸時代の農業書を中心にその概念について検証しているが武士社会のみならず農民の間にも「お天道さん」といわれる世界観がしっかりあるのがわかる。よくよく読んでいくと天が世界観や道徳の獲得に使われ神は「ハレとケ」、仏が死後の世界といった価値観の区別がかなりで進んだ時代と感じる
読了日:12月12日 著者:深谷克己
超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験 (ハヤカワ・ノンフィクション)超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験 (ハヤカワ・ノンフィクション)感想
エクストリームスポーツの進化と脳のゾーンの関連性を説いた本。この本ではゾーンと呼ばれる至高体験がなければ数々の超人体験が起きないというのだがそれが人為的に起こせるのかどうか検証している。そのベースになるのがこれまでの取材によるXゲームなどの選手のインタビュー。このプロセスは脳のホルモン分泌である程度明らかになっているが内部の要因と外部環境さらには集団的な関連要素などまだ変数が多くてすべて調べきれないのが現状のよう。ただ修道院やサンガなどの宗教集団の瞑想との類似点に気づくばかりでこのジャンルの興味は尽きない
読了日:12月12日 著者:スティーヴン・コトラー
オンライン・バカ -常時接続の世界がわたしたちにしていること-オンライン・バカ -常時接続の世界がわたしたちにしていること-感想
21世紀になって積極的に関わりだしたネットも個人的には一時的な熱狂から遠ざかりつつある。むしろ周囲の依存症的な行動様式にちょっと驚くのだけにこうしたネットに大して懐疑的な本はつい手に取ってしまう。内容はさして他の本とは変わりはない。脳への影響や行動様式の変化、デジタルネイティブに対する批判などだがこの本で一番肝になるエピソードが、ネットに依存した少女がオンライン上で知り合った男性に裸の画像を送りネット上で嫌がらせをされイジメにあい自殺する話だろう。最後にはまたソローの「森の生活」が出てくる。影響力大きいな
読了日:12月12日 著者:マイケル・ハリス
dancyu合本 ワイン。 (プレジデントムック)dancyu合本 ワイン。 (プレジデントムック)感想
danchuは普段読まないので新鮮な気分で読了。最初に出てきた特集が個人的にはまっている日本のワインだったのでうれしい限り。フジマル醸造とか最近話題のワイナリーが紹介されていて「こんな人が作っているのか」とますます身近に感じるのが横文字が苦手の私のような人間には楽しい。都農のワイナリーも九州料理のお店で頂くと格別で素晴らしかった…それと突然のリースリングという葡萄の品種から作られるワインの特集もマニアックで好み。ちょっと気になっていた品種なのでメモしたり、スパークリングの特集はちょっと高めと突っ込んだり…
読了日:12月6日 著者:
「ない仕事」の作り方「ない仕事」の作り方感想
やっぱり心の師であるみうらさんの本は外しませんね。過去の仕事ぶりを振り返りつつ本当に広告代理店の人が「みうらさんに聞かれるといつ使われるかわからない」というのがうなづけるほどアクティブにどん欲に自分のお気に入りの世界いやお気に入りかさえもわからないものを次々とブームにしていくその手法を明らかにしています。結構みうらさんだけに面白く書いていますが実際には編集者なんかを接待して酒席でもてなしたりするくだりが本質なのかもしれません。でもマイブームもゆるキャラも今後50年ぐらいは日本語として定着すると思うとすごい
読了日:12月6日 著者:みうらじゅん
音楽の未来を作曲する音楽の未来を作曲する感想
現代作曲家の野村さんというのはNHKの番組などでその存在がクローズアップされているというのだが、その作曲というか手法が演劇などのワークショップなんかや即興性を主体にした演奏でもはやコンテンポラリーダンスとかそんなイメージもある。内容はいわば自伝なんだけど、しょうぎ作曲という相手と対峙しながら相手の曲から別の曲をイメージしていくというのも何とも面白かった。それが制作のベースになって他者との関係性そのものを曲にしていくというプロセスが実に今の閉塞感の時代とマッチしている気がします
読了日:12月6日 著者:野村誠
台所のおぢさん台所のおぢさん感想
とにかくレシピレシピレシピ…その数214種類もあるという。しかも魚柄さんの日々の節約から生み出された残り物や普段なら捨ててしまうようなものまでとことん頂いてしまうのがうれしいのであります。イカゲソと茄子のバター炒めなんて殿堂入りの美味しさであります。ちょっとレシピ本では飽き足らない人にもう一品プラスできること請け合いでちょっとうれしいかも
読了日:12月6日 著者:魚柄仁之助
ハーバード式「超」効率仕事術 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ハーバード式「超」効率仕事術 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
ベースにあるのはGTDの本で読んでことのあるような内容なのでさほど驚くことはなかった。中盤に本の読み方やプレゼンテーションについて結構誌面を割いていてやはり外国の経営者は外にアピールする能力が必要なのねとグローバル企業とドメスティックなビジネスの違いを痛感した中身でした
読了日:12月5日 著者:ロバート・C・ポーゼン
観音菩薩: 変幻自在な姿をとる救済者観音菩薩: 変幻自在な姿をとる救済者感想
観音菩薩の成立とその変化ぶりのそれぞれの尊格についても解説していて非常に興味深い内容。そもそもその成立は世の衆生を救う為に様々に変化して教えを説くというのだからその多様性はむべなるかな。その根拠となっているのが観音経であり法華経の中に組み込まれていくというのは面白い。その展開も密教などの初期の段階で多面多譬になっていうのはごく普通の人間の願望とそれを擬人化していく中での模索の産物であるというのを読むにつれ架空の存在である観音菩薩にこれほどまでに信仰が集まるというのは聖母信仰にも近い包容力なものを感じる
読了日:12月5日 著者:佐久間留理子
スタンフォードのストレスを力に変える教科書スタンフォードのストレスを力に変える教科書感想
前著の「自分を変える教室」を読んだ読後感は「マインドフルネスそのものだなあ」というものだったがその中身をより一歩進める方向になっているのが本著。アメリカ人にありがちなポジティブシンキングというよりも内容はいわゆる「ストレスコーピング」といわれるコーチングの理論に近いものだと思う。まずストレスを肯定的にとらえてそれを自分のパフォーマンスが発揮しやすい状態の中で緊張しながら成功体験を積み重ねるというメソッドが科学的な実験と検証の中から答えを導きだそうとする。当然ながらそのベースにはマインドフルネス的発想がある
読了日:12月5日 著者:ケリー・マクゴニガル
騙されない生き方騙されない生き方感想
元々中村うさぎが苫米地氏に恋愛指南をしてもらったのがきっかけだというがその関係性からかざっくばらんに苫米地氏の発言を斬っていく対談はなかなかお目にかかれない。恋愛やお金メディアなどの幻想からいかに騙されずに済ませるかというのを苫米地氏が解説すればそこに中村うさぎが突っ込みを入れるパターンでずんずん進む。苫米地氏の主張は洗脳のそれよりも意外と欧米的な思考から逃げ出して汎アジア的な思考に行き着くのを提案しているように思えるのだがカトリックの学校出身の中村がそれをどこかうさん臭くとらえるあたりの攻防がおもしろ
読了日:12月5日 著者:苫米地英人,中村うさぎ
日本統治下の台湾 (平凡社新書)日本統治下の台湾 (平凡社新書)感想
日本統治下の台湾というのはウェイダーシェンのプロデュースの映画やホウシャオシェンの映画でも描かれているが、かつて台湾の新聞で健筆を揮っていたのが内地人(日本人)の国島水馬という風刺漫画家だという。細かなプロフィールはわからない人物らしいが日清戦争で割譲された台湾の時事問題を風刺にこめていたマンガを数多く残している。そのマンガは生き生きと当時の世相を語っていて台湾のインフラ開発や昭和天皇(当時皇太子)の訪問なども興味深い。その後の霧社事件なんかにつながるような少数民族の描写なんかはまるでちび黒サンボみたいだ
読了日:12月5日 著者:坂野徳隆
歴史を考えるヒント (新潮選書)歴史を考えるヒント (新潮選書)感想
網野先生の本をきちんと読んだのは初めて。元が講演をまとめたものなので読みやすい。その通低するメッセージというのは日本語の本来の意味を当時の歴史背景に置き換えて読むということ。当時にタイムスリップするような感覚が必要だということ。そう考えると日本という国家の成立も丹念に読みしかもその時代が必ずしも日本全域に支配が及んでいないといった指摘や関東と関西の違いなんかも平将門のエピソードなどを交えていくと実に生き生きとしていく。どうしても為政者の作った歴史に依拠しがちだが日本語の歴史こそ真の日本史なのかもしれない
読了日:12月5日 著者:網野善彦
松浦弥太郎の「ハロー、ボンジュール、ニーハオ」松浦弥太郎の「ハロー、ボンジュール、ニーハオ」感想
松浦さんの本はなるべく読むようにしているのだけれど今回の本はどうも既視感があって乗れなかった。おそらく本田健さんの「ユダヤ人大富豪の教え」みたいなメンターが出てくるエピソードがそう思わせるのだろう。その後にフランス語習得に繋がるエピソードに中国語の話も出てくるのだけれど自己啓発のありようみたいなものからちょっと微妙に外した感じが好きだっただけにあまりにド直球な感じが個人的には好みではなかったかもしれない。でも松浦節は相変わらず健在でもある
読了日:12月5日 著者:松浦弥太郎

読書メーター
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2015年12月08日

2015年12月の読書

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:9527ページ
ナイス数:317ナイス

台湾で日本を見っけ旅 ガイド本には載らない歴史さんぽ台湾で日本を見っけ旅 ガイド本には載らない歴史さんぽ感想
そして台湾のマンガルポも第二弾が出ていました。ついに「KANO」の舞台でもある嘉義にいったかと思えば日本からの移民が多数暮らしていて今も色濃く往時の姿を残している花連あたりも網羅していてますますマニアックな世界に突入。でもルートを観る限りあまり台北からも離れていないようなので少しじっくりと旅したくなる。さらに台東あたりだと少数民族の生活ぶりも垣間見えたりこれまた映画の「セデックバーレ」の世界だったり…。ウェイダーシェンの世界観が日本人のアイデンティティも呼び起こす現象は何とも不思議かつ興味深く読みました
読了日:11月29日 著者:おがたちえ
なつかしい日本をさがし台湾なつかしい日本をさがし台湾感想
映画「KANO」のプロデューサーでもあるウェイダーシェンの作品なんかで日本統治下の台湾というのがクローズアップされている。この本がでたのは14年夏だからちょっと被るのかな。台北の博愛地区から始まる旅は比較的台北は少なめで台南や高雄など中心。ガイドブックでもほとんど触れられていない地域だけど近年は日本人も随分増えたようだしなんといってもご高齢の方が日本語をしゃべれるので感激する人が多いのも納得。多分三十路ぐらいの著者も案の定昔ならではの人との交流に喜んでいる様子。八田興一が作った鳥山頭ダムが惹かれたなあ
読了日:11月29日 著者:おがたちえ
ビビアン・スーの我愛Taiwanビビアン・スーの我愛Taiwan感想
10年以上前の本なのでかなり情報はアップデートされているかもしれませんが台北はもとよりビビアン出身の台中や父親が経営をしていた中華料理店(現在は閉店)の淡水なんかも紹介していてかなり有意義。セデックバーレでもクローズアップされた少数民族についてもまだアイドルだった彼女は積極的に発言していてこれはこれでかなりアイデンティティが誇示されていて素晴らしいと思った次第。よくよく調べるとこの本きっかけで結構今でも日本人が通う店というのができたみたいで「女娘的店」は不便そうだけど金城武も行きつけらしいから行きたいなあ
読了日:11月29日 著者:ビビアンスー
ニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたちニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたち感想
音頭とはこれまた意表をつく題材でしたが「東京音頭」のできるまでや炭坑節に始まり戦後の音頭ブームの様相。そこからパロディ(スパイクジョーンズや大滝詠一)に誌面を割きつつアイドルやアニメの挿入歌まで多種多様な音頭の世界を読み進めばっちりとはまってしまった。BGMはYOUTUBEで聴きつつ自分の過去にも随分と聴いていたことに気づきます。最後には音頭でDJをしているフクタケ氏も紹介しているが確かにDOMMUNEで放送した時にはえらい数の人が食いついたのは身近だったからでしょう。でも花柳界が起源とは何と最近なのか
読了日:11月29日 著者:大石始
和ラダイスガラージBOOK for DJ ([テキスト])和ラダイスガラージBOOK for DJ ([テキスト])感想
MXテレビの「DISCOTRAIN」を観ていたらマイケルフォーチュニティの解説であのマハラジャグループの総帥・成田勝バージョンについて言及されていてうわ懐かしいと和物の積ん読本をおもむろに読み出した次第。永田一直氏といえばトランスソニックやマニュアルとかテクノや珍品レコードに定評のある審美眼の持ち主。そんな彼が近年力を入れている和物のパーティが本書のタイトル。もはや和物のパーティは珍しくないけどレコードガイドは何だか怪しげなアイテム満載。巻末に幻の名盤解放同盟と対談していてその流れを引き継いでいる印象だ
読了日:11月26日 著者:永田一直
映画秘宝EX ドラマ秘宝vol.1 ~マニアのための特濃ドラマガイド (洋泉社MOOK 映画秘宝EX)映画秘宝EX ドラマ秘宝vol.1 ~マニアのための特濃ドラマガイド (洋泉社MOOK 映画秘宝EX)感想
世界史への興味からチューダーズという海外ドラマにハマり気づけば表紙のウォーキングデッドにすっかり釘付けというまさかの展開になりつつある今日この頃。高校生の頃に夢中になったジョージAロメロの世界で盛り上がっていた自分がこの年でもゾンビ映画を見ているとは思わなんだ。というほど中毒性の高いドラマの世界をかなり濃いメンツが解説しています。当然、ブレイキングバッドなど網羅しつつ最近の作品中心のセレクトは食指が伸びるものばかりです。個人的にはこの「時間泥棒」とどう付き合うかという小文がなかなか心に刺さりました。同感。
読了日:11月26日 著者:町山智浩,青井邦夫,アサダアツシ,♪akira,杏レラト,池田敏,伊東美和,大内稔,大森望,岡本敦史,キシオカタカシ,桑原あつし,堺三保,澤井健,神武団四郎,セルジオ石熊,添野知生,田亀源五郎,てらさわホーク,中野貴雄,長野辰次,長谷川町蔵,馬飼野元宏,松江哲明,真魚八重子,光岡三ツ子,森直人,柳下毅一郎,山崎圭司,鷲巣義明
できれば服にお金と時間を使いたくないひとのための一生使える服選びの法則できれば服にお金と時間を使いたくないひとのための一生使える服選びの法則感想
良書。そろそろ若い服装もきついなあという人が世の中の標準的な服装のイメージに寄り添いつつちょっと自分なりの個性をトッピングしたいという学生服の裏ボタン探しのような本だ(ちょっと大げさ)。確かに一つのショップに絞ってそろえつつ少しアレンジを加えるという方法はなかなかに参考になる。ユニクロや無印の効用なんかも書いていてこれは40代以上にはかなり意欲が湧いて出てくるかも。著者はコンサバな感じなのであとは自分で好きな服に合わせればいいのでしょうね!
読了日:11月26日 著者:大山旬
今井正映画読本今井正映画読本感想
今年に入って突如見だした今井正監督の発言やプロフィール、全作品紹介などファンにはたまらない内容。どちらかというと社会派監督としてのイメージが強かったけど往時の記事や山際永三さんの今井正論などを読む限りあくまで社会に寄り添った巨匠監督であるというのがわかる。とはいえ独立映画というカテゴリーの中でテレビ作品の製作をしたり屑拾いまでしたというのも苦労が忍ばれる。ひめゆりの塔の賛否両論ぶりなんかも意外で戦後すぐの戦争をいかに描くかというイデオロギーな時代なのが隔世の感。あくまで庶民の娯楽を貫く今井監督が素晴らしい
読了日:11月26日 著者:
仏教図像学: インドに仏教美術の起源を探る仏教図像学: インドに仏教美術の起源を探る感想
正直こういう本が欲しかったです。仏像が誕生する以前からインドの仏像そして中国や日本に渡ってきた仏像の種類やいわゆるアトリビュート的なものさらに印相に至るまで事細かに書いてあるのは著者が学生用の教科書として準備していたという原稿だからだろう。だがこれがまた仏像鑑賞の上ではとてつもなく意味のある解説でそれぞれの仏像がどのようなメッセージを持って作られているのか。それだけでなく日本の場合は習合という縄文と古代神道とのハイブリッドで生まれた部分や庚申信仰(道教)なんかも入っていて実に芳醇な味わいがあり興味津々です
読了日:11月24日 著者:田中公明
芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本感想
お手軽な本かと思って手に取ってみましたが後半はかなり硬派。絵の見方みたいなものをさらりと紹介しているのですがそれぞれ著者のそれまでの経験を積み重ねたような実践的かつ面白い鑑賞の仕方が書いてあって面白かった。買い付けをするイメージだったり、とにかく1つの作品の前で3分間立ってみるというのは国立近代での藤田の作品展の時に実践してみたら思いのほか色々な言葉が自分の中から出てきて面白い経験をしました。あとカフェを有効に使うという普段使いの美術館というのはこれからの高齢化社会を考える上では本当に重要だと思ったりした
読了日:11月23日 著者:藤田令伊
プロレスで〈自由〉になる方法プロレスで〈自由〉になる方法感想
プロレスに関するロジックでは一家言ある鈴木みのるの言葉を集めたもの。元々雑誌の連載なのでリング上の出来事とリンクした話が中心になるので新日本の再ブレイクとそこからスズキ軍をノアリングに持ち込むプロセスとも重なるので「外様レスラー」の矜持みたいなものを感じさせる。外様は最終的にトップにはなれない訳でそこでみのるがどうモチベーションを保つのか。プロとは何かという興行論でもある。以前に武藤が会場人気と興行人気という言葉で興行での選手の本質をいい得ていたがみのるの場合はもっとロジカルで実に頭の良さに恐れ入るばかり
読了日:11月23日 著者:鈴木みのる
いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)感想
橋本治さんがまさか自分の老いについてここまで赤裸々に書いているとは思わなかった。さらにバブル期にマンションを購入してそのローンをひたすら払い続ける日々。まるで団塊世代のサラリーマンのようなありような告白にいささか面食らってしまったが、いつになく読みやすい文章で大満喫。自身の病気や入院もどこかしらユーモアに書いているもののそこからにじみ出てくる寂寥感なんかは今までの橋本さんの文章からは感じることができなかった気がする。でもそこがいい。今までのようなどこか他者に対して突き放したような感じの先がもっと読みたい
読了日:11月23日 著者:橋本治
むなしさの正体 正しい幸せの求め方むなしさの正体 正しい幸せの求め方感想
正直、書道家が「むなしさ」についてなんで書いているのかと思いきやこの人の略歴から意外にもサラリーマンなどを経験して書道家になったという。その時の経験がこの「むなしさ」のベースになっている。つまり競争の中で求めながら生きていくとそこにはむなしさが生じるという。つまり比べない、競争に加わらないというのは仏教そのものの教えのように思える。依頼者から書を求められた時に色々話を聞いてそこに念をこめるという。漢字の由来などからクライアントのメッセージを読み取るあたりはさながらカウンセリング。本書もそんな内容だ
読了日:11月23日 著者:武田双雲
仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン感想
身近だけど意外と知らない宅配の実態を「ユニクロ帝国の光と影」の著者が書いているからガンガン突っ込んでいるのは当然のこと。あのいけ好かないユニクロの感じとは違いヤマト運輸は最終的には取材にも応えているのがとても面白い。それでもやはり潜入をモットーとするような宅配の中枢でのバイトの体験はやはり衝撃的。ベトナム人を中心とした外国人がオペレーションできているようになっているというバックヤードはやはり衝撃的。一方、佐川急便は創業者の佐川清の叩き上げぶり等は興味深いし、運転手に話を聞いたり実に行き届いた取材で良書です
読了日:11月23日 著者:横田増生
これからの「売れるしくみ」のつくり方 SP出身の僕が訪ねた、つくり手と売り手と買い手がつながる現場これからの「売れるしくみ」のつくり方 SP出身の僕が訪ねた、つくり手と売り手と買い手がつながる現場感想
ケトルの人が書いているのでかなり突っ込んだ話かと思いきやSPというセールスプロモーションの話が中心。ようは顧客に興味を持たせる施術としてのケーススタディが中心なんだけどちょっと読んでいて大きなバジェットのエピソードが中心でがっかり。大予算のSPならばうまくいく確率があがるのは当然のこと。もっと小バジェットのありようを知りたかったかも。でもケトルは出版も志向していて本屋大賞のエピソードなんかはほほえましくもあり力強くもあった
読了日:11月23日 著者:石原篤
山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015 (講談社+α文庫)山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015 (講談社+α文庫)感想
序章は山口組の分裂以降に書かれた分だが、元の本は11年頃なのでまだ弘道会が我が世の春だった時期に書かれたものだという。それなのに著者の視点は常に一定していて弘道会の厳しい回避の取り立てや一人勝ちの状況に苦言を呈していた。くしくもそれが今回の分裂では会費やトイレットペーパーや水の押しつけなど資金の吸い上げに神戸側が百姓一揆のように謀反を起こしたという構図で説明している。しかもヤクザを取り巻く状況は暴対法や国際的なマフィア資金の締め付けなどもあり今後一つの解答として税金の追徴というパターンで追い込むのだという
読了日:11月23日 著者:溝口敦
安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)感想
「ドンキホーテ」の創業者の一代記。なんでこのタイミングで出たのかと思いきや経営の第一線を後進に任せたからということ。とはいえ前の著書でもその独特のガッツのある語り口は健在でその背景には貧乏やモテたいという強烈なハングリー精神にある。以前にはあんまり触れていなかったフリー麻雀の話や運についての言及は独特の野生勘や勝負勘が働いたりととにかく面白い。その人材に対する考え方や海外進出なども基本的には逆ばり。それこそが弱者の兵法なのだと気づいてしまった。もたざる物は素人ならではの感覚でどん欲にいけというエールだ
読了日:11月23日 著者:安田隆夫
過剰な二人過剰な二人感想
林真理子さんの認識を改めたのが「野生のすすめ」だった。一方の見城さんは初期の本が面白かったのだが幻冬舎の株式買収騒動のあたりから中々本音を書かなくなっていたのでちょっと寂しい限りだった。そんな二人が16年間も絶縁状態だったのは知らなかったがきっかけが「本が売れていない」と見城さんが指摘したことだという。だが作家というのはしぶとい。そこから見事に自分のコンプレックスを作品にして今回の対談でも何のてらいもないのが心地よい。見城さんはまだそこに経営者としての防衛本能が働く。どこか編集者を演じている。そこが面白い
読了日:11月23日 著者:見城徹,林真理子
新・日本のワイン新・日本のワイン感想
日本のワインに興味のある人であれば必読の本かもしれない。前半は日本のワイン史をなぞりつつ、大手のメーカーのワイナリーの紹介から、全国の蔵元のガイドも実に懇切丁寧であります。特に気になるエリアのワイナリーの項目を読むだけでも楽しいが意外になかなか由来のわからない大手のメーカー発のワイナリーは実は日本のワイン史を語る上では欠かせなかったりしてちょっと認識が新たになりました。それにしても地域で見た時の東北地方がもうちょっと盛り上がってほしいと思ったり山形のワインのうまさも物語で納得したりしました
読了日:11月23日 著者:山本博
日本人にとって美しさとは何か (単行本)日本人にとって美しさとは何か (単行本)感想
高階先生の本はどうしてもベースとなる知識がかなり必要なのだけれどこの本は講演などをまとめたものなので比較的読みやすかった。中でも冒頭。日本人が絵と文字を併存させながら美術を独自に開花させていったことに注目していてさらに万葉がなの美しさ。古の日本人が詩を読むということの敷居の低さなどに西洋人が驚いたという例を解く。他にも平面的な構図だったりするけれど、そのモチーフが写実ではなく心象風景だったり時間の経過も含めて描いている。そこには文字を含めた物語性もあったり「写実」ではなく「見えないもの」を書くベースがある
読了日:11月21日 著者:高階秀爾
男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋感想
「女たちよ!」とかで厳しい言説の中にもするどい視点満載だった湯山さんが今度は男性を斬るというので楽しみにしていたのだがこれまた痛快でありました。何しろ今時の男はとどのつまり「金と出世モテ」で虚勢を張るところに行き着くというのがオトコの本音だという。そこで昨今のカフェブームで職場以外のエスケープ場所を見いだすもののそこでも「金と出世モテ」を求めるというパラドックスに陥るという話は納得。さらにはカフェ文化以前の「リラックス」の雑誌なんかや渋谷系のテキストからのオトコのこじらせぶりは知識偏重で旧態然ぶるに愕然
読了日:11月19日 著者:湯山玲子
世界はこのままイスラーム化するのか (幻冬舎新書)世界はこのままイスラーム化するのか (幻冬舎新書)感想
島田先生とイスラームに詳しい中田さんは東大の宗教学での先輩後輩というだけあって中田さんの舌鋒はいつもより若干おとなしめか。それでもイスラームというのが仏教や聖書のように作者がイマイチわからんのと違いムハンマドが聞いた神の声にムハンマドの言行録を起点としてそこからイスラム法学者による法の解釈や生活習慣に及ぶまでの規則などにも話が及ぶ。カリフ制の再興を願う中田さんはそこでもISについても言及していて批判的な論旨も非常に明確。最高幹部がカリフの系譜にあるというのも驚かされる。かなりイスラームのイメージ変わった
読了日:11月19日 著者:島田裕巳,中田考
哲学な日々 考えさせない時代に抗して哲学な日々 考えさせない時代に抗して感想
東大の教鞭をとる哲学者が書いたエッセイなのだが決して難しくないのがみそかな。哲学というのは一般的には過去の哲学者の難しい理屈を噛み締めるように足跡を学んでいくのが常だがそこをこの先生は自分の身の回りに置き換えて思索する。そしてん散歩する。やっぱりギリシャの哲学者や外山滋比古先生よろしくの歩く哲学はいいのかもしれない。また論理学でも大家であるだけに論理学の思考法はイチイチ文章を考える上での道筋を考えていくのに適しているのかと思ったり最近の反知性主義の批判もありつつとても受難で幅広い論考で堅苦しくないのがいい
読了日:11月19日 著者:野矢茂樹
河合隼雄の幸福論河合隼雄の幸福論感想
またまた河合先生の本。こちらは東京新聞に連載されていたエッセイをまとめたものだけど幸福についての議論があれこれ綴られている。その中でいつものように断定調ではないが幸福に見える人はどういう人が多いのかということで気づきがあったと書いている。ひとつには夢中になるものがあるということ。それと自分のよりどころになるものがあるということを書いていた。この幸福感は確かによくわかる。仏教でいう「三昧」だったりキリスト教にある聖母信仰の現場をスペインで見た時に感じたことだったりするのがある種の境地なのかなと思ったりしたな
読了日:11月16日 著者:河合隼雄
三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町 (幻冬舎新書)三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町 (幻冬舎新書)感想
一般的に遊郭のイメージって五社英雄だったりするんだけれど女性のドロドロの部分はさておき実際の暮らしぶりや当時のお金のかかり方なんかを現在の貨幣価値に置き換えたりしながら現代人が読んでもわかりやすく解説しているのが本書。太夫と花魁の違いとか正式な遊郭と明治以降の遊郭、さらには岡場所といった公認の場所以外での売春の実態なんかも書いていてなかなか興味深かったです。それにしても後半では男色の衆道の話も出てくるがそちらの方がよほど男女間の関係とも違い「粋」とは正反対の情念の世界が感じられて怖く思ったのは確かだ
読了日:11月10日 著者:堀江宏樹
日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編感想
ああっ、やっぱり旅行っていいなあと思える本。最初に出てくる北海道の砕氷船や流氷に乗るのも楽しい。でもこの本の表紙に出てくる宮崎の高千穂峡の旅が読んでいて神楽に自然にへんてこな真鍋大師の仏像を観ているとこれまたなんと日本のヘタウマな信仰の態度についほくそ笑んでしまう。やっぱり貴族の文化とは違う素人的な素朴さと自然は日本的だと思わされてしまうばかりなのであります。高知の沢田マンションも家族に内緒でいってみたい超ワイルドな感じもいい
読了日:11月10日 著者:宮田珠己
[新版]こころの天気図[新版]こころの天気図感想
最近、禅のお坊さんが書いている本を読んでいると河合先生の文章を思い出した。この何とも弛緩して人間の怠惰や悩みに対して肯定的に受け止めるというのはまさに河合先生のセラピーそのものではないか。そう思って久々に読んでみると大それたことは書いていないのだがそれでも読後感がどこか脱力した自己肯定感が残るというのは不変なのだなあとしみいるのでありました。振り返れば20代前半ぐらいに河合先生の書物から感じる仏教感というのが今の坊さんの本を読むと既視感を感じる理由がわかった。多分、その手の仏教エッセイは自分には必要ないな
読了日:11月9日 著者:河合隼雄
私の異常な愛情―不肖・宮嶋流 戦争映画の正しい観方私の異常な愛情―不肖・宮嶋流 戦争映画の正しい観方感想
報道カメラマンで戦場や自衛隊の撮影でも定評のある宮嶋カメラマンがこれまで観てきた戦争映画をメジャーから超マニアック作品まで紹介している。基本的に戦争映画を男の子の通過儀礼的にとらえている御仁だけに男臭い作品になると俄然筆致がエキサイトしてくるというのが読んでいてどの作品が面白いのかを知る上での参考になる。名作でも「スターリングラード」のようなソ連の横暴ぶりを知るような映画はなかなか日本人にはなじみがないけど丁寧に解説もしたり「ワイルドギース」のような傭兵にもシンパシーを感じていたりと見たい作品も増えたな
読了日:11月9日 著者:宮嶋茂樹
八紘一宇 日本全体を突き動かした宗教思想の正体 (幻冬舎新書)八紘一宇 日本全体を突き動かした宗教思想の正体 (幻冬舎新書)感想
八紘一宇の塔を形作っている石というのはかつての「東亜」の思想に感銘した芸術家が第二次大戦中の植民地からもってきたという話を聴いて驚いた。しかもその石を返還しろと今更中国などが言いがかりをつけるのも驚いた。「八紘一宇」という戦争のイデオロギーの象徴のような言葉は元を正せば田中智学という日蓮宗の信者が広めたものだという。石原莞爾や宮沢賢治しかり日蓮の教えというのは戦前から天皇を国家の中心に据える「国体」の理論的な支柱の役割をしていた。宗教家が意識的に国家論を示していた時代。まさに「政」と宗教というのは不可分だ
読了日:11月9日 著者:島田裕巳
誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす「わびさび」 (光文社新書)誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす「わびさび」 (光文社新書)感想
この前国立博物館に兵馬俑を観に行ったら兵馬俑には元々色が塗られていたのを知ってえらく驚いた。日本の仏像も然りで確かに色を塗られていた往時の菜食を再現するのが本書の著者の仕事でもある。帯にある阿修羅像の色の皮膚の鮮やかな赤もさることながら衝撃的だったのが俵屋宗達の「風神雷神」の色彩のド派手なこと。どちらかというと琳派のような洗練のイメージだったがむしろ辻惟雄先生の「奇想の系譜」に連なるものであるなあと思った次第。むしろド派手な色彩感覚というのが日本人の色の基層にあるのではないかと感心してしまった。目から鱗
読了日:11月9日 著者:小林泰三
大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ (筑摩選書)大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ (筑摩選書)感想
仏教というのは何とも不可解というのか人によって解釈が随分違うなあという問題意識から手に取ってみてかなり疑問も氷解した。大乗というのは仏陀を超人的な人格としてとらえるのかあるいはサンガ(出家者集団)を率いていた人間としての捉え方の違いが大きいようだ。お布施を巡る金銭の授受を認めるか否かというのが根本分裂の大きな要因だったのだろう。他にもストゥーパを巡る遺骨が仏陀の本性なのか違うのかなんかの議論は仏像の誕生とも関連しているエピソードのようで興味深い。転生についての考えの違いも根本部分はこの辺がきっかけのようだ
読了日:11月9日 著者:平岡聡
ブッダは実在しない (角川新書)ブッダは実在しない (角川新書)感想
いわゆるブッダというのは「覚りを開いた人」ということでいわゆるブッダ個人ではなく様々な人がいたというのが本書の趣旨。今でいう阿羅漢の逸話と創作が結集させたのが様々なお経なのだろう。そうした中でブッダのエピソードが固定化していくというプロセスを最近の仏教研究からつまびらかにしている。しかも仏教の研究はかなり遅くてまだまだ進んでいないというのが正直なところらしくかなり不明な点が多いなあというのが印象。日本に来ている大乗仏教がかなり独自な展開をしていることを考えると仏教というのは宗教というより死生観に近いな
読了日:11月9日 著者:
偶然の科学偶然の科学感想
複雑系といういってしまえば当たり前のテーマは自分の中にも切実なものとして考えるようになってきた。A→Bに至るプロセスには考えるべき要素がありすぎて整理しきれない、ましてや予測もできない。著者の処方箋は起きたことをその場でエイヤッと対応せいというまさかのアドリブのすすめなのであります。これってでも戦略ストーリーの楠木健さんのいう経営者(意思決定者)のセンスが問われる部分でトヨタなんかはOJTとして仕組み化しているがそれは有効かと考えさせられる。カイゼンの揺るがなさもそこにあるわけで示唆に富むエピソードも満載
読了日:11月2日 著者:ダンカン・ワッツ
「居場所」のない男、「時間」がない女「居場所」のない男、「時間」がない女感想
タイトルがショッキングだったのでエッセイの類いかと思いましたが意外としっかりしたワークライフバランスの本でした。居場所のない男へのエールはさほどなく(笑)むしろ中心にあるのは都市で暮らす女性たちの動向への危惧。いわゆる出産年齢の問題や育児の為のインフラの不足を嘆くのですがやはり現役の主婦でもあるだけに心の叫びのようなものは切実でありました。この男女のすれ違いというのはどうしても戦後における家事と労働の役割分担の時代から低成長の時代となった日本の女性が家事+仕事という二重の負担を負うようになったのが大きいな
読了日:11月2日 著者:水無田気流
発信力の育てかた:ジャーナリストが教える「伝える」レッスン (14歳の世渡り術)発信力の育てかた:ジャーナリストが教える「伝える」レッスン (14歳の世渡り術)感想
いわゆるネット時代の記者の取材の作法術なるイメージなのだけれど読み進めていくとメディアリテラシー、つまり昨今の怒濤の玉石混淆の情報とどう付き合うかみたいなものが中心のテーマとして浮かび上がってくる。商業ジャーナリズムに固執するあまり後半はいささかハードルの高い項目(他人に読んでもらえとか…)が並び現実的ではないけれど、ブログにしろツイッターにしろ匿名と記名で状況は随分違う訳でその辺のプロではない人の啓発にスポットを当てるべきだったかなあと思った次第。でも一次情報に当たれとかは今の時代こそ有効なアドバイスだ
読了日:11月2日 著者:外岡秀俊
水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)感想
なんとなく読んだことがあったのは「芸術新潮」が初出だったからか。鬼太郎登場の最初のバージョンが読めたり水木先生の原点にある戦争体験についても断片的にしか読んでいなかったので色々気づきがあった。最近になって鬼太郎に出てくる妖怪の多くが江戸時代にあった妖怪の系譜を辿っていたのも何となくわかっていたがこうしてみると日本の妖怪やハロウィンのホラー的な要素の原点が水木先生ではないかと思ってしまう。どこか恐ろしくてユーモラス。そこには目に見えないものの営みを身近なものとして扱う希望の側面もある。擬人化は希望の証なのね
読了日:11月2日 著者:水木しげる,呉智英,梅原猛
〈癒し〉のダンス  「変容した意識」のフィールドワーク〈癒し〉のダンス 「変容した意識」のフィールドワーク感想
アフリカのクン族ではダンスが共同体の中で占める意味が大きいという。その一番の部分が病気の治癒ということなのだけれどそれ以外にも通過儀礼の部分もあるらしい。このフィールドワークのレポートでは未開とされる部族の生活や儀式、自然観なんかも垣間見える。曖昧でいて言葉だけではないエネルギーを上昇やそれを病気の人の治癒に使うというエネルギーや魂の交換みたいなものが現代人の呪術やスピリチュアルとは違う具体的なイメージの共有の中で生活に根ざしているのが面白い。仮面にしろダンスにしろある種の体験のための儀式なのだと再認識
読了日:11月2日 著者:リチャード・カッツ
中村元の仏教入門中村元の仏教入門感想
仏教学の大家であった中村先生の大学の講義をまとめたもの。中でも初期の上座と大乗になる以前の釈尊の教えとはどういうものであったのかというのをヴェーダや初期の仏教聖典などをあげながらしゃべっているので非常にわかりやすかったです。仏教の難しいのは日本だと大乗というかなり間口の広いしかも民衆の教化のために呪術やローカルの信仰を取り入れてきた経緯があるだけにその歴史的な変遷の部分を取り除いたエッセンスのようなものが垣間見えるのがよかった。さらには分裂した際の経緯なんかもわかるし仏教というのは宗教というも道徳に近いな
読了日:11月1日 著者:中村元
おしゃべりな腸おしゃべりな腸感想
腸が身体の中でも重要な器官だというのは藤田紘一郎先生とか三木成夫先生の本でも再三指摘されているが外国の見識で知れたのは大きな収穫。しかも腸万能という感じではなく具体的に腸の司る機能について検証していく。いわば糞袋であるという視点から健康を左右するのと共に口臭や唾液との相関関係などもあったり実に興味深い視点が満載でした。でも脳への影響では鬱病はもとより道徳観もそう。ストレスがたまると下痢をする現象なんかはわかりやすい例かもしれない。腸内フローラや免疫系のシステムのエピソードも実に参考になったかも
読了日:11月1日 著者:ジュリア・エンダース
中国人の頭の中 (新潮新書)中国人の頭の中 (新潮新書)感想
中国の市井の人々は日本についてどのようなステロタイプなイメージを持っているかというのを知るのに最適な本。長年、中国に滞在している著者の皮膚感覚でのエピソードが満載だ。中でも抗日ドラマが随分と浸透しているみたいで「日本人なのにいいやつだ」といういわれ方が一般的らしい。でもそうだろう。中国の内と外をシビアに分ける考え方にすれば日本人は外に存在する関係性だが中国語を話す日本人というのは内側に入るための資格をある程度クリアしていることなのだから。あと安心安全の国である日本は周囲に壁をもたなくていいのは大きな強みだ
読了日:11月1日 著者:青樹明子

読書メーター
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2015年10月10日

2015年9月の読書

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:9329ページ
ナイス数:326ナイス

観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88感想
このシリーズも段々先鋭化されてきていまして何の作品やらわからないマニアックなものも多くなりました(笑)。それでも各々の語り部が思い入れたっぷりに語る作品はかなり古い70年代以前も多いけどつい見たくなる作品がありますね。中でも新藤兼人の絞殺とか、謎の邦画「世界大戦争」とか気になる。あとオダギリジョーが渡辺文樹のザザンボ紹介していて確かにトラウマ映画だわいとうなるがちょっと狙いすぎかななどと突っ込みを入れつつあっという間に最後まで読み切ったぞい。次も期待
読了日:9月23日 著者:園子温,西村賢太,二階堂ふみ,水道橋博士,高橋ヨシキ,柳美里,宇多丸,オダギリジョー,立川志らく,みうらじゅん,能町みね子,他
認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾感想
ウェイ・ダーシェンが監督した「セデックバレ」がきっかけ。その後も「KANO」とか日本の統治時代の作品も撮っていて台湾でもヒットメーカーになっているらしい。台湾の映画は彼の「海角七号」までほとんど「国片」(国産)の映画というのが注目されなかったというがそれでも近年になりアイデンティティを巡る作品やドキュメンタリーもかなり生まれているという実態を元台湾の支局に勤めていた特派員が書いていく。その筆致は冷静ながらも台湾好きなのがつくづくわかる。最後に作品紹介もあるが日本でDVD化されている作品が少ないのが残念至極
読了日:9月20日 著者:野嶋剛
向田邦子の遺言 (文春文庫)向田邦子の遺言 (文春文庫)感想
個人的に好きな作家である向田さんが生前に「遺言書」を残していたとは知らなんだ。その中身もさることながら家族についてあれだけ忙しいながら思いを馳せていた向田さんの人間臭さはご本人のエッセイよりも妹さんの和子さんの書かれたエッセイから感じられる。遺産の額も適当だったり目録の違いに愛猫への思いとか面白くてあっという間に読み終わる。向田さんの代表作に修羅のごとくがあるけどご本人も長年の不倫に闘病などの修羅を抱えながら生きてきた集大成ともいえる遺言に向田さんの生き方や始末みたいなものの哲学が感じられて清々しくもある
読了日:9月17日 著者:向田和子
カメラを持て、町へ出よう ──「観察映画」論 (知のトレッキング叢書)カメラを持て、町へ出よう ──「観察映画」論 (知のトレッキング叢書)感想
実はちゃんと想田さんの作品は見ていないんだけどドキュメンタリー好きには気になる存在。そんな氏が講師となってドキュメンタリーの作り方をレクチャーする内容。実際の講義からのまとめになっているので読みやすいしカメラの撮り方から編集まで独立してドキュメンタリーを撮り続けるためのノウハウや具体的なコスト計算に宣伝の方法までも惜しげなく紹介しているのには驚かされる。デジタル革命についてはついネガティブに考えてしまうのだけれどこうした小予算で思いの丈をぶつけられる作家はなかなかいないし実に頼もしい。早速DVDも借りよう
読了日:9月17日 著者:想田和弘
日本再発見 芸術風土記 (角川ソフィア文庫)日本再発見 芸術風土記 (角川ソフィア文庫)感想
同時期に復刊された「神秘日本」と対になるような作品。日本の土着の美を探る旅のはずがそこから見える変節してしまった日本の地方のありようを嘆いたりお茶を巡る堂々巡りのような議論に嘆息してみたりと岡本太郎さんの芸術に対する思いがほとばしる一冊。なぜこんなに辛辣で憤っているのか。不思議に思うのだが西洋美術のコピーでしかない日本の現代美術界に劇薬を投じてやろうという野心が垣間見える。だがそこにはむしろ形骸化した縄文の伝統があるばかり。それでも秋田から長崎まで尋ねる原動力こそ芸術に他ならない。日本論としても秀逸
読了日:9月17日 著者:岡本太郎
この年齢だった!この年齢だった!感想
女性のエッセイストの作品に興味津々でいよいよ酒井順子さんに。もっぱら週刊現代の連載は読んでいたけど今回の本ではいわゆる有名な女性の人たちの人生の転機や死の時期がいくつだったかというテーマからそれぞれの人生を考察するのだけれどベースにある「負け犬」ではないけど市井の人の視点からスターや偉人を仰ぎ見る感じが嫌みではない穏やかな文章が人気の秘訣なのでしょう。与謝野晶子の「君死にtまおうことなかれ」が23歳なのは驚きだけど百恵チャンの21歳での引退にギャフン。ダイアナが35歳で死んじゃったのと驚きの連続でした
読了日:9月17日 著者:酒井順子
河鍋暁斎絵日記: 江戸っ子絵師の活写生活 (コロナ・ブックス)河鍋暁斎絵日記: 江戸っ子絵師の活写生活 (コロナ・ブックス)感想
三菱一号館で見た河鍋暁斎の展覧会を見てほれぼれしまった。その多様な作風もさることながら弟子のコンドルの書いた河鍋暁斎の人となりに惹かれたのも事実。そして詳細な絵日記も書いていたのを知る。他の人も指摘していたがこてをみて即座に山口晃のすずしろ日記ではないかと時系列的には逆だけど思ってしまった。ちょっと図版が小さめなのでその書いてある内容をつかむことは難しいけど全体像がわかるだけでも楽しい。ものすごく多作な画家さんで人気もあったみたいでお金の出し入れも書いてあったり几帳面でもあるし考現学的な部分も微笑ましい
読了日:9月17日 著者:
まちがいだらけの教えはいらない ほんとうの宗教とは何か 白の巻まちがいだらけの教えはいらない ほんとうの宗教とは何か 白の巻感想
後編である「白の巻」では世界宗教であるキリスト教やイスラム教などのそれぞれの特徴を概説。個人的には神道の解説においての「民衆神道」と「国家神道」という区分になるほどと膝を打ってしまった。さらには本居宣長の「カミ」を優れたものとする解釈についてもアミニズムや怨霊さらには人為的な御柱などの神を包括した説明としては中々秀逸だなあとコンパクトながら気づきが多かった。仏教が日本に来たことで神道が「見えるもの」として対照化したことも理解が深まる。儒教と道教の話も「君子」と「小人」(庶民)の宗教という区分もわかりやすい
読了日:9月16日 著者:ひろさちや
宗教心を失った日本人のための ほんとうの宗教とは何か 青の巻宗教心を失った日本人のための ほんとうの宗教とは何か 青の巻感想
常々疑問に思っていたテーマなので興味深く読まさせてもらった。正直、2冊に分けているのは出版社の売らんかなな感じで好きではなかったが内容は折り紙付き。中でも道徳と倫理さらには宗教の違いについて論じている部分については納得。道徳を為政者が弱いものを痛めつけるものというのは昨今の国会の議論なんかを見ていても腑に落ちるものがある。倫理と宗教もしかり。実は自分の日々考えているのは「生活の問題」で「人生の問題」ではないなと思ったり宗教的な事柄も実は倫理だったりと何だか色々なものがクリアになった気がするのは気のせいかな
読了日:9月16日 著者:ひろさちや
快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか感想
「人間は快楽を求めて生きているのではないか」と思わせるほど、その快楽に繋がるルートは実に様々だ。薬物、アルコールはもとより高カロリー食にSEXにギャンブル、慈善行為に痛みなんてのもある。ランナーズハイに瞑想…何でもアリだ。つまり人間は他の動物と違い多様な快感を身につけた生物といえそう。そこには耐性という罠がある。そして依存する。ランナーズハイにはなかなか辿り着けないというハードルもある。この快楽という人類が獲得した多様な体系こそ煩悩の根源を感じるばかり。それが活力源になっているのも確かで興味深いテーマだ
読了日:9月16日 著者:デイヴィッド・J・リンデン
けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然感想
「ぼくは猟師になった」の著者の新刊。今の社会の中で猟師の存在はそれほどクローズアップされることはないがシビエ料理が注目されるなどにわかに話題。でも完全にその生き方のありようは自然との共生に他ならない。共生といっても結局は生きるために鹿などの害獣を撃ってさばく。その種類は昔の日本は思いのほか多かったようだ。そんな自然と隔離された人間の世界で猟師というのはまるで原始社会の精霊のように二つの世界を行き来する存在といってもいいだろう。今の世界とは窺い知れない自然との交流みたいなものにとてもシンパシーを感じる良書
読了日:9月15日 著者:千松信也
眼の疲れをとる本―眼精疲労を防ぐ・治す (健康ライブラリー)眼の疲れをとる本―眼精疲労を防ぐ・治す (健康ライブラリー)感想
ちょっと古い本ですけど点眼に含めてマッサージの効用とかもきちんと解説していてこれがとてもよかった。あと実際の治療でも目の周りを温めたりするのだけれど試しにやってみたらあまりの心地よさにそのまま沈没してしまいました。その翌日の爽快さといったらなかった訳で自分の目の疲れの原因が見えてくるいい本でした
読了日:9月15日 著者:坪井隆
身体で考える。身体で考える。感想
空中浮遊というとオウムの影響もあってかなりオカルトの世界のイメージなんだけどその実践者でもある成瀬先生が圧倒的に信用できるのはひけらかさないこと。その背景にあるヨガというものが身体技法であり「身体を伸ばすと気持ちがいいでしょ」から始まりハタヨーガの世界を極める脱力した感じも武道の達人に通じるものがあります。当然、聞き手に徹している内田さんも言わずもがなの身体技法には一家言ある人なのでとにかく面白い。身体がとか霊性の問題まで及んでいてシテの安田登さんとの対談の延長線上にあってこういう言論の流れもあるのが痛快
読了日:9月15日 著者:内田樹,成瀬雅春
ばんざい またね (一般書)ばんざい またね (一般書)感想
欽ちゃんの本って大体読んでいるので目新しい感じはないけどこの運の話や持論の「遠い」の話は何度読んでも面白い。しかし、このタイミングで欽ちゃんは明治座の舞台の引退に駒沢大学の入学もあった転機でもあった。でも欽ちゃんは飄々としている。そして老年に差し掛かっている故の余裕かと思いきや既に週間100%の視聴率競争から降りて以来ある種の境地に陥っていることが気づく。それはプレ老後みたいな趣でそこで生きる知恵みたいなものを十分に吸収しているような気がする。何という貪欲だし運の持ち主が時代を切り開くという話も好きだなあ
読了日:9月15日 著者:萩本欽一
どん底営業部が常勝軍団になるまで (新潮新書)どん底営業部が常勝軍団になるまで (新潮新書)感想
営業のコンサルタントの著者とは思えないほど惜しみないノウハウの数々を北海道のコープの営業でのケースを紹介しつつその手順も公開している。それにしても至ってシンプルな構文なれど人一倍ビジネスの中でも人間臭いセクションが営業な訳でその浪花節や嫉妬の世界を軽々と乗り越える胆力が必要だなと思わせられる。それは再生機構で活躍した富山和彦さんの著書でも感じたがより実践的な内容ではこちらに軍配が上がる。人を動かすには具体案とそれにそった協力者の醸成が欠かせないのだなあと痛感させられます。ドラマになりそうw
読了日:9月14日 著者:藤本篤志
明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法 (講談社現代新書)明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法 (講談社現代新書)感想
サトナオさんの指摘する「砂一時代」というのはネットビジネスに携わったことのある人であればものすごくピンと来る話でそこではやはりファンベースのビジネス、あるいは口コミ力を利用するかという話でそれはなるほどと思ったんだけど、その一方にあるマスビジネスがいまだに日本の人口の半分はそうであるというのは昨今の出版事情でも又吉の火花のようなヒットや音楽業界のメガヒットのありようとも重なっていてむしろネットのスモールビジネスのありようとさらにはマスの両面を考えないといけない時代なのだなあと思った次第。これは厳しいなあ〜
読了日:9月14日 著者:佐藤尚之
70年代シティ・ポップ・クロニクル (ele-king books)70年代シティ・ポップ・クロニクル (ele-king books)感想
ちょうど松本隆さんのコンサートに行った後に読み始めたから、はっぴいえんどからの日本のロックだったりこの本のシティポップなんかの記述は往時のリアルタイムなレポートとしてもとても楽しく読めた。今の時代もCEROとかの若い世代のシティポップの回帰があるけどこのあたりも日本の音楽を考えていく上では避けて通れないしまあ大瀧詠一と細野さんの狭間で生まれた何もかもの影響はなかなか避けて通れないほどの充実ぶりを70年代の音楽から感じる。それでも最後にサザンを健太さんがあげているのは単なるノスタルジーじゃなのもバランスいい
読了日:9月13日 著者:萩原健太
これでいいのだ!瀬尾ごはん: 台所まわりの哲学 (ちくま新書)これでいいのだ!瀬尾ごはん: 台所まわりの哲学 (ちくま新書)感想
玉子かけご飯にバターというシンプルな表紙にすっかりやられたのですが、前半に出てくるレシピはレシピというより「これって料理?」と思えるようなものばかり。タマネギを焼くだけ、焼き椎茸に醤油たらすとか…でもそれでも十分に美味しいというのもビジュアルで納得。ハレのご飯はさておき、普段のご飯は気楽に作ろうよというのがよくわかる。あと個人的には煮物の作り方もシンプルでうれしい。砂糖と醤油を1:2で調整する。それでアジが決まるなんて素敵すぎるアドバイスだ。かなり時短もできそうで色々アイディアがわいて出てくる限りだ
読了日:9月13日 著者:瀬尾幸子
ヒップホップ・ドリームヒップホップ・ドリーム感想
これほど赤裸々なノンフィクションはないな。新宿で育ったラッパーの幼少期から現在に至るまでのストリートに生き続けてきた生き様を隠すことなく書いている。まさか所属レーベルのトラブルまで核とは思わなかったが、ストリートビジネスという名の運び屋家業にも精を出していたかと思えばヤクザにだまされて追い込みをかけられたりDABOとのビーフについても詳細に言及していてヒップホップのリアルって何ぞやと思う人にはものすごく刺さる内容です。それにしてもここまで潔い内容にはつい感銘を受けた。この意地の張りようには拍手を送りたい
読了日:9月12日 著者:漢a.k.a.GAMI
絵かきが語る近代美術―高橋由一からフジタまで絵かきが語る近代美術―高橋由一からフジタまで感想
菊畑茂久馬さんが江戸の末期から戦後の藤田嗣治までの洋画の歴史を講演した内容をまとめた本。鮭で有名な高橋由一の重要性をとくとくとのべていて日本の呪詛的なおどろおどろしさや土着性に着目していてその稚拙さを西洋絵画の歴史とは違うものとして評価しているのが面白い。確かに花魁という初期の代表作はとてもこの世のものとは思えないある種の畏怖が感じられるしその前史として平賀源内や司馬江漢も取り上げる一方やはり戦争画についていち早く着目していて藤田へのいわれなき戦後の非国民扱いも嘆く。こうした美術の見方がもっと広まるといい
読了日:9月12日 著者:菊畑茂久馬
いちばんよくわかる集団的自衛権いちばんよくわかる集団的自衛権感想
これは良書。集団的自衛権は安保法制に帰結しやすいが、それを国際的な視点で日本の特異性に触れているのがこの本の特徴。安倍の安保法制懇にも参加していただけあって、理屈としての集団的自衛権の必要性についてはなるほどよくわかる。しかも国連憲章51条でしか世界的に集団的自衛権について定義している部分はない訳で現在の安保法制の実務運用が求められている時期に来ているのだと思う。一方日本では81年政府答弁による集団的自衛権の違憲解釈が金科玉条のように用いられている現状にも言及。さらには72年資料による正当性も主張している
読了日:9月11日 著者:佐瀬昌盛
日本離島防衛論―島嶼国家日本の新国防戦略日本離島防衛論―島嶼国家日本の新国防戦略感想
安保法制の議論が花盛りですが、元自衛隊の人が書いた防衛論。3700もの島がある日本においては離島などの防衛が重要であるというのは当然のこと。さらには離島の無人島かを防げといった提言は九州の離島出身者の視点としてユニーク。結局地政学的にロシアにとっても中国にとっても朝鮮半島にしても太平洋に出るためには日本の領海ひいては日本列島がふたをしている訳でそこに対してプレゼンスをもちたいという野心が働いているというのは皮膚感覚的に日本人もわかった方がいいと思う。そしてそれに対応した国防が問われているということのようだ
読了日:9月11日 著者:福山隆
出家的人生のすすめ (集英社新書)出家的人生のすすめ (集英社新書)感想
この本では上座と大乗に分かれる以前の仏陀の教えがどういうものであるかというのを解説する。そこからサンガという出家者の集団の生活とそこには律というルールが存在しそうした生活の中で、人生の規範を見直していくという一連の行動について、その足跡をたどっている。翻って現代社会では出家はできるものでなくとも出家的に生きることはできると著者は説く。それは人生を他力本願でなく生きること。脇目をふらずに生きること。ニートにしても出家的であると著者が好意的に評価しているのも面白い。生産的であれという呪縛から解かれるのもいいな
読了日:9月9日 著者:佐々木閑
儲けを7倍にする企業WEB戦略の鉄則 (経営者新書 141)儲けを7倍にする企業WEB戦略の鉄則 (経営者新書 141)感想
ちょっと大げさだけど、WEBビジネスをこれから始めたい人向けの入門書。とはいっても基本的なスキームの話が中心なので最終的には、コンサルやいい制作会社を選びなさいというオチになるのが若干腑に落ちないけどいいか…
読了日:9月9日 著者:志水雅眉
生誕100年 写真家・濱谷浩生誕100年 写真家・濱谷浩感想
浜谷さんの存在を知ったのは最近のこと。終戦の日に新潟のお寺の境内で撮影した太陽の写真がインパクトが大きかった。戦時中にはプロパガンダの雑誌「FRONT」なんかにも協力していたが厭戦的な気分から新潟に引っ込んで作品を撮り続けていたらしいのがわかった。その後はマグナムなんかでも活躍するんだけど今回の写真集は戦後から高度経済成長までの日本の雪景色や原風景が中心。最近読んだ岡本太郎の本の写真にも似た土着としての日本が写し出されていてほんの70年前の日本って今とは隔世の感すら感じる。写真家の優しい視線が印象的
読了日:9月9日 著者:濱谷浩
知識ゼロからの肖像画入門知識ゼロからの肖像画入門感想
木村先生の本は文章の背後に圧倒的な美術史的な知識が満載で、ある種の美術家のゴシップ的なエピソードや時代背景を知ることができるし最新の知見を知ることができて毎回はっとさせられることが多い。この薄手の入門書でも一切の抜かりはありません。さりげなくモナリザのモデルがわかったり、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のモデルにも言及。さらにダビンチの洗礼者聖ヨハネの素描に男性器が描かれていたりとイチイチ気になるトピックが満載でありました。いつになく取っ付きやすい本であっという間に読んでしまったというのは大げさでない
読了日:9月9日 著者:木村泰司
ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い (NHK出版新書 467)ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い (NHK出版新書 467)感想
ノーナの西寺さんとはほぼ同世代だからこのWe Are the Worldをリアルタイムで経験しただけに、この本の中に書いてあることがスゴくイメージできるのですが、確かにこのタイトルにあるようにこのプロジェクトに参加した人たちのその後の人生やセールスを考えるとピークアウトしていくというのは音楽産業の栄枯盛衰とも重なるのも納得であります。やっぱりモータウンの動向やマイケルの苦悩なんかも織り込まれていて読み物としても面白く読めます。そこであえてポインターシスターズに注目するあたりも郷太さんの目のつけどころが素敵
読了日:9月9日 著者:西寺郷太
日本のロック名盤ベスト100 (講談社現代新書)日本のロック名盤ベスト100 (講談社現代新書)感想
この手の本ってありそうでなかったというのは誰しも指摘するところ。あと個人的な体験がベースになっているものでどうしても順位はそれぞれの人にあるものだなあと思うもの。個人的には80年代のソニーやEMIの名盤の数々というのが少ないし、渋谷系といわれるものの評価が高いなあというのがあるがそれは別にいいでしょう。後半に日本のロックの通史でこれまた読み応えがある。この本の特徴は特定のアーティストが、音楽のイノベーションともいえる現象に繋がっている文章の構成ではっぴいえんどにキャロルに清志郎とか思い入れもたっぷり(笑)
読了日:9月9日 著者:川崎大助
「身体」を忘れた日本人 JAPANESE, AND THE LOSS OF PHYSICAL SENSES「身体」を忘れた日本人 JAPANESE, AND THE LOSS OF PHYSICAL SENSES感想
安心の養老先生ですが今回はCWニコルさんとの対談集。森の話から福島の話。そこから日本の森の話から身体論、文明論や教育へといつものように無尽に進むのですが気づかされるのは自然に身を置いた時の人間のありようみたいなものでとかく「下流老人」や「孤独死」というワードが出てきますがこれって翻って見れば自然の中で暮らしていればあまり出てこない発想なのではないか。瀬戸内寂聴さんも八相図のように野垂れ死んでそれでよしという考え方は文明が自然と切り離された現代だからこその現象かもしれない。山というセーフティネットもあるのか
読了日:9月8日 著者:養老孟司,C.W.ニコル
神秘日本 (角川ソフィア文庫)神秘日本 (角川ソフィア文庫)感想
岡本太郎が日本の土着な文化を巡りながら、弥生的な文化のさらに古層にある縄文を見いだそうとした動きというのは、美術のみならず建築や現在の民俗学などにも影響があったというのを建築家の磯崎新さんの本で知る。太郎が西洋との対比の中で「弥生的な洗練さ」を空虚といい、むしろおどろおどろしいものに美を見出す姿勢は今読んでもインパクトがある。最近だと東北の素朴仏とかボロの再発見もそうだけど表紙のオシラサマなどの神道以前の自然崇拝に近いものは日本人の底流にある気がします。そこから女性賛歌になるのが意外で興味深いテーマだった
読了日:9月8日 著者:岡本太郎
大人の思想 (WIDE SHINSHO220)大人の思想 (WIDE SHINSHO220)感想
ついつい外山先生の本は手にしてしまうのです。今回は「忘れること」の大事さについて書いていて読んでいて清々しい。知識をインプットしすぎてしまうと人間の思考は知識にとらわれてしまうという話。これはとても興味深い。ならば忘れてしまえばいいと先生は言い切る。その手法にはインプット自体を減らしてしまうこともさることながら、睡眠や運動、散歩なんかもいいという。元気に健やかに暮らしている実例ともいえる言葉だけに説得力がある。今の時代、物を減らすだけでなく知識を溜めすぎるが故の「澱」のようなものも忘れていく事が大事なのか
読了日:9月6日 著者:外山滋比古
座らない!: 成果を出し続ける人の健康習慣座らない!: 成果を出し続ける人の健康習慣感想
よい生活習慣とは何かーー。それが健康に繋がるというシンプルな視点で24時間の過ごし方を説いているのが本書。ベースには良い「睡眠」「食事」「運動」につきるのだが、ホワイトカラーを前提にデスクワークの功罪についても言及していてそれがタイトルになっている。しかし実際には本書の内容は実にバランスよく「中庸」な生活を送ることにある。古の人類は一日の大半を動く回って食事の確保をしていた。それから産業革命を経ても人類の体の「生態系」はさほど変化していないのだ。阻害された人類が健康を取り戻すにはバランスもよく最適の書だ。
読了日:9月6日 著者:トム・ラス
黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実感想
ルーシーブラックマン事件の詳細を綴った話題の本。この事件があまり語られないのは、事件の特異性よりも容疑者の織原城ニが訴訟魔だったことからマスコミが慎重だったからだ。そこに切り込んだのが元タイムズの東京支局長。案の定民事で訴えられたが勝訴。それでも弁護費用は1100万円かかったというからむべなるかな。それでも著者の筆致はひるまない。白人のバックパッカーの実態。六本木の夜の街にSM愛好者のサークル、容疑者の背景にある在日の壁。そんなことを丹念に取材を重ねる。しがらみのない異国のジャーナリストの労作。素晴らしい
読了日:9月5日 著者:リチャードロイドパリー
オール・アバウト・セックス (文春文庫)オール・アバウト・セックス (文春文庫)感想
鹿島茂先生の週刊文春の連載をまとめたものの中から、エロに関する本の紹介を中心としたエッセイがてんこもり。最近このての本ってまったく出なkなっているんだろうけど、フシギと読んでいるとある種の古くささを感じてしまった。性のことを考現学的にとらえるというのがちょっと昔の編集なのだなあと思ってしまった
読了日:9月5日 著者:鹿島茂
二人の親を見送って二人の親を見送って感想
しばし岸本さんの著作を読んでいたんだけど、一緒に同居していた父親が亡くなるというのは、本のタイトルからわかっていたものの淡々と書く岸本さんの筆致もいつもよりもウエットな感慨がある。才色兼備の岸本さんが病気を含め、両親の死に立ち会うのは一瞬、大変なことかと思いきや、ほとんどの人はすべて通る道ではないか。そう思わせてくれる本で、この人の誠実な人柄も窺えて読後感はしみじみとしてしまいました
読了日:9月5日 著者:岸本葉子
男おひとりさま道男おひとりさま道感想
上野千鶴子さんの命名したおひとりさまも男のジャンルでもその切れ味は抜群。死別に離婚、元々結婚しない人までも網羅しているが、生病老死の様々な局面を描いていて、まだ老年に届いていない世代にもちょっとしたシュミレーションになるのではないか。実は経済よりも夫婦などの家族関係と対人関係に尽きるのではないかと思った次第。まわりの人を大事にしないといけないですね、としみじみ…
読了日:9月5日 著者:上野千鶴子
もてるための哲学 (PHP新書)もてるための哲学 (PHP新書)感想
もてるといったも異性に好かれるというよりも、人生を生き抜いていくためのキーマンやメンターとめぐり逢うにはどうしたらいいのかというのが中心。それは結局、人格的に美徳に基づいた信頼や謙虚さといったものが求められるという身もふたもない落ちになるのだが…それはそれとして哲学者であるだけに様々な人生の知恵を哲学者たちがどう思索してきたかというエピソードがちりばめられていてそれがサクサクと読めて面白かった。ただタイトルはちょっと大げさかな
読了日:9月2日 著者:小川仁志
絶筆絶筆感想
菊畑茂久馬さんの存在は椹木野衣さんの本の中に出てきていて知った。画家でありながら日本の近現代の画家についての著作も多いということであった。そしてこのタイトル通り日本の著名な画家の絶筆となった作品を紹介しつつ、その足跡を淡々と下筆致でたどっている。この文章がまた実に味わい深いというか余計なものがそぎ落とされていてかつ抑制的で簡潔な書きっぷりでお人柄を感じたものだ。そしていきなり東郷青児について出てくるのだけれど、竹久夢二の最初の妻とのドロドロとかこの時期の画家ならではの公私ないまぜの人生に思いを馳せるばかり
読了日:9月1日 著者:
渡部昇一 青春の読書渡部昇一 青春の読書感想
博覧強記の渡部先生の読書遍歴を綴った大著。でもやはりここは先生の語り口故か非常にわかりやすいし、この記憶の良さは若さの理由かなと思いながら読み進める。講談社の本で育って上智に入ってからはパスカルとアレキシス・カレルをむさぼるように読んだという。個人的には何でも読んでいるイメージが合ったのだけれど、先生の場合は、自分のその時々で夢中になっている思想家やジャンルがあってそこを一個一個押さえていく作業の連続なのだなあとつくづく実感させられた。本多勝一との論争とか糾弾の話も初めて聞いて興味深かったな
読了日:9月1日 著者:渡部昇一
仏教シネマ (お坊さんが読み説く映画の中の生老病死)仏教シネマ (お坊さんが読み説く映画の中の生老病死)感想
仏教といっても必ずしもその教えがあるわけでなく、生病老死がテーマになっている作品を通して日本の社会の問題などについて縦横無尽に語り明かす対談集。秋田さんという方が元々映画のプロデューサーということもあってなかなか映画評論家が紹介しないような邦画についても解説をしていてちょっと目先が変わっていて興味深く読めた。しかも死生観というのは仏教という枠のみならずキリスト教やイスラムなどの一神教の世界にもあるわけで、その概念なんかも映画を通してだとわかりやすいものがあると思う。それにしても映画が見たいが時間がないなあ
読了日:9月1日 著者:釈徹宗,秋田光彦

読書メーター
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2015年09月07日

2015年8月の読書

2015年8月の読書メーター
読んだ本の数:30冊
読んだページ数:8170ページ
ナイス数:185ナイス

ヨーガ行者の王 成瀬雅春対談集 “限界を超える”ために訊く10人の言葉ヨーガ行者の王 成瀬雅春対談集 “限界を超える”ために訊く10人の言葉感想
とある場所で成瀬先生にお会いしたのがきっかけで手に取ってみるがなるほど、この方から感じる弛緩したようなそしてぴりっとした威厳を感じるものは対談している人皆さんが感じていたようで中々面白い。いきなり昨今不食で話題になった榎木孝明さんが出てくるのだがこれがまたかなりの武道や身体技法に通じた人で普段のもの静かな佇まいと違ってことの他印象に残る。まるで水の流れのような成瀬先生のお話もこれまた面白い。いわゆるスピリチュアルとは違う感じの体を伸ばすという人間の原点に立ち返りつつそれがサーマナになっていたというのは驚き
読了日:8月30日 著者:成瀬雅春
シェフを「つづける」ということシェフを「つづける」ということ感想
長年グルメ雑誌などで取材を続けるライターさんだからこそ、書けた内容。世界的なイタリアンやスペイン料理のブームがあったあとに、それぞれのシェフがどのように過ごしてきたのかという15人のインタビュー集。あまりにも劇的なのが、病気で車いす生活をしているシェフのはなしであったりするが、介護や本社の事情など、10年あまりのスパンで取材しているだけにそれぞれの生き様が心に残る。中でも目黒のラルーナロッサのシェフだった人が突然シンガポールに勤務しながら悪戦苦闘する様子は何とも心に残る。あえて北京という土地を選ぶ人然りだ
読了日:8月30日 著者:井川直子
伊勢神宮とは何か 日本の神は海からやってきた (集英社新書ヴィジュアル版)伊勢神宮とは何か 日本の神は海からやってきた (集英社新書ヴィジュアル版)感想
植島啓司さんの本は人生訓的なエッセイしか読んでいないという不届きものであるが、このフィールドワークで伊勢神宮の本性を解き明かしていこうという試みは面白い。確かに伊勢神宮に行くといろいろなお社があることに気づいていたんだけど、内宮や外宮から離れた場所にもあったり伊勢神宮に尼テラスを連れて行った倭姫命なんかの足跡を巡ったりして、個人的には稲作の神としての感覚よりもむしろ志摩の海の神様たちを取りまとめていった為政者たちの足跡みたいなものも感じられる。しかも写真がとてもきれいで日本の風景の凛とした静寂が感じられる
読了日:8月30日 著者:植島啓司
なぜデータ主義は失敗するのか?:人文科学的思考のすすめ (ハヤカワ・ノンフィクション)なぜデータ主義は失敗するのか?:人文科学的思考のすすめ (ハヤカワ・ノンフィクション)感想
商品開発からマーケティングに至るまで、データ主義というのは確かに高まっているんだけれど、そこからは従来の発想以上のものや潜在的なニーズにまではどこまでも応えられないというのがまずベースにある。そこからデータをにらみつつの人間の創造性や発想法の話になっていく。読み進めていくうちにどこか既視感のある議論だったのが楠木健さんの「経営とセンス」の話だということに気づく。結局、担当者のあっと驚く気づきや発想とうのはその人のセンスそのものであるという部分に行き着いて膝を叩いた次第。最終的にはリーダー論になるのも同様か
読了日:8月30日 著者:クリスチャン・マスビェア,ミゲル・B・ラスムセン
日本建築思想史 (atプラス叢書10)日本建築思想史 (atプラス叢書10)感想
磯崎新さんといえば、建築家としての側面もさることながら、その博覧強記ともいえる建築に関する知識量というのは半端ではない。そんな氏の1920年から現在までの日本の建築の流れをインタビュー形式でまとめたのがこちら。20年までの近代建築の成立における堀口捨己から師である丹下謙三にご本人、そして現在を象徴する妹島和世までの概説はかなりの建築の知識がないと厳しいが、それでも日本的なものと西洋建築の克服の時代からよりエスニックな日本の建築の発見というプロセスは同時代の建築家の奮闘ぶりからも窺える。日本論としても秀逸だ
読了日:8月27日 著者:磯崎新
「あっ、欲しい!」のつくり方 ―1%に売れば99%儲かる「あっ、欲しい!」のつくり方 ―1%に売れば99%儲かる感想
マーケティングの本であるけど、具体的な研修になぞられてストーリーガス済んでいくのがわかりやすい。読んでみるといわゆるマーケティングの初心者向けの入門書の趣でもある。ただそれをコンビニという身近な設定に置き換えてスタディケースを設けて考えさせるようにしているのが面白い。ただ一般的なビジネスに活用するにはまだまだハードルは高いかな
読了日:8月26日 著者:幸本陽平
ほどのよい快適生活術---食べる、着る、住むほどのよい快適生活術---食べる、着る、住む感想
岸本葉子さんをまとめ読みしていますがこれはかなりの長編(といったもエッセイなので短いが)書いてあったり個人的にはかなりツボ。最初の方に出てくるフードプロセッサーとミキサーの購入までの紆余曲折はなんともいえない機械音痴ぶりに読者もつい共感を覚えてしまうはず。しかも両者の違いをさりげなくわかりやすく説明までしてくれているので、読んでいるうちについつい買いたくなってしまった。ここでの文章は幾分全体的に説明調でちょっとかしこまった雰囲気。装丁にもそんな几帳面な部分が反映されていて読後感も心地よかったかも
読了日:8月26日 著者:岸本葉子
40代からはつらつと生きるために40代からはつらつと生きるために感想
岸本さんの本を連続して読んでいると堂々巡りをしているような気分になる。しかし、年齢を重ねているが故にその病気についての感慨から死についても変わってくる。これは40歳頃に書いているからむしろその悩みや堂々巡りもどこか軽さがあるし、病気のことはリアルで生々しく描いている。でも死や闘病というのを乗り越えてはいないけど、前向きに描こうとしているのがヒシヒシと伝わってくる。このとりとめもない感じが著者の魅力なのだろうか?
読了日:8月26日 著者:岸本葉子
「そこそこ」でいきましょう「そこそこ」でいきましょう感想
震災を前後したエピソードが中心。どうも岸本さんのぼくとつとした淡々とした文章もここでは影を潜め、親の介護や、自身の老いといったテーマもとりあげる。断捨離の話もあるし、俳句への興味もますます高まっているようだ。そこで窺えるのは、以前のような孤高で人ともつるまないような文章からどこか人と寄り添いたいとか息吹を感じていたいという人恋しさみたいなものを感じてしまった。多分、震災という大きなことと自身の境遇が重なった時期なのかもしれない。それにしても出典元にある「原子力文化」なる本は何なのだろうか?
読了日:8月26日 著者:岸本葉子
できれば機嫌よく生きたいできれば機嫌よく生きたい感想
岸本葉子さんのエッセイのよさは身辺雑記に尽きるがここまでどうでもいい日常や心象風景を文章にしてしまうのかと驚くことがある。体重が減ったというだけのエッセイもあれば、腸閉塞に何度もなって…というエピソードを繰り返して読んでいくと岸本さんはガンになったしお腹のエピソードが出ると腸閉塞になっての話が連想されていく。最近のブームの俳句かなとか不思議な著者さんだ。群ようこさんの小説に触れた部分では、そこから森茉莉さんの話になっていって女性のおひとりさまのありようをかいま見た気がした。あと酒井順子さんなんかもそうかな
読了日:8月26日 著者:岸本葉子
アリストテレスの人生相談アリストテレスの人生相談感想
偉大な哲学者であるアリストテレスの思想を研究の第一人者である大学教授が解説した本。ところどころに現在の人生相談に置き換えた場合、どのように答えるのかというユニークなページもありつつ、初心者にもわかりやすいようにアリストテレスの時代のギリシャについても言及しています。個人的に印象に残ったのは美徳という価値観に加え、元祖でもある中庸という思想。これはむしろ儒教や仏教よりもより広汎な意味合いを持っているし、美徳に基づいた生活こそ幸福であるというテーゼも富や神なども包括した体系に感じられその大きな枠組みに感服した
読了日:8月25日 著者:小林正弥
新版 人生を変える80対20の法則新版 人生を変える80対20の法則感想
これって特段根拠があるように見えつつ特にはない。統計の分布でいえば、偏りがあるのは当然だし、それを80対20というシンプルなフレーズで考えれば、思考の整理に役立つというのが面白い。結局、期待に対する結果というのは必ずしもこちらの思う通りには行かない訳でその際に、自分たちを納得させる共通のツールとして用いればいいのではないか。物事は思った通りにはならないよというものすごくペシメティックな気分になるけど、ネットを使っているとユーザーが陥りがちになる万能感をクールダウンさせるのはいいかなと思ったりして…
読了日:8月24日 著者:リチャード・コッチ
不器用なカレー食堂不器用なカレー食堂感想
インド好きが高じてインド料理店を開店するというのはよくあるといえばあるんだけれどこのお店はスパイスなんかのこだわりが半端でない。それだけにお店の休日を増やしてでも仕込みに時間をかけ誠実にカレーを作っていく。世田谷にある「砂の岬」というお店だ。そして年に2回は夫婦でインドに出かけて買い出しもする。そして体と心にたまった澱を解き放つ。インドのある種のリセット感はすごくわかるので、ああ〜とため息をつきながら読んでしまった。バックパッカー時代の著者が体の本能がむき出しになっていく感覚とかすごくわかる。たまらん読書
読了日:8月24日 著者:鈴木克明,鈴木有紀
財布のつぶやき財布のつぶやき感想
すっかり群さんの脱力系の文章にやられてしまっている。今回のテーマはお金とグルメのお話。といってもこのちまちまとした日々の愚痴といいましょうか、ため息とも独り言ともとれないような声高でない文章がとてもチャーミング。群さんの読者ってどこか、自分の気分や好みが重なる部分があるんじゃないかなあと思うんです。だから毎回ながらスゴく共感するしつい、ムフフとほくそ笑んでしまう。この浪費家でもないのに財布にお金がない感覚の執拗なかつ不可解な描写とかって本当に我がことのように実感できるものばかりでますますハマってしまいそう
読了日:8月23日 著者:群ようこ
画家と戦争: 日本美術史の中の空白 (別冊太陽 日本のこころ 220)画家と戦争: 日本美術史の中の空白 (別冊太陽 日本のこころ 220)感想
戦争画への興味はここにきてあがっている。椹木野衣さんの本もあるけど横浜美術館でやっている戦争と美術展の影響も大きい。画家と戦争は戦争そのものもさることながら戦闘場面だけでない戦時中の絵画を網羅的に紹介していてこの著者の誠実な研究ぶりに感謝の他ない。もちろん中心は藤田や宮本三郎といった従軍画家の作品だけれど個人的に「銃後」とされた戦争とは違う日常の場面。さらには小早川秋聲の「国の盾」という作品で軍服を着た男性が仰向けに寝ている顔の部分に檄文が書かれた日本国旗がかけられているというナショナリズムな作品だった
読了日:8月23日 著者:
「あまのじゃく」に考える: 時流に流されず、群れをつくらず、本質を見失わず (単行本)「あまのじゃく」に考える: 時流に流されず、群れをつくらず、本質を見失わず (単行本)感想
平川さんの著者にあるのは一貫して世の中がいつもいい方に進むとは限らないということ。しかも自分の思ったままに世の中が動いたため至難家内というのはかつて経営者として得た知見なのだろう。タイトルにある「あまのじゃく」とは世間でいわれている正論や常識みたいなものとは違う高さ「鳥の目線」だったり「虫の目線」だったり視線を変えてみる。そこに自己としての軸というものが醸成されるということのようだ。平川さんの経済的な視点では、経済は成長すればいいのか。富は増えればいいのか。そうした哲学もある。そして生活もある。そこがいい
読了日:8月23日 著者:平川克美
旅の流儀 (中公新書)旅の流儀 (中公新書)感想
いきなり「パンクツ」(パンツと靴下)のエピソードから始まってしまったので笑ってしまった。でも旅なれた人であればあるほど、このパンクツとお金とパスポートさえあれば何とかなってしまうのが旅というもの。老境に入ってしかもレストランも経営している玉村さんだから以前のようなパリのエスプリ云々は過去の話になりつつあるが、その日常から感じられるちょっとした景色の違いなんかを丹念に書いていて実はこうしたさりげないエッセイを読むとつい旅に出たくなる。それが旅のエッセイの醍醐味でもある。忙しいから現実は難しいので現実逃避か
読了日:8月23日 著者:玉村豊男
戦争画とニッポン戦争画とニッポン感想
戦争画への興味は最後の浮世絵師だった小林清親の作品がきっかけ。当時は日清日露戦争だったけど風刺画として清親が書いていたのが戦争画ともいえるモチーフだった。そして今回会田誠さんと椹木氏が論じているのは従軍して戦争を描いた作品。それは主に陸軍がパトロンとなった時代の画家のふるまいでもある。ここでも椹木さんは西洋絵画の中心は戦争画にあるというのも納得だが、会田氏によればその戦争画というモチーフは「草食系」の日本人には不向きであったと論じる。その直感的ながらも示唆に富む対談はベルナール藤田の戦争画にも通じる。深い
読了日:8月17日 著者:会田誠,椹木野衣
「疲れない身体」をつくる本「疲れない身体」をつくる本感想
齋藤先生の本は最近、ちょっと粗製濫造なきらいがあって敬遠していたのだが、この本はやはり身体論から出発している先生だけあって大いに参考になった。呼吸法から始まり肩甲骨などのゆるめに野口体操、個人的に興味のあった渋滞学からの知見なんかも織り込まれていてよい。さらに一日の中に疲れを精算するポイントを作るというのはなかなか思いつかないことで一日の中で疲れ自体を精算(清算)してしまうという発想はアウトプットの多い先生ならではだろう。あと人間関係やネットの功罪に、読書の効用もなるほどと膝と打つばかり。かなりの良書
読了日:8月17日 著者:齋藤孝
近くて遠いこの身体近くて遠いこの身体感想
元々ラグビー選手だった著者がいかにゾーンや無心の境地に入ることで身体論に目覚めるまでの変遷を描いているんだけれどその理論の部分は、版元のミシマ社の寄稿者である内田樹さんや安田登さんに平野甲賀先生なんかと通じるものがあるようだがそこまでには及んでいない。むしろ気づきのプロセスみたいなものを書いているので自己啓発の本に近いかもしれない。ただユニークなのは集団のスポーツである場合に「個」と「集団」の力の発揮の仕方をどうとらえるかという点について先の日本の個から発生した力の発揮の仕方に組織の視点を加えている点かな
読了日:8月17日 著者:平尾剛
投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について感想
至極真っ当な投資と金融の本である。ゆえにこれといった投資の必勝法などもでてこない。むしろ、チャートやファンダメンタルも過去の事象でありランダムウォークには参考にならないとの主張はもっとも。むしろ、投資における規律をいかに守るかということにつきるのだろう。投資の手法を相場によって変えてしまうのではなくより精度を上げていくことが肝心と説く。そして金融においては「期待」と「信用」というキーワードでこの世界を説いていく料理人としての手腕は見事。この期待と信用を計数化に落とし込めないことこそ、金融の難しさなのだろう
読了日:8月17日 著者:田渕直也
ゆるい生活ゆるい生活感想
よくよく考えたら群さんもすでに50代半ば。そんな彼女が体調の不調から漢方の先生に訪れて体が改善するという中で、自分の思考や肉体の変化をどこかユーモラスに描いていく。群さんの場合は体調の不調が目の充血(しかもハンパない)状態で出るらしくその説明の描写にぎょぎょっとなるのだけれど徐々に回復してい様子の合間に出てくるリンパマッサージの様子はイタそうだが気持ちよさそう。体の中にある水を出していく漢方の数々に納得しつつ体の反応が徐々に過大になっていく様子に驚きつつも受け止めていく様子すら楽しい。群さんの老境も楽しみ
読了日:8月17日 著者:群ようこ
日本売春史―遊行女婦からソープランドまで (新潮選書)日本売春史―遊行女婦からソープランドまで (新潮選書)感想
タイトルはなかなかおどろおどろしいんだけれど実際の売春の歴史というよりも日本において売春はどう論じられてきたのかというのが主題のよう。つまり売春は巫女に起源があるというような論や聖なる存在であるというような美化した論調にも与しない著者の主張が垣間見える。どこまでいっても売春は世界的に広汎にみられるものだという至極全うな主張がある。日本の歴史の見方は何処までも特殊性に着目するキライが多いが骨日本人にしても売春史にしてもその結論は至極ドラマティックでない所に落ち着くのが本来。日本人は過去を美化しすぎるのか
読了日:8月17日 著者:小谷野敦
きょうかたる きのうのこときょうかたる きのうのこと感想
平野甲賀さんの身辺雑記や過去の装丁を巡るエピソードなんかもまとめたエッセイ集。その時々に出てくる平野さんの書き文字の美しいことよ。とても見ていて癒されてしまう。しかし3.11を挟んで小豆島に移住した話や盟友の斉藤晴彦さんの追悼文には何ともいえない行間からにじみ出るような寂寥感すら感じてしまう。ただ博識な平野さんだけあってこの本でも武井武雄さんという挿絵画家さんの作品に出会う。何ともほっこりする懐かしい挿絵。それを調べたりする愉楽。やっぱり平野さんの本好きのエッセンスが垣間見えてまたもやほくそ笑んでしまった
読了日:8月9日 著者:平野甲賀
ストレスの9割はストレッチで消せる (マイナビ新書)ストレスの9割はストレッチで消せる (マイナビ新書)感想
通勤や職場でできる「ながらストレッチ」に多くの誌面を割いている。やっぱり体をほぐさないとという自己啓発的に読めたかもしれない
読了日:8月9日 著者:山内英嗣
大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)感想
元々は、大林監督と井口昇監督に、編著者である評論家の中川さんとの鼎談の中から生まれた企画。喜寿を迎えた大林監督の仕事術をもはや何の怖いものなしの大林監督が語る訳だから面白くない訳がない。実際に仕事術の話もしているし何よりもここ15年ぐらい商業映画界での存在感が薄れたことを自覚しつつ町おこしの映画である「古里映画」の製作に邁進していくという時代性の視点というのも面白い。実は個人的に大林監督の作品を見ていたのは、圧倒的に角川映画とその後ぐらいなもので実は多くの時間をそうした地域に根ざした活動をしていたとは驚き
読了日:8月9日 著者:
ワイルド・サイドの歩き方 ルー・リード伝 (SPACE SHOWER BOOks)ワイルド・サイドの歩き方 ルー・リード伝 (SPACE SHOWER BOOks)感想
映画「バックコーラスの歌姫たち」の冒頭にも「ワイルドサイドを歩け」が聞こえてくる。ルーリードの曲は都市生活者のBGMでもある。言葉もよくわからないのだけれど、その曲の持つメランコリックな雰囲気がとても好きだ。そのルーリードの人生におけるイライラは子供時代の電気ショックにさかのぼる。同性愛の嗜好を両親に知られ病院に通う日々。その時にきっと声がしたのだろう。そんな詩人を取り巻く時代背景はウォホールだったりデビッドボウイだったり…何とも世界の広がりを感じる。どこか寂しくてどこか不機嫌。そんな人生が読み取れる一冊
読了日:8月7日 著者:ジェレミー・リード
日本仏像史講義 (平凡社新書)日本仏像史講義 (平凡社新書)感想
別冊太陽で出ていた同じタイトルの本がある。それとは似て非なる本だ。解説でも著者の山本先生が書いているが、やはり写真中心の本でテキストに夜解説には制限がある。そこでこの本。しかも執筆時期が前後していることもあって最新の研究成果も網羅されているというからうれしい限り。ただ個人的には時系列で奈良や京都で隆盛を誇る寺院の作品についてかなり噛み砕いて解説しているのがうれしい。その時代背景や仏像の制作方法なども細かく論じているので、写真が少ないので別冊太陽とあわせて読みたい本だろう。ハードルは高いが何度も読みたい
読了日:8月2日 著者:山本勉
我が逃走我が逃走感想
以前に社長失格という本があったけど、まさにアップデートされたIT社長の成金成れの果てというような自虐本ですが、転んでもただでは起きないのが、都知事選にも出馬した家入さんの真骨頂でありましょうか? どうしてもこの手の本は、自慢臭がするんだけど、六本木で飲みまくって離婚もして最年少で上場を果たした会社も勇退させられ…とあまりにも淡々と赤裸裸に書いているあたりに女性のブログ日記にも似た清々しさを感じてしまった。多分、社会にすべてをさらしてしまっているようなある種の境地であったりするのかも。何とも複雑な気分になる
読了日:8月2日 著者:家入一真
宗教学大図鑑宗教学大図鑑感想
歴史を通じて世界の宗教の変遷を網羅的に扱った本。大判でイラストが多いから多少の翻訳の読みにくさもなれてくるとサクサク進めるのがミソ。世界宗教であるヒンドゥーから仏教はもとより儒教に道教、さらには一神教のユダヤ、キリスト教やイスラムもある。それ以上に個人的にはアフリカやアジア、ポリネシアで展開するアニミズムやシャーマニズム、祖先信仰なんかも網羅していてそれがいかに世界宗教の誕生段階においてもベースとしてあり多神教との融合なんかとも繋がっている大きな輪環のようなものを感じられてとてもそのスケール感に圧倒された
読了日:8月2日 著者:

読書メーター
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2015年08月04日

2015年7月の読書

2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:26冊
読んだページ数:7611ページ
ナイス数:180ナイス

〈自分らしさ〉って何だろう?: 自分と向き合う心理学 (ちくまプリマー新書)〈自分らしさ〉って何だろう?: 自分と向き合う心理学 (ちくまプリマー新書)感想
自分とは何かという問題を考察すると日本人の場合他の国よりも「人との間」つまり社会や帰属ひいえては居場所の話に行き着く。そうなると結局自分のアイデンティティは社会の中でしか見いだすことはできない。いくら自分の内面の中にはないのではないか。そこから帰属意識や承認欲求、通過儀礼なども社会の一員となることなんかも大きい。でも社会のバーチャル化や個の希薄化などの中で「自分の物語」を作れと著者はいう。自己物語化をすると否定的なエピソードさえもある種の意味を帯びる。物語が構築できればさらに聞き手も欲しくなる。それが人間
読了日:7月30日 著者:榎本博明
作家という病 (講談社現代新書)作家という病 (講談社現代新書)感想
元新潮社の敏腕編集者の見聞きした作家ゴシップが全編を占めていてこれは昔の噂の真相みたいでとても面白く読めた。特に前半は水上勉や渡辺淳一、遠藤周作といった大御所が出てくるのであっという間に読んでしまう。それにしても編集者と作家の関係は猛獣と猛獣使いに例えられるが、西村寿行のようななかば暴力のような理不尽さにも耐えうる仕事である編集者の矜持みたいなものが感じられる。その一方で山村美紗への冷淡な対応なんかもさりげなく書いていて、ここまで書いていいのかと思ったがいずれも鬼籍にはいっているからか、その筆は鋭い
読了日:7月29日 著者:校條剛
からだとこころの環境 ――漢方と西洋医学の選び方 (ele-king books)からだとこころの環境 ――漢方と西洋医学の選び方 (ele-king books)感想
医師でありアンビエントのミュージシャンである著者が書いた漢方の本。漢方という東洋医学の話から始まり体というミクロコスモスと環境の調和究極的には医食同源という手垢のついた言葉に行き着くのだがその言葉の持つ意味はアンビエントよろしく自分の体に内省化していくのが面白い。帯津良一先生も医術は哲学であるという言葉もある通り自分が生きていく中で医食同源としてどのような食べ物を自分の体内に取り込んでいくのか哲学が問われているそんな気がします。そしてこの本は自分の体に合うものを体に聴けという。押し付けがましくないのもいい
読了日:7月29日 著者:伊達伯欣
岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ感想
ようやく岡崎京子展の公式カタログでもあるこの本を読み終えた。どこかで読み終えてしまうのがもったいないと思いつつ、岡崎さんの作品の合間合間にインサートされる著名人の岡崎評が出てくる。加藤賢ソーさんが臆面もなく、当時の彼女への愛情を語ったかと思えば、オザケンがテイラースイフトとヘルタースケルターのりりこのように、自己を抑制して「みなさん」といわれるマーケティングのために装うことについて論じる。そして何よりも岡崎さんが当時の80年代論を語っていた文章とマンガが出ていて(展示でも見たけれど)何ともいえずぐっときた
読了日:7月29日 著者:岡崎京子
美味しい革命―アリス・ウォータースと〈シェ・パニース〉の人びと美味しい革命―アリス・ウォータースと〈シェ・パニース〉の人びと感想
アメリカにおけるスローフードや地産地消の先駆者であるアリスウォーターズの評伝。NHKの番組で見た時にそのカウンターカルチャーから出てきた人だと聴いていたので奔放な男性関係や料理人とのいざこざなどの人間関係の悲喜こもごもを読んでいて微笑ましくなってしまった。今となってはとても落ち着いた佇まいの人になっていたので人に歴史ありだなあと思ってしまう。でもどこかトラベラーで情熱的な女性だからこそこだわりの店を30年に渡って切り盛りしてきたのでありましょう。ある種のロックスピリッツすら感じるかっこいい女性の半生記だ
読了日:7月28日 著者:トーマスマクナミー
物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術感想
おおかた神話や物語についての研究はジョゼフキャンベルによる成果の応用が多い。そこからスターウォーズのルーカスなどの評価を機に、映画界では神話の理論を映画の脚本作りに応用していく流れができていった。その中でも標準的なテキストであるのが本書。極めて精緻に物語の分類をしつつそれぞれの映画でのストーリーテリングを見ながら参照してくスタイルはさながら映画の授業のよう。映画産業やドラマの隆盛は娯楽というよりも自分の人生という物語の中に未知なるものや自然といった物語を取り入れたい現れなのかな。個人的なテーマだけれど…
読了日:7月28日 著者:クリストファー・ボグラー,デイビッド・マッケナ
ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)感想
3という単位でカップル(そもそも2という意味だが)を定義し直すというのが、この本の趣旨だ。一瞬、スワッピングだとか不倫とかの言葉もよぎるがそれを踏まえてもっとオープンな関係性を模索している動きが、ポリアもリーだといえるだろう。この本では先進国であるアメリカの例を揚げながら日本での実情についても調査報告している点が非常に誠実といえる。でもオープンな関係は交渉の問題やオープンさゆえの不便さもあると思う。日本の社会のどこか淫靡な面におかしみをかんじる文化だとなかなか難しいのではないかと思ったりして…。貴重な報告
読了日:7月26日 著者:深海菊絵
森本美由紀: 魅惑のファッションイラストレーター (らんぷの本)森本美由紀: 魅惑のファッションイラストレーター (らんぷの本)感想
イラストレーターの森本さんといえば、一般的にはピチカートファイブのCDジャケットのイメージなのかもしれないけど、個人的には圧倒的にMAD PROFESSER周辺のUK LOVERSのコンピ盤のジャケットのイメージ。あの甘ったるい世界観を完全にイラスト化していてジャケットの中のライナーも森本さんのイラストでえらくスタイリッシュでかっこいいなと思ったこともあった。その後も渋谷系界隈だったり、MINEの表紙とかもしていて岡崎京子がバブルならそれ以降の渋谷系の時代の人だった。何もかもおしゃれでセツモード出身も納得
読了日:7月26日 著者:森本美由紀
スピリチュアルの冒険 (講談社現代新書)スピリチュアルの冒険 (講談社現代新書)感想
スピリチュアルというと、宗教の横にある棚のイメージだけど、その語源は何なのか。霊性と訳されるけど、アミニズム的な精霊と一神教の中ではぐくまれた聖霊の概念の違いなどを扱いつつ、心身一元論や二元論も論じていく。煎じ詰めていくとスピリチュアルというのは、自分の内面をのぞきながらその声のようなものを聴いて行動や思考に転化していくプロセスをさすものらしい。日本でも内村鑑三や鈴木大拙なんかも取り上げつつ、文学における題材としても取り上げる。個人的には北村透谷が恋愛体験をスピリチュアルとして取り上げていたのが興味深い
読了日:7月26日 著者:富岡幸一郎
中世における数のシンボリズム中世における数のシンボリズム感想
例えば、人間を表す数字を2だったり、神を3で表したりするのはなぜか。その起源をたどりつつ、数を象徴的にとらえたりする占星術、果ては世界そのものを数字でつかもうとするピタゴラス派まで数から人間が感じ取るイメージの変遷やその意味を過去の文献からひもといていくという意欲作。実は占いの類いもこうした古典や占いのイメージの集積から来ているもので、本当かウソかというよりも古代人から綿々と続くある種の数字から読み取れる意味を感じ取るのはなぜかというのもわかるのが面白い。数字のオカルト的な面を知るには最適なテキストかも
読了日:7月23日 著者:ヴィンセント・F・ホッパー
善と悪の経済学善と悪の経済学感想
チェコの経済学者が書いた労作。経済学以前にある物語や神話、哲学などから現在の経済に至る思考や理論的な背景がどのように描かれているのかというのを具体的な原典にあたりながら解読していく。さながら古典の授業の用でもあるが堅苦しくはない。労働は罪なのかは、ギルガメシュの叙事詩にはないが、旧約聖書にある安息日の視点から見たらどうか。アニマルスピリットはどこから来ているのかーーすべてに明確な答えがある訳でない。しかし成長や欲望というのは古くからの書物にある概念。それをブレイクスルーする思考が必要と説く。結局物語なのか
読了日:7月18日 著者:トーマス・セドラチェク
倭人への道: 人骨の謎を追って (歴史文化ライブラリー)倭人への道: 人骨の謎を追って (歴史文化ライブラリー)感想
倭人というのは、いわゆる中国の魏志倭人伝なんかにでてくる日本人の呼称。日本人が日本人として中国から認識されたことで日本は成立したというのは日本の空っぽなアイデンティティを考えるとわからなくもない。この本ではむしろ、考古学的に見た時に日本人のルーツを探る。日本人は渡来人による侵略において縄文の原日本人が「置換」られた説もあれば、混血が進んだ説もあれば、土着の人たちがそのまま農耕を始めた移行説まで。その学説の盛衰は科学の発展と無縁ではないようで著者の時折垣間見える困惑ぶりがこの学問の困難さを窺わせる。何とも…
読了日:7月17日 著者:中橋孝博
弥勒の来た道 (NHKブックス No.1229)弥勒の来た道 (NHKブックス No.1229)感想
弥勒というと広隆寺の弥勒菩薩半跏像とかを思い出したりするのだけれど、菩薩でありながら如来的な天上にもいるという摩訶不思議な弥勒の起源を尋ねる旅。その大きなきっかけを著者はミトラ教などの教えに救世主信仰にあるのではないかと考えているようだ。天上にありつつ衆生の信仰の対象にあるというのは、さらには阿弥陀に代表される浄土の信仰と相前後していてそのあたりとの様々な形での融合がはかられていたのではないかというのがとても腑に落ちる。アレキサンダー大王の東征だったりアーリア人の貿易によって文化が行き来した時代ならでは
読了日:7月17日 著者:立川武蔵
洋子さんの本棚洋子さんの本棚感想
小川洋子さんと平松洋子さんって同じ岡山生まれで世代も近いから読んできた物語も似ている。少女時代のアンネフランクとかツルゲーネフのはつ恋のむち打ちのシーン、さらには夜と霧のユダヤ人の虐殺、どこか平和教育と少女としての大人になる違和感の表明みたいなものが読書体験の原体験として綴られている。そして社会人を迎える頃にはそれぞれの何者でもない個性の発露として平松さんは旅だったり料理、小川さんは母となり家族とのことなんかもある。そして身近な母親や家族の存在なんかも率直語っていて語彙よりも生理的な感情の表現力がスゴいな
読了日:7月17日 著者:小川洋子,平松洋子
仮面は生きている仮面は生きている感想
庭園美術館で開催されていた「マスク展」は2回行ったほどインスパイアされた。日本においては能とかでぐらいしか関連がなさそうだったがこの仮面を死者や精霊ととらえる文化は世界中に分布するのではなくアフリカの赤道周辺やメラネシアにアジアでもインドやインドネシアなどのヒンドゥーの文化圏だったりその由来はやはり神話に彩られているし、文化の継承や秘密結社とも密接に関連していてそれぞれの文化を見ていくだけでも面白い。中でも吉田憲司さんのアフリカの秘密結社「ニャウ」の潜入記。3年かけて結社に入るエピソードはスリリングだ
読了日:7月15日 著者:
社長、そのデザインでは売れません!社長、そのデザインでは売れません!感想
デザインというのはいわゆる商品開発の部分から、企業のアイデンティティやブランディングにまで及ぶトップマネジメントの領域になりつつあるというのが著者の主張。それを具体的に体現しようとしている経営者とデザイナーがそれぞれ3人ずつ出てきて対談したのをまとめたのが本書だ。中でもCCCの増田社長とデザイナーの佐藤可士和さんがこの本のいわんとする部分を体現していて、デザインをプロに任せるがそのコンセプトを徹底的に説明する増田氏と企業の持つ悩みをデザインやCIに落とし込む可士和氏ということになるだろうか。あとは普通かな
読了日:7月15日 著者:川島蓉子
私はなぜイスラーム教徒になったのか私はなぜイスラーム教徒になったのか感想
イスラーム国の問題でクローズアップされた中田さんだが、この本はある種の信仰告白であり、カリフ制の復興を願う氏の主張があますことなく収められている。決して簡単な内容ではないが、イスラム教を以前よりは身近に感じられたのは確か。それに神秘主義やサラフィーなどの流れもかなりわかりやすく書いていて読むと目から鱗の部分が多かった。それにしてもかなりの変わった方みたいなのは間違いないみたいで、こうした人にはイスラムの世界とは寛大でかつ自由に目に映るというのは、実際に入信しないとわからないようだ。ユニークな視点でもある
読了日:7月14日 著者:中田考
レアリティーズレアリティーズ感想
岡崎京子ブームは個人的にまだ続いていて、この80年代の凝縮感は読んでいるときゅんとなる。バブルなのにバブルをハスに見ているようなプレ原宿の登場前夜な感じが好きだなあ。この作品集はちょっと単行本にはまとまらないような短編や連載をまとめたアウトテイク集みたいなもの。それだけにファンはたまらないだろうな。個人的には、事故の少し前に書いていたと思っていたベティペイジの冒険が掲載されていたのは懐かしかった。でもまだ91年だったのだなあとか、エッセイのタイトルが「虹の彼方に」ってもろ高野寛だったり80年代の記号が満載
読了日:7月12日 著者:岡崎京子
西原理恵子と枝元なほみのおかん飯西原理恵子と枝元なほみのおかん飯感想
ちょいポチャなマンガ家さんと料理研究家の組み合わせは圧倒的に信頼できる証のようなもの。そのレシピと昨今のヘルシーとはまるで無縁なカロリー度返し、お酒がススム君なレシピの数々に食欲をインスパイアされることカズ知れず。それでも意外と手間のかからない料理が多くてしかもあまり高い食材がない家庭料理が多いのがうれしいかも。ちょいちょい食べ盛りの息子さんのエピソードが出てくるが、家族の献立を意識したガッツリ系の一品はおいしそう。さっそくゆで卵のスパイス炒めを試してみることにする!
読了日:7月12日 著者:西原理恵子,枝元なほみ
あなたは、なぜ、つながれないのか: ラポールと身体知あなたは、なぜ、つながれないのか: ラポールと身体知感想
すごく地味な本ながら売れているのは装丁のイメージがよいのかな。元々対人コミュニケーションが苦手な学生がナンパやセミナーなどのあらゆる手段を講じて徐々に自分の外見や内面さらには話し方や仕草と言った身体動作にも及ぶ。結局は他者を鏡として自分の気づきとするカウンセリングやスワイショウという身体動作を通じて心身をリラックするする方法などで他者に対しての鎧を外していってよりコミュニケーションを円滑にしていくというのはさながら身体技法としての瞑想と近いかもしれない。他者の力か瞑想なのか手段は違うが目的は一緒のようだ
読了日:7月7日 著者:高石宏輔
のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのかのめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか感想
ドラマの「LOST」や「マッドメン」映画の「バットマン」の人気は本編のみにあらず。それぞれのコンテンツから派生したネット上のツイッターの書き込みだったりスピンオフ的な動画だったりすることでよりファンを醸成していったり数少ない時間の取り合いをしていくツールとしてのメディアミックスやITの活用などの組み合わせの事例を幅広く紹介しているのだがこれは正否ふくめてなかなか複雑でかなりの人員がいるのがわかる。これがスターウォーズのようにファンビジネスを取り込むような手法はわかりやすいが費用対効果はあるのか疑問でもある
読了日:7月7日 著者:フランク・ローズ
山川さん、黒斎さん、いまさらながらスピリチュアルって何ですか?山川さん、黒斎さん、いまさらながらスピリチュアルって何ですか?感想
これはなかなか面白かった。雲さんは有名なブロガーらしいが精神疾患から急に精霊の声が聞こえるようになったという典型的なシャーマンの経験をした人。山川夫妻というのは翻訳ではシャーリーマクレーンからの実績があるというから筋金入りだろう。この人たちのスピリチュアルの定義というのがどうなのだろうと思ったら「気づき」に着目していてアワークネスかと思いきや精霊が後半にでてきてさすがの世界に。心の声を内なる声に置き換えればいいのだけれどどうてしても超越的なものの存在にするのだと思いそれこそがスピリチュアルだと納得した次第
読了日:7月6日 著者:山川紘矢,山川亜希子,雲黒斎
おまけのいちにち(その連続)おまけのいちにち(その連続)感想
オーケンさんのエッセイの味わい深さは50を目前にして俄然、老いと要望の衰えについて、自虐的なエピソードの連続で、もはや自分をおじいちゃん扱いするあたりでもはや芸風としても完成の域にあるとしか思えないのであります。ロックフェスのエピソードから周りのミュージシャンも同じく年を重ねていく味わい深くもとほほな境地というのが切ない限り。しかもこのエッセイを持ってしばらく打ち止めだとか。あとがきでまたいつ書き出すかはわからないといっているからまた始めるでしょう。でもここ最近の旺盛な音楽活動を考えるとすごく納得かも
読了日:7月5日 著者:大槻ケンヂ
マインドフル・ワーク―「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変えるマインドフル・ワーク―「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える感想
話題の本。マインドフルネスについてはいわゆる瞑想の類い全般を刺しているらしい。それを宗教性を排除して、気づきのアウィークに繋がるというのが企業の中で行われていたり社会の中で取り入れられているレポートでもある。最後の部分では宗教性との軋轢や、懸念の部分も両論併記的に記載されていてバランスがいい。それでもこの著者は瞑想を実践していてそれが自分のバランスを保つという点で有効と考えているのもなるほどなあと思った次第。宗教やスピリチュアルのような決め付けや声高な部分が少ないのがこの本のいいところですね。
読了日:7月5日 著者:デイヴィッド・ゲレス
ジョーゼフ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である。―ジョーゼフ・キャンベル対話集ジョーゼフ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である。―ジョーゼフ・キャンベル対話集感想
ジョーゼフキャンベルといえば古今東西の神話の中からその共通性や人類に共通する基底概念を探した学者であるけどその彼がラジオ番組のトークをまとめたのがこの本だ。なので難しい話は出てこないがそのテーマ性は神話というのが人間が生きていく上でとてつもなく大事なエッセンスではないかと思わされる。人間の創造の産物が宗教になり生活規範にもつながる。社会の独自性と共通性を「神話」という言語で語るというのは何とも面白い。通過儀礼や英雄の成長譚というのもジョーイルーカスのスターゥオーズに用いたと思えばあの作品も現代の神話なのだ
読了日:7月5日 著者:ジョーゼフキャンベル
大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本)大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本)感想
東京都美術館でやっていた「大英博物館展」のパンフレット的な書籍。100のモノで人類の歴史と叡智を伝える意欲的な内容。やっぱり植民地での収奪をしていた国だからこそのコレクションの数々はその背景を考えると複雑ではあるが、その100のモノは審美眼にかなった逸品と言えるものが多い。中でもイフェの頭像といわれるナイジェリアの作品は14世紀に作られたとは思えない何ともいえない神々しさを漂わせていたりする。あと4千年も前のエジプトの化粧パレットのデザインが動物を模していて可愛らしいことこの上なし。そのセンスに驚くばかり
読了日:7月5日 著者:大英博物館

読書メーター
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2015年07月08日

2015年6月の読書

2015年6月の読書メーター
読んだ本の数:29冊
読んだページ数:6998ページ
ナイス数:243ナイス

いいデザイナーは、見ためのよさから考えない (星海社新書)いいデザイナーは、見ためのよさから考えない (星海社新書)感想
著者はデザイナーながら経営学部出身というだけあったノンデザイナーにはわかりやすい内容。でも中身的には佐藤可士和の本なんかと同様にもはやデザインの域を超えて商品開発やマーケティングまでも及んでいるというのは納得のいく話ですが目新しさはない。むしろ、デザイナーの専門教育を受けていない人がどういう感じで色彩やデザイン、さらにはコンセプト二至るまで身につけていったかというのが本人の体験を元に語っていてそれが面白かった。結局、ベースの部分はそこそこにOJTとセンスの問題に行き着くというのはビジネスの要諦かな
読了日:6月30日 著者:有馬トモユキ
ウェブニュース一億総バカ時代 (双葉新書)ウェブニュース一億総バカ時代 (双葉新書)感想
ウエブサイトに氾濫するニュース。でも元を正せば無料なのだがどのような仕組みでフリーになっているのだろうか。そんな背景をこの本は見事な手際で解説する。中でもバナー広告を誰もが嫌悪する時代においてはネイティブ広告というあたかも記事のような広告が幅を利かせる。そしてぺージビューを稼いで広告価値を高めようと言う仕組みまで披露する。結局それでもただで記事が読めればいいじゃないかというが読みたい記事を読みたい解釈で取材なしに提供するという金太郎あめのような記事がこんなにも出てきているというのはある種の不幸かもしれない
読了日:6月29日 著者:三田ゾーマ
身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編感想
生物的な「死」と社会的な死せる存在とを区別しているのは、以前からの養老先生の議論であるし、最終的に人間ほど怖いものはないという生物的なしでありながら、死というメメントモリな情報を発信する解剖室や墓に安堵を覚える感覚を中欧の旅を通じて再確認する思索の旅は何とも楽しい。いきなり、ハプスブルク家の心臓を取り出して廟の中に収めるというしきたりからユダヤにおける「死」と家族や民族の問題も見事な手さばきで西洋文明史における死のありように収束させていって考えさせられることばかり。日本の特異性もまた指摘にある通り気になる
読了日:6月29日 著者:養老孟司
縄文人に学ぶ (新潮新書)縄文人に学ぶ (新潮新書)感想
改めて読んでみると、建築家出身だけあって多分に推測的な記述が多いのが気になるが、日本の縄文的なものを火の進行だったり、アニミズムやそれ以前のマオイズムなんかも混同しているような部分があるが日本人論として読むと中々にわかりやすい。これに内田樹さんの日本辺境論なんかを重ね合わせると日本社会の特質はかなりの部分が、ある種の歴史がミルクレープのように堆積しているのではないかと思わざるを得ない
読了日:6月29日 著者:上田篤
シャーマニズム (「知の再発見」双書162)シャーマニズム (「知の再発見」双書162)感想
どうやらシャーマニズムというのは、ヒッピーやニューエイジなどの時に取り上げられた言説からかなり拡大解釈されているようだ。そうしたアメリカ流解釈のシャーマンとは一線画す存在として中央アジアからシベリアにかけて広く存在していた精霊の使いとしてのシャーマンの歴史とその民族による差異など解説している。そこには世界的にある精霊という存在をどう認識し共同体の繁栄のために儀式や病気の治療をしてきたかという部分が図版が多くわかりやすかった。いわゆるアフリカ的な薬物摂取としてのトランスに対して批判的なのも面白い
読了日:6月27日 著者:シャルル・ステパノフ,ティエリー・ザルコンヌ
やり残したことやり残したこと感想
渋谷陽一のインタビューでしゃべっているたけしはちょっとよそ行きだ。それは週刊ポストだったり東スポだったりするのと別の聞き方をするからなのか。いつも考えさせられる。でも悪くない。連載では「日本」というのが常にテーマの底流に流れていたりする。それが日本の映画の客であったりお笑いであったりするのがそうなんだけど個人的には着ぐるみを斬る意味みたいなものが面白かった。いわゆる照れ隠しであるしドーランを塗らないと舞台に立てないと言った師匠の深見千三郎師匠の言葉が象徴している。そしてあと映画何本作れるかこれも本音だな
読了日:6月27日 著者:北野武
オカザキ・ジャーナルオカザキ・ジャーナル感想
4月に「岡崎京子展」に行ったらその濃厚な80年代後半から90年代前半の空気感がそのまま残されていてものすごい不思議な感覚が残った。あの時代はナンだったんだろう。特にリバースエッジのあの虚無感と今の時代が地繋がりな感じがしてこのオカザキジャーナルも92年に連載していた朝日ジャーナルの終焉とともに連載も終了するんだけどバブルが一丁あがりになってモノからオカルトや悟り世代の原型のような消費行動が萌芽してきたりするようなことをさりげなく書いていてこの時代感覚に驚くばかり。岡崎京子の時代感覚の鋭敏さは今も心に残る
読了日:6月21日 著者:岡崎京子
あなたは半年前に食べたものでできている 実践編あなたは半年前に食べたものでできている 実践編感想
前に読んだ本も「自分の細胞は半年で入れ替わるからこそ食べ物も良質なものをとりましょう」というのは、実際はそうでないかもしれないけど身体感覚的には非常に腑に落ちる考え方かもしれない。そこから始まる20分以上の有酸素運動(特にランニング)に一日(連続した食事)の中で良質な食事を摂るということに特化しているのもハードルが低めなのがうれしい。でもこの本を試すと食事よりもむしろ運動した時のメンタル的な爽快感というものが得られるのがいいかもしれない。やっぱり食事の調節は効果覿面だがメンタルにはあまりプラスに働かないな
読了日:6月21日 著者:村山彩
ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか? (NHK出版新書 463)ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか? (NHK出版新書 463)感想
著者はIT産業の黎明期から事業に携わり続けているだけに、グーグルやフェイスブックにアップルといったプラットフォーム間の解説は中々見事。ただこの本の白眉はやっぱり著者も在籍していたリクルートのありようであったり、iモード、そして楽天などの日本型のプラットフォームへの言及だ。特にリクルートのありようというのは世界的に観てもかなりユニークだけど、バックヤードにある営業と言う部隊の存在であったり楽天にしてもここの店をサポートするスタッフやアマゾンよりも品揃えのいい生態系の進化のシナプスなんかもとてもユニークな視点
読了日:6月17日 著者:尾原和啓
ローリング・ストーンズを経営する: 貴族出身・“ロック最強の儲け屋”マネージャーによる40年史ローリング・ストーンズを経営する: 貴族出身・“ロック最強の儲け屋”マネージャーによる40年史感想
これはなかなかユニークな本だ。プリンスルパートという銀行家がストーンズとタッグを組み、経済的な危機はもとより不利な契約についても徐々に改善。税金逃れのために南フランスにエスケープするなんてプランを実行したりしようとするまさに、ストーンズの金銭面の表と裏を知り尽くした人物の回顧録だ。その戦いは当然アランクラインという悪名高きマネージャーとの戦いでもあるしデッカというレコード会社さらには高福祉社会のためにセレブリティから高税率を課していたイギリスと言う国家との戦いの歴史だ。ゴシップとは違うストーンズの裏面史だ
読了日:6月14日 著者:プリンス・ルパート・ローウェンスタイン
健康男 体にいいこと、全部試しました!健康男 体にいいこと、全部試しました!感想
訳者のあとがきによれば、著者はヒット作の「聖書男」にならって、世に氾濫する健康情報に忠実に生きたらどうなるだろうとこの本を構想したという。ダイエットするなら低糖質なのか、それとも菜食メインなのかから始まり、長時間のイスの生活はガンや心筋梗塞のリスクが高まると知れば、立ちながら原稿を執筆する。実際にグーグルでも行われているようなことをして行く。耳を保護するためにそして、ストレスにさらされないようにノイズ防止のヘッドホンも欠かせない。とかくストイックになりがちなテーマをユーモアを交えていてとても面白かったな
読了日:6月14日 著者:A.J.ジェイコブズ
今までにない職業をつくる今までにない職業をつくる感想
古武道家の甲野先生の最近の事情に触れた直言集。とりたてて以前の著作を読んでいると目新しさがある訳ではないんだけど、教育とか国家など大上段の話が珍しくて多かったので、ちょっと意外でした
読了日:6月13日 著者:甲野善紀
フリーランスのための一生仕事に困らない本フリーランスのための一生仕事に困らない本感想
ネット時代の自分のブランディングと仕事のとり方について、懇切丁寧に説明している。実際に成功した著者の体験談がほとんどなので、ブログを作ったりセミナーを開催したりとかはあまり汎用性はないと思うのだがどうだろう? ただそれにしても前半の仕事の受注ややりたい仕事とそうでない仕事など、自問自答してみる価値のあるトピックが多いのは良心的な内容と言えるかもしれない。特に、株式同様、ひとつのかごに卵を入れては行けないのはむべなるかな。収入源を複数確保しておけというのは昨今の時代背景を考えると参考になるのではないか
読了日:6月13日 著者:井ノ上陽一
中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない感想
もともとブロガーとして、中国の掲示板などを翻訳していた著者だが、持ち前のフィールドワーカーぶりがあるみたいで中国の各地を取材しながらその反日≠フ素顔を暴いていく。そこには大本営発表しか許さない中国の情報発信と、そこからはこぼれていく中国人の本音に迫って行く。その手法はそれこそネットで、オタクぶんかにハマる中国人の肉声もありつつその実態はステレオタイプな日本人感を持つのは読んでいると反日の日本人の中国や韓国に対する意識とあまり変わりない気がする。この著者のバランスのよさも東アジア情勢のレポートとしても貴重
読了日:6月13日 著者:安田峰俊
山口小夜子 未来を着る人山口小夜子 未来を着る人感想
子供心に和というものを感じさせるアイコンというのは、山口さんと坂東玉三郎だった。よくよく考えると明菜のデザイアとか完全に小夜子さんの焼き直しだし、東洋人のおかっぱに切れ長というイメージは完全に彼女そのものであった。何だか生活感のない人だったけどこの本の中に出てくる関係者の証言のその人となりはかなりチャレンジングな好奇心に満ちた人だというのがわかる。晩年の頃は、個人的にAKIと一緒にライブをやっていて気づいていたんだけど、突然の訃報には本当に驚かされた。彼女自身の表現は構成まで残るけどその言葉も知りたかった
読了日:6月13日 著者:
地平線の相談地平線の相談感想
つい細野さんの本ですから手に取ってしまったのだけれど大人計画にもいる星野源さんのちょっと老境が入った感じと細野さんの対談は何だかひなたぼっこしながら話している仙人の趣もあり読んでいてほっこりしたのも事実。星野さんは突然の病気になったりしたのも触れていてとても率直なボンクラぶりがどことなく大人計画な部分を感じたりします。この対談は07年から最近までのまとめたものだから構成者の川勝さんが亡くなったり星野さんの病気に震災もあった。なんと言う時代に生きているのだろう。そして素晴らしいのだろうという音楽と人間賛歌
読了日:6月13日 著者:細野晴臣,星野源
『遺言』 闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱『遺言』 闇社会の守護神と呼ばれた男、その懺悔と雪辱感想
遺言という本を出した直後に命を閉じたヤメ検の田中森一氏の著書。その内容はかなりの部分最初の著書「反転」と重なる部分が多い。バブル紳士との交遊や雅叙園事件など、盟友でもある許永中への思いを最後にページを終わるのは何とも読後感にもやもやが残る。バブル紳士のや玉口組のナンバー2だった宅見若頭にシンパシーを覚えるのは不遇をパワーに変えて圧倒的なバイタリティで世の中を渡って行くその気骨のようなものだったのだろう。それにしても反転を書いた頃の検察批判もさすがに晩年はがんの再発などもあり達観したところもあるのが悲しい
読了日:6月13日 著者:田中森一
骨が語る日本人の歴史 (ちくま新書)骨が語る日本人の歴史 (ちくま新書)感想
日本人論を読んでいると、立派な日本人だったり尊厳のある日本人のイメージがあるのだけれど骨考古学の視点から観るとむしろ日本人はどん詰まりの環境の中で、様々に流れ着いた人たちが小さな集落を持ち海や自然の幸を食事として栄養状態が良くない中で成立してきた等のがわかる。そこには、貧しいならではの死生観や生活の知恵が日本人の基層になっているのだなあと思うばかり。しかも縄文人がいて米作とともに弥生人が縄文の土着人を征服してという歴史観とはかなり違っていて小さな集落が、最終的に集権化して行くということなのかと思った次第
読了日:6月8日 著者:片山一道
からだに効く坐禅からだに効く坐禅感想
野口師の本を立て続けに読んでみたらこちらは随分と過去の本に比べてあっさりとした内容。座禅と断食の効用については、相変わらず甲田先生とかを引き合いに出しつつ知見を披露する。その身体技法の手順も随分と丁寧に説明しています。ただ、さらっと書いてあって驚いたのは、座禅と瞑想が別物であるという視点。無と空の境地に至るというのは机上の人間であるワタシにはなかなかわからないが貴重な視座だと思った次第。さすが実践家の著書なので背筋が伸びるという点では、自己啓発に近い読み方もできるかもしれない。自分を変えたい人向けかな
読了日:6月8日 著者:野口法蔵
なぜ日本人はご先祖様に祈るのか ドイツ人禅僧が見たフシギな死生観 (幻冬舎新書)なぜ日本人はご先祖様に祈るのか ドイツ人禅僧が見たフシギな死生観 (幻冬舎新書)感想
「神道は盛り上げる宗教」「仏教は安心感を与える宗教」というドイツ人禅僧の定義に我が意を得たりの気分でつい手にとった。そして祖先崇拝という日本の独自の感性をタイトルにしているのもユニークな点。輪廻と先祖がいるという矛盾を飲み込んでいる日本人の死生観についてこれほど的確に表している言葉はない。著者によればキリスト教のカトリックでもその矛盾を克服するために神学論争や三位一体という概念を生み出したように日本人の精神性は中国由来の思想を懐中のものにしたということだろう。外から観た日本の視点は日本人の好きなテーマだ
読了日:6月8日 著者:ネルケ無方
映画で読み解く現代アメリカ――オバマの時代映画で読み解く現代アメリカ――オバマの時代感想
こういう本ってコンスタントに出ていて読んでいて楽しいジャンル。おそらく最近の出版点数の増加は町山智浩さんの影響もあるのだろうか。それでもこの本に登場する作品の中にはノンフィクションや日本語化されていない作品もあるけど、どれもがアメリカ社会の現状を反映しているような作品の解説ばかりで興味深い。冒頭のオバマとリンカーンの話はもとより、ゼロダークサーティは海外ドラマのホームランドが好きだからぜひ観てみたい。ユダヤのアイデンティティに言及している作品もぜひ学んでみたい。よても映画意欲にかられる本。また寝れなくなる
読了日:6月7日 著者:
300人の達人研究からわかった 上達の原則300人の達人研究からわかった 上達の原則感想
この手の本は何冊か読んでいるんだけど、結局10年間1万時間の法則だったり、ルーティン化や成功体験の積み重ねなどのオーソドックスな手法が意外と成功するという話に落ち着くんだよね。でもこの本はその「なんとなく」の部分を成功者のインタビューから推測を立証して行く手法で、原則というものを明らかにします。別に近道も何もなくて好きこそモノの上手慣れに行き着くのはわかります。これがプロで食べて行くとかだと別だと思うんだけど成長心理学とかにも通じる話があってためにはなる。でもここでは特効薬がわかるわけではない
読了日:6月7日 著者:北村勝朗
東京美女散歩東京美女散歩感想
亡くなる直前まで隔月の散歩連載を続けていた水丸サン。ほのぼのとしたイラストの中に、ちょっとカップルにいちゃもんをつけるような吹き出しがあったりして面白い。折々に出てくる過去の美女とのエピソードってどこまで本当なのかウソなのかわからないんだけど、そのしっぽり感やどこか寂しい感じが読んでいるととても肚に落ちる感じがします。そしてお酒に、ランチはカレーも定番。なんだか、美女をつまみにマイペースなお散歩は楽しそう。ところどころに登場する村上春樹ファンの女どもへの冷たい心境の吐露は最高に面白いのだった。合掌
読了日:6月6日 著者:安西水丸
続ける技術、続けさせる技術 (ベスト新書)続ける技術、続けさせる技術 (ベスト新書)感想
サッカーの長友の体幹トレの指導者として有名になった著者が、そのコーチングを通しての経験をまとめた本。準備を初動と称しているけれど、スタートの時点でどこまで準備ができているか、それによって大きく差が出ることを表現している。ルーティンを飽きずにこなせばいい。モチベーションの波が下がっている時は、基礎トレのみなど、シンプルだけどいかに成功体験を積み上げ本人のコンディションを試合時にピークに持って行くかということに心を砕いているのがわかる
読了日:6月6日 著者:木場克己
神道――日本が誇る「仕組み」 (朝日新書)神道――日本が誇る「仕組み」 (朝日新書)感想
ちょうど縄文から弥生に為政者が誕生したことで、日本の神道が成立したのかと思ったらどうもそれは一つの神道の変遷の中のひとつの変化にすぎなかつたのかと思い至った。つまり、弥生に入り渡来人が農耕を持ち込んだことでそれが、人口動態の変化を及ぼしたのは間違いない。本書では、縄文の円の世界(中心に神の世界である広場があり、その周辺に人間の世界、さらに周辺に死者の世界である貝塚を擁する共同体のあり方)から、大きな集落へそこに、自然崇拝から祖霊信仰への変化を検証している。そこから首長霊信仰への変遷というのは面白い指摘だ
読了日:6月6日 著者:武光誠
解放老人 認知症の豊かな体験世界解放老人 認知症の豊かな体験世界感想
野村進さんというジャーナリストは日本でも数少ない真摯な人だと思う。山形県にある認知症専門病棟を超期間取材したこの本は認知症の実態を知る上で最高のテキストではないかと思う。認知症患者の問題行動の部分にどうしてもクローズアップされるんだけどそこから見えるのは日本の家族だったり仕事の断片的な記憶や関係性が垣間見える。ある種の退行現象みたいなものもみられたりするんだけどそれが死という恐怖を逃れるためのひとつの選択肢としての人類の知恵という考え方は希望とも思えるんだけどやっぱりそれはそれで大変な世界。でもこれが現実
読了日:6月6日 著者:野村進
日本の神々 (とんぼの本)日本の神々 (とんぼの本)感想
いきなり白洲正子さんの文章で富士山を観に行った視界全体に富士山が見える様に涙が流れる場面があるが、それこそ、日本の神というより神祇信仰からくる心象風景なのでありましょう。ただとんぼの本なので前半は垂迹化した神像、後半は日本の祭りや儀礼の中でも古くからの信仰を残す供物などが特徴的な祭りをビジュアルでとりあげる。いわば儀式化されながらも神祇的な要素を残した部分を紹介している。これだけでも3つの神道解釈があるわけで日本にとっていかに広汎な影響を与えていたのかがわかります。それゆえにつかみどころがないのもご愛嬌か
読了日:6月4日 著者:白洲正子,野本寛一,堀越光信,岡田荘司
商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる感想
コンテンツマーケティングと言っていますが要はIT技術を使った広報活動が巡り巡って売上に繋がりますよという展開を具体的な企業をあげたケーススタディを中心に紹介しています。このケーススタディが中々、滝にわたっていて、こんなことが!と驚くようなケースもおおい。特にNECのWISDOMとか正直読んでいる人がいるのかしらと思っていたらそれなりに会員がいて成功しているということらしい。この辺は企業側のアピールなので、リクルートのR25よろしくうまくいっていないのかもしれないがそれを割り引いても参考になる事例多い
読了日:6月1日 著者:宗像淳
直感力を養う坐禅断食直感力を養う坐禅断食感想
もう4年前に読んでいたのを忘れていた。そうしたら断食の甲田光雄先生のお弟子さんであった。身体技法として座禅の効用とさらに断食ということで、より瞑想に集中するという本書の論旨は、いかに脳や内蔵の動きを小さくして、ゾーンの状態に入るものを目指しているのだと思う。その思想の上に自然との調和や宗教を越えた身体技法や修養を極めた仙人のような修行者についても言及していて、もはや禅宗のお坊さんの域を超えていて、本当に面白く読める。この身体感覚から生じるスピリチュアルのありようというのはちょっと不可解で腑には落ちづらいが
読了日:6月1日 著者:野口法蔵

読書メーター
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2015年06月07日

2015年5月の読書

2015年5月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:5711ページ
ナイス数:209ナイス

神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)感想
この本の神道の解説は本当に色々なことに目を開かされる貴重な本だ。とかく、神道は明治以降は国家のアイデンティティとして、また日本人の心象風景としての神道もある。その一方で、そもそもは神道以前の神祇信仰の自然崇拝の側面もある。それをどうしても一緒くたに考えてしまいがちだが、神道は歴史的な段階でそれぞれ別のフェーズがあるのをこの本は示している。それは、もともと日本の共同体の持つ自然への恐れから、仏教との参照としての神道、そして儒教と結びついてのモラルの部分に、国家の国体としてなどを示す分類で目から鱗の連続でした
読了日:5月28日 著者:伊藤聡
努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本感想
なんで脳科学が「努力論」について書くのかと不思議に思ったのが、そもそも日本の社会に蔓延する「努力主義』といわれるものが、日本人が明治の文明開化の時代に、欧米化を進めた際の金科玉条になっていたことから問題提起が始まる。そこにあるのは、戦争に駆り出す、あるいは組織に忠誠を誓うと行った際に用いられる努力という言葉のある種の気味悪さだろう。それは著者も再三警告していて、AKBの発言からも努力の大切さを説くと、さんまがミスリードだとちゃかす場面を紹介しているが、この視点は市井の民衆には必要な視点だと思うのだ
読了日:5月28日 著者:中野信子
小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)感想
この本で改めて料理研究家等のはきわめて新しい職業でありつつ今や主婦の憧れではないかと思うほど家庭における料理のありようが変化したというのを実感させられる本。もともと戦後の中で主婦の位置づけというのは家事労働の担い手という部分から始まり核家族の誕生などその形態とともに、西洋料理の紹介や家庭料理の伝承そこから小林カツ代の時短レシピという時間に追われる主婦のための料理研究に至るプロセスを時代の寵児だった料理研究家の足跡とともに紹介する意欲作できわめて詳細な時代背景の中でいかに料理がエンタメ化しているのがわかった
読了日:5月27日 著者:阿古真理
古←→今(むかしといま) 比べてわかるニッポン美術入門古←→今(むかしといま) 比べてわかるニッポン美術入門感想
改めて日本の現代アートが過去の作品との関連性の中で生まれているというのが、見事に比較ということから見えてくる書籍。いわゆるモチーフだったり索引そのものだったり、見立てといわれる作品の背後にあるテーマ性からの借景だったりここまで分析した作品解説は編者の和田さんの手腕によるものが大きかったのだろう。時間軸を感じさせたり写実ではないデザイン感覚や、見えないものも描いてしまうその精神性や二次元的な世界観の構築は本当に唯一無二でそこから考えさせられるのはこの本で再三出てくるレヴィストロースの日本観に通じるものがある
読了日:5月24日 著者:和田京子
セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業感想
この本自体にはまとまった解答みたいなものはないんだけど、それぞれのエピソードから人間のセックスの衝動や相手の選択が非常に合理的かと思とそうでもない行動にでるという身もふたもない結論にいきつく。ただ最後にこの本で著者も触れていたが、人間の性衝動が実にマクロ経済に大きな影響を受けているという点だ。社会の貧困と出生率なんかもそのひとつだろうし、一夫一婦制の経済的な合理性や幸福感との相関関係や不倫もそうなのだろう。そう考えると人間の体の声だったり経済との連関だったり自己選択しているものの多くは環境の作用なのですね
読了日:5月24日 著者:マリナアドシェイド
人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた感想
これはまさに40代から50代の文科系男子が誰もが通った世代感ですね。みうらじゅんさんのいうサブカル世代そのものをプロレスとオカルトに置き換えた対談集。むしろ、プロレスは少なめで矢追純一やムーの世界を縦横無尽に語り尽くします。その後のザインやオウム真理教についても言及していて、ある種のオカルトが行き着いた感までしゃべっているのはなかなかないのではないかな。いわゆるオカルトはあくまで笑いの延長線上にあるという感覚はこの人たちならではで面白い。つまり、真に受けてしまっては身もふたもないというのがよくわかります
読了日:5月24日 著者:大槻ケンヂ,山口敏太郎
目でみる仏像目でみる仏像感想
仏像の種類を知りながら、その歴史的な変遷も学べるのが、この本のいいところ。最初に釈迦如来から始まり、浄土、そして密教へと連なる仏像の流れを概観しつつ、如来に、菩薩、八部衆とかその立ち位置なんかも抑えてくれるのが参考になるかな。よくよく考えると、仏教美術の本は入門書のような薄い本を読んでいたんだけど少し大変でも最初から体系だった本にせっせておくと後からものすごく、色々な気づきがあることがわかります。気づきというのは、こういう大著が手元にあるといいなあと思ったりもして本の感想とは違うけどある意味ものすごい良書
読了日:5月14日 著者:田中義恭,星山晋也
写真を仕事で使うための基本と実践手帖 〜仕事で写真に関わる多くの人へ。〜写真を仕事で使うための基本と実践手帖 〜仕事で写真に関わる多くの人へ。〜感想
なかなか人には聞けないレベルの超初心者向けの内容でどちらかというと、ウェブでのショップ展開とか考えている人向けなのかな。個人的には色調補正の簡単な部分を知りたかったのでこれでも十分にお役立ちしました。
読了日:5月14日 著者:WINDYCo.
大黒柱マザー大黒柱マザー感想
小島慶子というどちらかと言えば、地味なアナウンサーが脚光を浴びたのが、ラジオの帯番組。それから女子アナをやめて、ラジオも終了してとそのジェットコースターのような生き様はフリーランスならでは…と思っていたんだけど、ここからまさかの夫の失業宣言。そこからオーストラリアの移住というのは、逡巡しながらもその勇ましいまでの勢いというのが素晴らしい。要所要所に夫に対する不満の言葉が垣間見えるのだけれどそれがかなり激しいのでこの人はやっぱり怖いと思いつつ、その発端となったダンナの無邪気さと献身ぶりはやっぱりお似合いかも
読了日:5月14日 著者:小島慶子
密教アート入門 (ちくま新書)密教アート入門 (ちくま新書)感想
入門書かと思ったらかなりハードルの高い本でした。とはいえこの本でもせつめいにあるように「密教」というのは、だれにでもわかるものでなくその修行の中で、宇宙の原理である大日如来との一体化をめざすというもので、曼荼羅や仏像と言ったものもそのための装置のひとつであるという部分は、言われてみると確かにそうだ。その曼荼羅が持つ世界観は何の経典によるものなのかと言った教義的な部分も解説しつつ身体修養としての加持祈祷や仏像の役割、空海の空間や寺院配置なども曼荼羅の世界観の再現であると言った指摘もあり興味深い。難しいけど…
読了日:5月14日 著者:真鍋俊照
1964年のジャイアント馬場1964年のジャイアント馬場感想
著者の柳沢さんと言えば、猪木の評伝でも緻密な取材に定評があったんだけど、今回ばかりは資料の引用が多くてちょっと残念。馬場さん自体がお亡くなりになっていることもさることながら週刊誌の連載というスタイルと、なんとなく予算的な部分がネックになっている気がした。それでもやはり個別のエピソードの深堀りな取材は健在だしあっという間に読んだのだけれど…。アメリカでトップレスラーとしての馬場についてはもうちょい直接的なコメントやエピソードが欲しかった。そうしないとジャイアントなスケールはなかなか語り尽くせないのではないか
読了日:5月9日 著者:柳澤健
読書で賢く生きる。 (ベスト新書)読書で賢く生きる。 (ベスト新書)感想
歯に衣着せぬとはこのことと言えるほど、痛快な本であります。とにかくビジネス書のベストセラーも著書もメッタ切りしますが悪い気はしない。それはそれぞれの著者がきわめて優れた読書の達人ということがいえるからだろう。そのオチは「常識人たれ」という松下幸之助や7つの習慣の結論を読むにつれ、そうかと膝をうつ次第。そうなのだ、ビジネス書というのは不安の処方箋や気休めの役割があるのだなあと改めて思いました
読了日:5月8日 著者:中川淳一郎,漆原直行,山本一郎
芸能入門・考 -芸に生きる- (明石選書)芸能入門・考 -芸に生きる- (明石選書)感想
俳優の故小沢昭一さんが80年に出版した芸能に関する論説や講演をまとめたもの。小沢さんと言えば日本の放浪芸などの芸能の原点をたどる著書や記録物などのフィールドワーク的な功績も大きい。そうした中で知り得た被差別と芸能の重なり合う歴史をかなり突っ込んだ話をしている。その背景には日本が終戦を迎えこれまでの価値観が一変した事情も重ね合わせる。日本の戦後が唯一文化国家であった時代だとのべる小沢さんは権力に追従しながらと舌を出す芸能もの虚実ないまぜの生き方に自分の指針を定める。それがエロ事師としての真骨頂でもあったのだ
読了日:5月8日 著者:小沢昭一,土方鉄
“東洋の神秘"ザ・グレート・カブキ自伝 (G SPIRITS BOOK)“東洋の神秘"ザ・グレート・カブキ自伝 (G SPIRITS BOOK)感想
今年で引退する天龍がことあるごとにべた褒めしていたのがカブキこと高千穂明久のことだった。それは人間的にもプロレス的にもだ。そんなカブキの自伝というのは力道山死去後の波乱の日本プロレスに入門したことから苦難の連続だった。しかしアメリカに自分の新天地を求めトップレスラーとして日本に逆輸入されたあたりは痛快。当時のアメリカのリング界やジャイアント馬場との銭闘などもフリーの一匹狼としての自負が感じられる。個人的には企業秘密と書いてあった毒霧の秘密も知りたかったけどそれを差し引いても昭和のプロレスファンには懐かしい
読了日:5月8日 著者:ザ・グレート・カブキ
コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)感想
おそらく、映画論や美術論や意味論なんかの学問的なジャンルでは答えが出ているのかもしれない。人は何に感動して、どうやってコンテンツを選ぶのかということや、情報量とは何かということについても、ジブリの鈴木さんの丁稚奉公をしながら思索していた内容をつまびらかにする。この思索の遍歴がやっぱり映画監督やクリエイターのそれではなく、プロデューサーやITで言うプラットフォームの視点から考えをのべていく。でもやっぱりこの人の才人ぶりはいうまでもなくなかなかコンテンツを扱う人なら納得できる議論が多かったのが収穫でした。
読了日:5月4日 著者:川上量生
アートにとって価値とは何かアートにとって価値とは何か感想
これだけきっぱりとした現代アートと日本のおかれているポジションについてきっちり解説している本はないだろう。それはミヅマギャラリーという日本の現代アートギャラリーの御仁が書いた故の本だからだ。それだけに、ちょっとした自慢や耳が痛い日本人への皮肉めいたこともちょいちょいカアをのぞかせるが、身銭を切ってアートと向かい合ってきたその自負と身体言語にはヒレフするほかないだろう。多分、村上隆さんなんかとすごく共通する部分も多くて、直接的ではなさそうだが薫陶を受けているような気がします。日本にはアートよりガッツが必要
読了日:5月3日 著者:三潴末雄
ハリウッド白熱教室ハリウッド白熱教室感想
端的に言えば映画の要素である脚本や映像のライティング、音響や映像の編集などを因数分解してどのように展開していくと、映画として心理的にどう映るかという文脈を明らかにする本で、NHKの放送を知らずに読んだらあまりの面白さにうなってしまった〜。いわゆる映画評論ではなく、あくまでも映画の文脈や成り立ちみたいなもの、さらにはプロデューサーや監督の意図を知る上では最高のテキストではあるまいか。この本を読んでしまうと、ちょっとした映画の蘊蓄などが白々しくなってしまう。文脈をきちんとつかむというのは、何よりも大事だと実感
読了日:5月3日 著者:ドリュー・キャスパー,NHK「ハリウッド白熱教室」制作班
ラクガキノート術ラクガキノート術感想
ラクガキノートの効用というのは、一般的にプレゼンのために使うという意味が多い。特にサトウオオキさんとかそうだけど、こちらはどちらかというと、自分の中のアイデアの蓄積や思考のツールとしての使い方がメイン。でもやっぱりどうせならうまくかけた方がいいよね的なノウハウが満載で、こういう本を読むとつい真似してノートに賭けるのが楽しい。自分の中で、おえかきのちょっとしたリラックス効果は大きいと思うばかり。リラックスすればアイデアも浮かぶ。その点でもイラストは侮れないというのが結論でしょうか
読了日:5月3日 著者:
アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話感想
アートディレクターの森本千絵さんと言えば個人的には圧倒的にミスチルなんかのジャケットのイメージ。その世界観そのものや絵心は、やはり森本さんのオンリーワンの世界。自分で博報堂から独立してその仕事のノウハウやルーティンの持ち方など本当に参考になる。自分の内面を赤裸々に表現していてつくづくアーティスト気質の高い人なのだなと思う。しかも震災や結婚を通じてここ数年感のマインドの変化に突いても言及していてデザインが商業の部分からかなり離れているのが文章の端々から感じられて今後どのような形になっていくだろうか
読了日:5月2日 著者:森本千絵
アイデアが枯れない頭のつくり方アイデアが枯れない頭のつくり方感想
この人の発想法は、いわゆる「コンサル」なんかとかに近いのかな。思いつくまま、「A×B」をあげていくというスタンスで、Aを固定化してどんどん広げていく。そのBの思いつき方にもコツがあって連想法などを駆使していくという話で、書籍にはなっているけど、実際には10ページ程度の内容。しかも安直という意味ではなく、このメソッド自体がシンプルなのもいい。ある種のきちんとしたアイデアは1000に1個ぐらいという割り切り方が、このアイデアが枯れないの一番の要諦だと思います
読了日:5月2日 著者:高橋晋平
できる男は不倫するできる男は不倫する感想
雑誌のゲーテはあんまり好きではないのだけれど、この連載のマンガに出てくるハゲ係長の昔くさいバブル親父の成れの果てみたいな感じ(マンガではブチョーいう名称)がとてもおもしろい。ちょっとホイチョイになりきれない不倫のすすめのような本だけど、ブチョーの哀愁に救われている気がします。結構楽しい
読了日:5月2日 著者:松岡宏行,高橋潤
進みながら強くなる ――欲望道徳論 (集英社新書)進みながら強くなる ――欲望道徳論 (集英社新書)感想
19世紀のフランスの造詣が深い鹿島先生のある種の幸福論。仕事論では借金を返すために仕事を受けろといわれ、受けているとその内に消耗して行き詰まる。そこでアウトプットしながらインプットする必要があるといいつつ、ジャンルをずらす。同じ注文を少しアレンジすることで自分の盤石さを拡張していくという試みだと言う。その一方で、日本人論についてはエマニュエルトッドの家族論を展開する。日本は分類によれば直系家族という系譜で日本は海に囲まれた大家族であるというのが著者の日本人論である。しかし現代の日本は疑似直系核家族だと言う
読了日:5月2日 著者:鹿島茂

読書メーター
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2015年05月04日

2015年4月の読書

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:5376ページ
ナイス数:195ナイス

古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)感想
橋本治の文章には若干苦手意識があったんだけど、古典案内ということで読んでみたら、あのくどい感じがかえって親切な解説になっていて個人的には非常にさんこうになった。句点のなさから始まり、おとぎ話に古典の突破口として紹介したりと、、、なんと親切すぎるではないか。後半の徒然草と清少納言の面白さの違いに突いてもやっぱり圧倒的な考察とインテリジェンスで読み解いていて本当にこの本はすごいなあと驚かされるばかり。なんとなく、読後感が古典が読めるような錯覚になるのはご愛嬌か(笑)
読了日:4月26日 著者:橋本治
[新版]森の思想が人類を救う[新版]森の思想が人類を救う感想
森の思想というのは、南方熊楠だったり、本多静六にも通じるようなイメージだけど、縄文の時代にさかのぼり、そこに日本の原風景を見いだすというのは、先生の持論の真骨頂といえよう。ある種の日本文化論としては、一潮流と言えるもので、読んでいてなかなかもって楽しい。その検証の余地はあるのだろうけど、日本の思想には自然観とかな文字(このあたりは梅原先生の持論ではないが…)にその特徴みるというのは説得力があります
読了日:4月26日 著者:梅原猛
知的生活習慣 (ちくま新書)知的生活習慣 (ちくま新書)感想
よくよく考えたらこの本もライフネット生命の出口さんの本も久米書店のゲストに出ていたのが読むきっかけでした。その時に先生も「日記を書くのは忘れることができるから」と話していたのが印象的で手に取った次第。もちろん、いつもの散歩の効用などもありつつ、ルーティンを大事にされているのといつまでも好奇心を失わないのがいい。それよりもなによりも昨今の編集者が黒子に徹していないという点を嘆いているのはなんとも古いタイプの人間の愚痴に聞こえるかもしれないけれど、長年編集者をしてきた先達の言葉としてとても共感できるばかり
読了日:4月23日 著者:外山滋比古
本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)感想
ライフネット生命の出口さんの本の行間からいつも本が好きなんですというのがでていて、本好きはこの雰囲気だけでも十分楽しめる。いわゆる著者による代表的な古典案内の趣の本なんだけど、結局、人間が学ぶのは人からと本と旅だという持論に裏打ちされた読書論。最近の教養軽視の傾向を嘆きつつ、その効用を説いて説得力があるのも年輪を重ねた老境だからこそだろう。
読了日:4月23日 著者:出口治明
本なんて読まなくたっていいのだけれど、本なんて読まなくたっていいのだけれど、感想
主に書評とか、その執筆時の抱えているプロジェクトの話が中心。やっぱりこの人も本を読んでほしいという気持ちが真摯に出ていて、最近の西加奈子さんのインタビューにも似た本への愛情みたいなものを感じます。この本の言葉の中では、ただただ「本の読み重ね」という一言に尽きる。人生に四季があるように読む時期によってその意味合いは全然違って見えてくる。随分と多読な自分だけど、ちょっとそんなに本も読みきれない気分もあっただけに何だか心に残る一言でありました
読了日:4月23日 著者:幅允孝
映画系女子がゆく!映画系女子がゆく!感想
いわゆる映画ライターや評論家の男性は自虐的に自分のボンクラぶりや心情を映画と重ね合わせてみることが多いけど、このライターさんも自分の経験と映画のストーリーを結びつけて、女性のライフスタイルや生き方の逡巡や幸福のありようについて、論じていて表紙のイメージよりもかなり硬派に感じた。ここまで書くかという肚のくくり方も含め個人的には非常に共感できる著者さん。ゆえにこの本で取り上げられる作品も興味深いものが多い。なぜか、500日のサマーってなんでこんなに評価されているのかというのも含め、わかりやすいのも良い
読了日:4月21日 著者:真魚八重子
いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学感想
いつも時間がないし、お金もないし…なんて思い悩んでいる小生のような小市民にはドンピシャな内容。行動経済学の本は結構以前に読んだけど、実験の内容がユニークだし、トンネリング(欠乏を感じてそのことで頭がいっぱいになってしまうこと)のたとえも絶妙。緊急の事態を綱渡りでこなすジャグリングもそのネーミングそのままだ。その対処法として出てくるスラックというのも面白い。要はバツゲージの余白みたいなものなんだけど、この議論は以前に感銘した渋滞学の議論と重なるかもしれない。リマインダーの効用とか色々参考になるのではないか
読了日:4月21日 著者:センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール
ヨーガの思想 (講談社選書メチエ)ヨーガの思想 (講談社選書メチエ)感想
これは実に興味深い内容。どうしてもイメージとしてシヴァを最高神としてブラフマンとか、圧倒的にヨガはヒンドゥー教のイメージと繋がっていたんだけど、どうも違うらしいというのが浮き彫りになる。その身体技法としてのヨガは後に仏教やジャイナ教にもつながるのだけれど、それとは別にインドの土着的な文化として機能していたというのは目からウロコだ。というだけに、宗教性を帯びることもそうでないことも可能な訳でその極端な例がオウムとも言える。他にもビートルズがハマったマハリシとかOSHOなんかの現代的なグルの紹介もある
読了日:4月19日 著者:山下博司
長くなるのでまたにする。長くなるのでまたにする。感想
サブカルチャーの番組で久々に、宮沢さんのあの一人ごとというか、独り心地な感じのトークを満喫した矢先にこのような本が出たことにまずは感謝。あとがきにも書いているように堂々巡りのような文章に、一人突っ込みのスタイルは不変。何度も眠れなくて缶チューハイを下戸でも飲んでさあ大変という話は、もはや志ん生の域だわ。それにきたろうさんの物忘れの話とかのおかしみの話は日常譚の最たるもの。あと、内田百閧フ随筆の素晴らしさをかいていて、その中の百閧フ引用部分が本当に素晴らしい文章でちょっと色々感動が多い本でした
読了日:4月19日 著者:宮沢章夫
見仏記 (角川文庫)見仏記 (角川文庫)感想
多分、20代の頃に読んで以来だと思うんだけど当時より圧倒的に仏像やお寺の知識も身に付いているから面白さは倍増していた。中でも東北や九州など、仏像の本場(?)の京都奈良とは違う文脈の仏像さんの推理は泣かんかユニーク。仏像を墨で写して違う解釈のまま、地域信仰と習合していくとか、九州の宗像の神道とのかかわりの考察は結構あっているのではないかと思ってしまいました。本当今の橋本麻里さんなんかもこのスタイルからインスパイアされて国宝を論じているのではないかな。サブカル美術本の金字塔とも言える本だ。次も読まないと(笑)
読了日:4月19日 著者:いとうせいこう,みうらじゅん
問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術感想
佐藤オオキさんの本はつい読んでしまう。300もあるプロジェクトをこなしつつ、そのデザインのさりげない完成度の高さというのは、仕事は違えど、参考にしたいところ。そんな佐藤さんの進行中のプロジェクトをさらりと紹介しながらそのアイディア術や仕事法についても言及している。やっぱりアイディア出しのルーティン化とか学ぶべき点は多いな。芸術家ではなくて、デザイナーというのがみそでしょう
読了日:4月19日 著者:佐藤オオキ
仏教の身体感覚 (ちくま新書)仏教の身体感覚 (ちくま新書)感想
身体感覚というワードに惹かれて読んだもののその中心となるのは、仏教の発生とその歴史的な変遷にある。インドにおける大乗と上座仏教の大分裂などを経て、インドの密教化。中国での経典を元にした道教や儒教との相克、日本においての神道や民間信仰との習合もいわずもがな。そんな仏教の栄枯盛衰が輪廻や霊魂の容認などにもあったという変遷をたどる。となると、仏教はもともと瞑想などの身体技法も変化していく訳でそうした点を、浄土や華厳経などとの経典の成立と伝来などと比較対照しているのが面白かったりします
読了日:4月16日 著者:久保田展弘
暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学感想
う〜ん。ものすごくハマって久々にあっという間に読んでしまった本だった。暇の問題を定住革命からとらえていて、そこから労働やよかとの関係性なども論じつつ、結論として、動物になれという言葉にしびれた。その浪費や狩猟的な生活に喚起されるその日暮らしとは違う世界の見え方を結構丹念に検証していて、実はその部分に惹かれた。人間はルーティンによって、その効率をいかに高めるかに邁進した結果、暇と退屈を生んでしまった。その組み合わせはマトリクス的に考えることができるという視点から4つに分類したりして…もう一度じっくる読みたい
読了日:4月13日 著者:國分功一郎
フィメール・コンプレックス (彼女が音楽を選んだ理由)フィメール・コンプレックス (彼女が音楽を選んだ理由)感想
著者が出会ってきたインディペンデントなアーティストたちの足跡をたどった本。エヴリシングバットザガールのトレイシーソーンのエピソードにいきなりわしづかみにされたんだけど、セイントエティエンヌやベルゼバなんかも出てきて、ちょっと著者さんは世代が若いみたいだけど、音楽遍歴が似ているなあと思った次第。渋谷系とネオアコのニュアンスと自分らしい生き方のマッチングが絶妙で面白い感性の本
読了日:4月5日 著者:多屋澄礼
ヨーガ入門―自分と世界を変える方法 (平凡社新書)ヨーガ入門―自分と世界を変える方法 (平凡社新書)感想
インド発の身体技法としてのヨーガについて、対論形式にしているが、内容はかなり本格的。個人的には、その要素を呼吸と瞑想、そしていわゆるヨーガとしての心身合一にあると思っている。ちょっとオカルト的な要素がついひくのだが、この本もちょいちょい出てくるのが残念。しかし、ヨーガを仏教や、気功、太極拳などの身体技法と結びつけて説明していて東洋的な手法のルーツとしての概観本としては有意義だと思うばかり
読了日:4月5日 著者:北沢方邦
ろごたいぷっ!  マンガ・アニメ・ラノベのロゴを徹底研究する本ろごたいぷっ! マンガ・アニメ・ラノベのロゴを徹底研究する本感想
最近のライトノベルや同人誌のマンガなどの書体を詳説していて実はすごく役に立つ本。良書
読了日:4月5日 著者:山王丸榊
哲学の自然 (atプラス叢書03)哲学の自然 (atプラス叢書03)感想
自然というのは、概念哲学以前の「自然派」と呼ばれる哲学に戻れというものだ。その両者にあるのは、原発というものが一つの概念哲学の帰結として原発の平和利用ができたということ。だが、日本ではなくなったとしても中国や世界ではますます増えるだろうという認識だ。その解決策として議論の中心となるのはハイデカー。いわゆる百姓の息子として育った自然派の哲学、再構築を目指して縦横無尽に語りかける。哲学のロジックの難しさを対談で平易にして、面白い議論。哲学だが感覚的。そこもいい
読了日:4月5日 著者:中沢新一,國分功一郎
運動指導者が教える 食事10割でヤセる技術 (美人開花シリーズ)運動指導者が教える 食事10割でヤセる技術 (美人開花シリーズ)感想
前作の「運動1割:食事9割」も良著だったけど、今度は食事10割とまで断言する潔さもグッド。いわゆるはやりもののアサイーなんかよりも日々の食事の素材を厳選にした暮らしというのはやっぱりきちんとしたいものだと思う。つい運動とかランニングを3日坊主にしがちな自分のようなタイプは食事のちょっとした習慣の変化の方が十分に効果が出るような気がします
読了日:4月5日 著者:森拓郎
カラダの声をきく健康学カラダの声をきく健康学感想
表紙にあるようにあくびって、体がリラックスしたいというシグナルだったりする。それがかつての人間は常に聞こえていたようだが、忙しい現代人はシグナルをスルーするようになっているらしい。この指摘は過去に養老先生や三木成夫先生の説を著者がより最近の医療情報を元に検証しているような内容で、かなり興味深い。脳と腸、この組織が生命として様々なシグナルを発している。それが社会に必ずしも適合しない場合もあるが健やかに生きていくという点においては、瞑想やコンディションの点々観測などからできることは多い。実に今の社会は体に悪い
読了日:4月2日 著者:北村昌陽
学校で教えてくれない音楽 (岩波新書)学校で教えてくれない音楽 (岩波新書)感想
子供相手に大友さんがワークシップをしているのを再現している内容。それにしても大友さんの緊張感のああるノイズの世界とは全然ちがうほっこりした性格は、あのあまちゃんのブレイクで見せた時のような音楽家のそれのままだった。きっと今の状況を楽しみつつ、まさに「音楽」しているのを感じさせてくれる。ちょっとにんまりしてよんでしまった
読了日:4月2日 著者:大友良英
BODY RESET 身体の再起動 身体を鍛えて、魂のノイズを取り除く方法BODY RESET 身体の再起動 身体を鍛えて、魂のノイズを取り除く方法感想
高城剛さんがモノを持つ生活を捨てて、いわゆる「スキニービッチダイエット」という本に出ていたデトックス的な生活をあげているというのがおもしろい。ただ、ちょっとスピリチュアルはいっている感じの触れ幅は大丈夫頭と思う人もいるのが、それはそうだと思う次第。ただ彼の仕事のスタイルが、フリーランスでガジェットのトレンドを追いかけるスタイルは収入が多くないとできないのも事実で、彼の仕事の需要が減ってきた際に、自己防衛の生活を見いだして選んでいるように見えるのは勘ぐりすぎかな。でも中間層の貧困化を考えれば参考になう本
読了日:4月2日 著者:高城剛

読書メーター
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2015年04月05日

2015年3月の読書

2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:6775ページ
ナイス数:197ナイス

マンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホマンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホ感想
版元の倒産もあったりしてこのシリーズも終わりなのかな。市民社会というのは、貴族が絵画の発注先だった時代から下った時代だけに、その中心はオランダのフリューゲル一族に、フェルメール。イギリスの物語絵画の元祖、ホガースにフランスはミレーにゴッホと何とも親しみやすい名前が並ぶ。それにしても個人的にはブリューゲル一族を陰で支えてきた大ブリューゲルの母方の祖母の教育で、それぞれの画家が出てきたというのは面白かったかも。ミレーのストーリーも以前に読んでいたが、マンガだとまた一段と人間関係がかいま見ててスイスイ読めた
読了日:3月31日 著者:
老耄と哲学 思うままに老耄と哲学 思うままに感想
新聞連載のエッセイをまとめたものだけれど、その内容は多岐にわたる。哲学では天台宗の教えから「草木にも仏性が宿っている」と説いたかと思えば、突然、水木しげるとの対話で戦争時代を思い、折々似なくなった人への随想、自身が手がけた「ヤマトタケル」のエピソードから歌舞伎へのあれこれにまで、まさに思索の連続。半沢直樹の感想すら出てくるのは、とても80歳を過ぎたとは思えないバイタリティ。白眉は、その健康の秘訣で、食事を楽しみ、性欲の衰えを嘆くことなく、人付き合いを減らしていき、気ままに生きるという。何だか味わい深い
読了日:3月28日 著者:梅原猛
ナタリーってこうなってたのか (YOUR BOOKS 02)ナタリーってこうなってたのか (YOUR BOOKS 02)感想
ナタリーの差し障りのない記事の書き方というのはある種のポリシーの元に行われていて、それが物足りなかったりするんだけど、創業者の著者にとってみては「それって20世紀的だよ」ということらしい(笑)。確かにロッキンオンに代表されるバーター記事と広告のセットやサブカルにありがちな上から目線の記事の氾濫というのは、ゆるやかにサブカルやポップカルチャーの衰退に繋がっているというのは、自分も好きなジャンルだけによくわかったりする。その問題点をするりと自己主張せずに体現している部分はかっこいい。無色透明いいな。
読了日:3月28日 著者:大山卓也
元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略 (oneテーマ21)元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略 (oneテーマ21)感想
これは内部の人でないとかけない本だと思う。どのようにタカラヅカをマネタイズするかというのを一年間の公演スケジュールを通して、劇場での本公演、それにくわえて地方公演や売り興行などなかなか旧来型のビジネスのように見せつつもしたたかさな計算もあったりするし、スターシステムをたくみに組み込んでいるあたりは、AKBなんかとも比較しているけれども一過性で終わらせない強みがあると思う。その仕組みとしての強さが、それぞれの組の男役と女役のトップの個性の背後にあるというのは実に面白いとうならされました
読了日:3月28日 著者:森下信雄
すべてのドアは、入り口である。現代アートに親しむための6つのアクセスすべてのドアは、入り口である。現代アートに親しむための6つのアクセス感想
作家の原田マハさんは元々フリーでキュレーターをしていただけ合って美術の知識は半端ではない。そんな彼女が友人のキュレーターとの対談で、現代美術の道案内をするという趣旨。この本で最初の方で紹介される数々の索引を概観するだけでも今のアートが持つ社会の告発であり、批評眼の深さに驚かされる。単純に見ている中からほの見えてくる現代社会というものの写像みたいなことを感じられるような気がするのでした。おもろ
読了日:3月28日 著者:原田マハ,高橋瑞木
ズームイン、服! (POPEYE Books)ズームイン、服! (POPEYE Books)感想
坂口さんが服をキーワードに市井で生活している人たちをインタビューとイラストで表現している。そのチョイスのセンスがまた絶妙で、こんな人がよく生活できるなあというような人が次々登場していて、服の話をするかと思いきや、その外面をはがしていって内面にギュンと迫っていく。途中、著者の鬱病もあると、その中身は服そのものよりも他者ではなく、自己省察にむかっていくような感覚もありかなりしんどそうながらも、作家の作品としてみるとかなりユニークな作品になったかもしれない。しかし、それにしても自己の内面の赤裸々さはさすが作家だ
読了日:3月28日 著者:坂口恭平
インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけインターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ感想
この手の話をどこかで読んでいたなあと思ったら田端信太郎さんもネット社会により、人のコミュニケーションのありようが変化するというようなことを提示していた気がします。結局、このあたりの話ってある程度はアメリカのネットの専門家が書いた本の受け売りの部分が多くて、レファレンスを見ながら彼らの手の内がわかるというのが面白い気がします。ただ、あくまで大きな潮流に着いて見ているというのは一貫していて、その先にあるローカライズやパーソナイズの部分はあまり触れていないのでもうちょい読みたい気がしました
読了日:3月28日 著者:小林弘人,柳瀬博一
文字のデザイン・書体のフシギ (神戸芸術工科大学レクチャーブックス…2)文字のデザイン・書体のフシギ (神戸芸術工科大学レクチャーブックス…2)感想
同じく大学でのレクチャー本。この本では加島卓氏の「デザインを評論することは可能なのか」という論考が面白かった。それは音楽と同じく不可能ではあるが、では実践としてのデータベースでいいのかという疑問もここで提示する。そこにはカルチュラルスタディ的や技術論とは違う歴史の視点を導入して言葉の歴史を語るという指摘が面白かった。そうなのだ。どうデザインが言語化されてきたのかという変遷から、デザインの本質に寄り添う。これはあらゆる評論に突いてもいえそうな気がします
読了日:3月26日 著者:祖父江慎,藤田重信,加島卓,鈴木広光
デザインを構想する (神戸芸術工科大学レクチャーブックス 3)デザインを構想する (神戸芸術工科大学レクチャーブックス 3)感想
大学でのレクチャーをまとめていますが、これが様々な人が登場してなかなかの傑作だったりします。中でも冒頭に登場するデザイナーの山口信博さんの折る造形についての話がとても面白い。もともと水引やぽち袋なんてモノも折ることからスタートしている訳で、結びの説明も歴史的な変遷にも迫っていて目からウロコのエピソードが満載です
読了日:3月26日 著者:山口信博,木村タカヒロ,祖父江慎,小野明
食堂業の店長塾: 強い店長が、外食の現場を強くする食堂業の店長塾: 強い店長が、外食の現場を強くする感想
たまたま書店の平積みで見た本ですが、いわゆるファミリーレストランの現場のオペレーションや店長の具体的なリーダー論。さらには教育社として存在するトレーナーの育成にコスト管理など、これでもかと大手ファミリーレストランチェーンで培ったノウハウがてんこもりに記述されていて圧倒されること必至。この本はいわゆる現場の最前線の声であり、その背後には標準というトヨタやテーラーなんかの原価管理の思想も具現化されていておおっと思いました。たった千数百円でこんな本書いていいのかと目からウロコの連続でした
読了日:3月22日 著者:井上恵次
「続ける」技術「続ける」技術感想
行動科学の入門書で、ものすごくシンプルに本質を書いている。168ペーゾだけど、大事なことは数ページで読めてしまう。なので、スカスカな印象があるが、行動修整の要諦がわかるだけに、ものすごくためになる本だ。大分、これで色々なことが整理できる人多いのではないか
読了日:3月22日 著者:石田淳
世界一やせる走り方世界一やせる走り方感想
ちょっと大げさだけど、1キロで何カロリー消費する。そしてやせるには1キロ7200キロカロリーの消費が必要で…なんてところを懇切丁寧に説明していて説得力がある。しかし、「GO WILD」を読むとランニングのメリットはもっと脳のトレーニングにも繋がるものであり、そうなれば、脳自体がダイエット志向になればいいと考えるに至りカロリー的に考えるのは、負担になるのでそろそろいいのではないかと思う。しかし、この本の魅力は非常に合理的なこと。やせるという合理性に人間があわせることができるかどうかということを教えてくれる
読了日:3月22日 著者:中野ジェームズ修一
メモリースティック  ポップカルチャーと社会をつなぐやり方メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方感想
ちょいちょい「KAMINOGE」の原稿などで見ていて、マッスル坂井なんかの世界観は至ってわかりやすいのだけれどどうしても松江哲明あたりの記述についてはあまり予備知識がないものだからなかなか記憶に残らない。その冷静な筆致にぎゅっと詰まった情報量に批評も今のポップカルチャーの文脈では、非常に注目されているのがわかったんだけど、00年代におけるポップカルチャーがオープンであるというイメージはわかずむしろ隘路に入っているような錯覚に陥った。それだと広がりがないな。ちょっとその部分を期待していたので肩すかし感があり
読了日:3月22日 著者:九龍ジョー
GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネスGO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス感想
ぐるぐると自分の頭の中に渦巻いていた身体感覚やダイエットなどの問題。さらには、メンタルタフネスといった問題をすべて網羅した最新の心身の健康についての考察した本。以前に「脳を鍛えるには運動しかない」という本を書いているだけあり、自然を見ながらのトレイルマラソンもさることながらソローの森の生活だったり、低炭水化物も実践して、ダイエット。さらには、瞑想にマインドフルネスの話もある。すごく網羅的で実践的でもあり、この種の本はもはやこれを読めば後はぐ田的なメソッドだけ必要というレベルの著作だ。うさん臭くないのもいい
読了日:3月22日 著者:ジョンJ.レイティ,リチャード・マニング
名画は語る名画は語る感想
画家の千住さんが見た名作の感想文といえば、それまでなんだけど、そのルネッサンス前後の作品の思い入れがスゴいようで、よんでいてもその世界観にぐいぐい引き込まれます。思えば、千住さんの作品は強烈に日本を感じさせるんだけど、氏の解説にもあったようにその裏には、圧倒的な西洋絵画と対峙してきた時間というのがあるのですね。むしろ印象派とかには、あくまで解説に徹している部分があってそれはそれでもやはり画家の見た絵の世界は我々とは違う色の世界をまざまざと文章で教えてくれます。痛快な一冊
読了日:3月15日 著者:千住博
アウトサイダーの幸福論 (集英社新書)アウトサイダーの幸福論 (集英社新書)感想
ハリスさんが随分丸くなったなあというのが読後感。相変わらずだなあというか己の美学を貫き通すところもやっぱり好きだわ。結局、アウトサイダーというのは社会の規範に染まらないこと。その背景にはやせ我慢の美学があるというのを教えてくれる。それはアーティストシップと一緒かもしれない。オーストラリアで16年居着き世界を放浪。三度の結婚に本屋を開いたりパーソナリティとしても活躍。この人が以前に提唱していた100のリストも真似したことがある。死ぬまでにやりたい100のことの最初に叶えたのがモデルとつきあうというのもグッド
読了日:3月15日 著者:ロバート・ハリス
レイアウトの基本ルール 作例で学ぶ実践テクニックレイアウトの基本ルール 作例で学ぶ実践テクニック感想
この手の本はたくさんあるけど、名刺の具体的な作成例の細かさはなかなか他の類書の追随を許さないボリューム&親切さ。これだけでもレイアウトのかなりのベースの部分は学べるのではないかしら
読了日:3月14日 著者:大崎善冶
起業のファイナンス 増補改訂版 ベンチャーにとって一番大切なこと起業のファイナンス 増補改訂版 ベンチャーにとって一番大切なこと感想
第1版も読んだんだけど、タイミングもあってか今の方が圧倒的に読みやすいのでした。内容についての変化はそれほどなくて、むしろベンチャーの環境の変化なんかのほうが記述が変わったようだ。実際、ファイナンスというのは資金調達とエンジェルなどの投資家の「EXIT」戦略や思考法がどのようなものであるかというのが綴られていて、とかく視野が狭くなりがちな起業家や予備軍には最高の本ではないか。そう思わされる本
読了日:3月14日 著者:磯崎哲也
ハーブの歴史 (「食」の図書館)ハーブの歴史 (「食」の図書館)感想
ハーブとスパイスの違いって何だろうという問題意識からスタートしてローマ時代の博物誌からの言及に始まり、中世では占星術師がハーブの研究をしていたり民間療法とか錬金術とかとも並ぶ称されるような部分が、今のハーブにもある種のスピリチュアル的な怪しい効能みたいなものがあるのも納得かと思われる。それはさておきにしても、料理のおいしさを引き出すスパイスやハーブの歴史的な変遷とか図版も豊富で見ていて本当におもしろい。あんまり堅苦しく読まずにさらりと読み飛ばすだけでもハーブの世界の怪しさも含めて満喫できるはず
読了日:3月14日 著者:ゲイリーアレン
Design Rule Index[第2版]― デザイン、新・25+100の法則Design Rule Index[第2版]― デザイン、新・25+100の法則感想
デザインにおける学術的な発見や規則性、人間の視覚認識の癖みたいなものに焦点を置いた本で、まさに黄金分割に代表されるような原則から、レイアウと上の3分割のグリッドシステムの法則まで網羅していて、なかなか骨太の本であります。これを実践で直感的に使えるかどうかというと?なのだけれど、それでも人間の知見を総動員してデザインせねばとつい力んでしまいますね。こういう本は。自分をインスパイアする意味でもリファレンス的に手元に置いておきたい本でした
読了日:3月12日 著者:WilliamLidwell,KritinaHolden,JillButler
ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)感想
アメリカで起きているオーガニックの隆盛が、ヒップという文脈で紹介されているのはどういうことかと驚いて手に取る。クールではなくヒップの意味は、「ヒップ」というアメリカの文化の底流にある潮流を解説する本もあるほど難しいんだけれど、そのきっかけは黒人スターの規格外の振る舞いや言動にかっこよさを見いだす感じあらスタートしている。翻って現在は、ポートランドやブルックリンのDIYのシーンやサードウェーブと言われるコーヒーショップのあり方、アリスウォーターズのシェパニーズなどある。そんな現在進行形のアメリカを概観する
読了日:3月12日 著者:佐久間裕美子
Design Basic Book[第2版] -はじめて学ぶ、デザインの法則-Design Basic Book[第2版] -はじめて学ぶ、デザインの法則-感想
主にエディトリアルの世界を紹介していて色々参考になりました。実は、内容もさておき、ところどころで出てくる資料の本がなかなか充実のラインアップでつい読みたい本が次々出てきてうれしい誤算でした
読了日:3月11日 著者:生田信一,大森裕二,亀尾敦
真贋のカチマケ ~鑑定士の仕事~真贋のカチマケ ~鑑定士の仕事~感想
「なんでも鑑定団」にでている中島さんというと「いい仕事してますね」という何だかとても紳士なおじいちゃんのイメージだったのがこの本を読んで一転しました。骨董商の世界というのは、だましだまされという斬ったはったの世界でいきなり衝撃。そうした中で、だまされたエピソードやだまそうとした同業者を一刀両断にするのが面白い。まさに仁義なき骨董や古美術の世界を様々なエピソードを駆使して開陳しているのだ。いやはや骨董の闇の世界を覗けるような本で装丁の上品さとは裏腹の本音と建前に驚きの連続でした
読了日:3月11日 著者:中島誠之助
神社ってどんなところ? (ちくまプリマー新書)神社ってどんなところ? (ちくまプリマー新書)感想
この本は神社の成り立ちとか様々な建築や狛犬の意味。さらには神話の世界観も紹介している。初心者向けで大変親切な本で、正直、サライとかの神社の特集の方が難しく書いてあるかもしれない。それほど充実の内容ですが結構つっこんだ部分もあったり何度も繰り返し反復しながら読んでしまいました。良書
読了日:3月5日 著者:平藤喜久子
時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?感想
時間資本主義というのは、時間価値という概念からお金という資本主義から時間をいかに効率的にするかあるいは快適に過ごせるのかということに消費のパラダイムがシフトするというのがこの本の趣旨。それにターゲットをあわせたビジネスのありようみたいなものが、つまびらかになって本当にためになることばかり。何だか時間の希少性が高まる中、実はお金の存在感も高まっているのは日本だからか
読了日:3月5日 著者:松岡真宏
荒木経惟の写真術 (フォト・リーヴル (05))荒木経惟の写真術 (フォト・リーヴル (05))感想
荒木さんの写真には私小説を感じると思う人は多いのではないか。公私混同でありストーリーを感じ察せる作品の数々。その背景には写真の技術はもちろん、インスピレーションの源泉もある。そんなことを若手(といっても今では大御所も多いけど)対話の中でその秘密をあっさりと公開する。このオープンマインドな姿勢にほとんどの対談相手は圧倒され嘆息する。これがアラーキー節だ。どこか人を化かすようなところもあるけど、その端端に感じるのは、カメラマンとしてのプライドであり、世界観を持ったアーティストのスタンス。やっぱりマイアイドルだ
読了日:3月2日 著者:荒木経惟
「健康第一」は間違っている (筑摩選書)「健康第一」は間違っている (筑摩選書)感想
この本の評価ってとても難しい。論としての整合性はすごく真っ当で納得できるんだけど、過剰な健康主義がもたらす幸福観の欠如の問題や財政などにもメスを入れていて興味深い。いわゆる健康寿命と本当の寿命の乖離なんかの議論は数字を元に構成されていて実に興味深かったです。それにしても健康信仰というのは、経済至上主義の次にくるパラダイムだと思うんだけど、ここまでイサギのいい本があるのは問題提起としてはアリだと思う
読了日:3月1日 著者:名郷直樹

読書メーター
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2015年03月06日

2015年2月の読書

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:4823ページ
ナイス数:176ナイス

日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)感想
国学院の先生がフィールドワークで足を運んだ聖地を古神道と日本人の精神性に求めていった内容。その中心となるのは古事記や日本書紀の記述との対照だ。その点で非常にオーソドックスだけど、古代人の心のありようとかモノの見え方そのものがかなり違うなあというのが読後感。でもその八百万神といわれる森羅万象に神が宿るという概念は、なぜか日本人だからか、不思議と疑問を持たずに肚に入る感覚というのがあって、今回も本を読みながらやけにするすると読めてしまう感覚がどこか不思議な感慨がありました
読了日:2月22日 著者:上野誠
Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方感想
このブランドストーリーというのは、楠木健さんの紹介で随分と一般化したイメージがあって、その実践家としてナガオカケンメイさんのところから独立して注目されているのが著者ということらしい。この本では様々なブランドのリニューアルのケーススタディを取り扱っていて納得できる話が多数でした
読了日:2月22日 著者:細谷正人
ヌードと愛国 (講談社現代新書)ヌードと愛国 (講談社現代新書)感想
日本におけるヌードに表現を西洋絵画や文化との対比、時代との相克ととらえて論じていますが決して難しくない。トピックは智恵子抄の高村光太郎夫人が書いた全裸のデッサンに始まり、パルコなどを手がけた石岡瑛子のポスターなど様々だが、個人的に興味は圧倒的に竹久夢二。あの夢二絵の夢路がヌードを描いた背景などを追っていて、どうしても彼の奔放な女性関係などと重ねて読んでしまうがそれも間違いではないらしい。アメリカへの遊学に、浪費癖、山岳画家として評価されないジレンマなど、社会学的な部分とは違うテーマに心奪われた
読了日:2月22日 著者:池川玲子
世界のトップエリートが絶対に妥協しない 小さな習慣世界のトップエリートが絶対に妥協しない 小さな習慣感想
多分、行動修正療法の中でもマイクロ目標を掲げたこの本は、GTD(Get Things Done)と同じぐらい効果ありそうな本。後半はマイクロ目標をダイエットや運動、時間管理や睡眠時間などに置き換えたケーススタディがメインだけど、前半を読めばそのエッセンスは十分理解できると思う。おそらく、時間管理や行動修正では、これとチェックシートがあればかなりの部分変化を促すことができると思うばかり。良書です
読了日:2月19日 著者:キャロライン・L・アーノルド
生きるための料理生きるための料理感想
とてもシンプルな装丁にタイトルは強烈。体は口に入れたものでできているわけで、すごくぐさっと刺さる言葉の数々は印象が強い。紹介されるレシピも素材の持ち味をくずさないようなものばかりで特に葛で素材を凝縮するような調理の仕方はちょっと面倒だけど、食べ物をありがたくいただけるような気がします
読了日:2月18日 著者:たなかれいこ
Jさん&豪さんの世相を斬る! @ロフトプラスワン[青春愛欲編]Jさん&豪さんの世相を斬る! @ロフトプラスワン[青春愛欲編]感想
単純に文字に起こすよりは、ライブで見たいと思える内容。下ねたの重ね方とか、ちょっと活字には向いていないのですね。その点がみうらじゅんさんとかとの違い。でも面白いのは間違いないので人前で読むのはやめた方がいいと思います
読了日:2月18日 著者:杉作J太郎,吉田豪
身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論感想
昔、こういう20代女性の性告白シリーズで「アノアノ」ってあったけど、それと近いものを感じる。日経出身の慶大性だった女性がAVに出て云々…というのは、記号として消費された感もあって、この本はむしろ私小説のようなものだろう。ヤンキーマンガの名作もどれもが私小説であるディティールの再現にあるように、こうした女性による私小説も時代性が感じられるところが面白いポイントかな。でも結局、あぶく銭の使い方や消費のありようはそれほどバリエーションがあるわけでもなく、その時々の言葉の端々からこの人の知性を感じさせる内容でした
読了日:2月18日 著者:鈴木涼美
80's洋楽読本 (洋泉社MOOK)80's洋楽読本 (洋泉社MOOK)感想
資料的な価値はなくて、むしろ雑誌の特集記事のようなざっくりとした構成。卓球やカジヒデキとかがそれぞれきいていた80年代の音楽について語っています。それに80年代と言えばやっぱりMTVが出てきたビデオクリップの時代でもあるのでその辺も網羅しています。やっぱりこの頃ぐらいまでは音楽も細分化されていなくて、おおむねほぼ洋楽という大きなジャンルで聴き込むことができた最後の時代だなと思う。これは90年代のクラブミュージックにもいえるけど、80年代が糞だというのも越えて、もはや香ばしいほどの醸成された世界観だことよ
読了日:2月18日 著者:石野卓球,カジヒデキ,片寄明人,Zeebra,高木完,西寺郷太,ハヤシ,松武秀樹,大根仁,小野島大,恩藏茂,東郷かおる子,高橋芳朗,平山善成
かわいい仏像 たのしい地獄絵かわいい仏像 たのしい地獄絵感想
タイトルにあるかわいい仏像とは、これまたみちのくの作品ばかりなのだ。しかも表紙のようにアンパンマンみたいな素朴仏の世界は、先の国立博物館でのみちのくの仏像展でも見ることができたが、庶民の信仰の産物として生み出されてきた仏様の愛らしいこと。これまでの美術史観とは別のベクトルの調査結果の産物でこれを見た時の衝撃はこの本を読んでも健在。さらに地獄絵は矢島新さんによる素朴絵に続いての解説。これもいい。このへたうまの系譜がたまらなくいとおしく感じるのは、日本の原風景なのかもしれない
読了日:2月17日 著者:須藤弘敏,矢島新
ヤンキーマンガガイドブック (文化系のためのヤンキーマンガ入門)ヤンキーマンガガイドブック (文化系のためのヤンキーマンガ入門)感想
極めてさらりとした「マイルドヤンキー」な本。全体的なケンカマンガや暴走族のマンガの系譜を分類し、紹介するのがメイン。なので個別のマンガの思い入れを読みたいと思った人にはいささか物足りないかも。でも個人的には巻頭に「WORST」の作者の高橋さんが出てくるんですがインタビューの中で圧倒的な影響としてどおくまんの暴力大将と花高をあげていて、この人は本当にわかってらっしゃると、膝を打った次第です(笑)。マンガ体験は80年代で終わっているんだけど、ヤンキーものは今もなかなかいい作品がありそうと思ったのが読後感でした
読了日:2月17日 著者:
赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の2赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の2感想
そしてその2。隠れた名作なんかも網羅しているのがこちら。個人的には「鮭」の高橋由一が書いていた「豆腐」というのが静物画の対象として豆腐を描いていたその題材の西洋との置き換え方に愕然とする。さらに北斎が書いた珍しい肉筆画のスイカもやっぱりエロティシズムを感じたり、小林清親のモダンな作品にも心惹かれる。ここでも赤瀬川さんの解説が素晴らしい。鑑賞者になったり画家そのものになったり、往時の人になりきったりと変幻自在。こちらの読書もまた至福のひとときでした。
読了日:2月17日 著者:赤瀬川原平
赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の1赤瀬川原平の日本美術観察隊 其の1感想
赤瀬川さんの文章をこうやってまとめて読んでいくと、やっぱり路上観察で培った細かな観察眼とおかしみみたいなものが伝わってくる。そこ観点でみている日本美術の名作がずらり。大判の判型で作品を全体と細部などにこだわってみせていく。その1はいわゆる美術史にでてくるような作品が多くて、風神雷神のかいせつとかどこか微笑ましいのは作品の醸し出すユーモラスもさることながら、赤瀬川さんの文章の賜物だったりします。楽しく読ませてもらいました
読了日:2月17日 著者:赤瀬川原平
みちのくの仏像 (別冊太陽 日本のこころ)みちのくの仏像 (別冊太陽 日本のこころ)感想
国立博物館での展示でみちのくの仏像を見るにつれいわゆる為政者の発願とは別の文化の中で醸成されたみちのくの仏の世界観にものすごく、衝撃を受けました。そうしたみちのく仏をほぼ網羅した内容がこの太陽の別冊。さh氏んもきれいだし、秋田の小沼神社に聖観音菩薩立像には頭の部分にめんこい雪の精のような顔も乗っていたりしてこれはこれはなんとも愛らしい。また地元の大工さんが作ったような素朴仏もある。技法にも神道との習合が違和感なく成立していて、ついつい東北の素朴さの世界に浸る。それは貧しさからくるのかもしれないがそこがいい
読了日:2月16日 著者:
なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか 最強11神社―八幡・天神・稲荷・伊勢・出雲・春日・熊野・祗園・諏訪・白山・住吉の信仰系統 (幻冬舎新書)なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか 最強11神社―八幡・天神・稲荷・伊勢・出雲・春日・熊野・祗園・諏訪・白山・住吉の信仰系統 (幻冬舎新書)感想
いわゆる神社で言う八百万の神の由来は何かというのを探った本。タイトルの八幡様は朝鮮からの渡来神だというのが、白眉だろうがそれ以外も色々な信仰から結びついた神様の存在があるのが面白い。もともと神道というのは後の時代になって整備されたもので、その地域や為政者たちの信仰形態が地層のように形式だけがドンドンと蓄積されてきた宗教なのだろうなと考えさせられました。
読了日:2月12日 著者:島田裕巳
浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)感想
実はタイトルはあんまり関係なくて、日本における宗教各派の勃興と歴史をつづっている。島田氏の分類によれば、日本の宗教の動きと言えば、浄土信仰、法華経、密教に禅ということになっている。その4つの潮流から日本の宗教を読み解くもので非常にわかりやすい気がしました。結局、タイトルの答えは本の後半にありますけど、庶民に布教すれば、そこが一番、信者が増えるのは当たり前の答えですね
読了日:2月12日 著者:島田裕巳
刺青とヌードの美術史―江戸から近代へ (NHKブックス)刺青とヌードの美術史―江戸から近代へ (NHKブックス)感想
個人的には、春画がなぜあんなに性器を精密に書いたのか当時の人たちの性的なものへの関心が垣間見える。そんなエピソードが続くのだが、この本を読んだのは、江戸時代に作られていた生人形という精密な男女や残酷な場面を再現した作品群の話に興味がわいたからだ。現在では日本でもほとんど現存していなく、むしろ海外で評価されている身体表現としてそのリアルさは西洋人に驚きを持って迎えられているのが面白い。日本ではそれが見せ物として成立させていたというのだから、江戸の日本人のヌード感は今の日本人と全く別物だという気がしてならない
読了日:2月12日 著者:宮下規久朗
音楽談義 Music Conversations (ele-king books)音楽談義 Music Conversations (ele-king books)感想
作家の保坂さんと音楽評論家の湯浅さんは同級生の56歳。そんな二人の対談は同級生だからこその同時代のニュアンスをまとっていて、とても楽しく読めました。音楽の話なんだけど、東急線沿線だったり、東京のレコード店の話とかはどこか昭和40年代の景色も垣間見せてくれます。そこはかとなくゆるい感覚から醸成された批評眼は読んでいて時にどきりとさせられてしまう。後半はエレキングの連載でない語りおろしなのも雑誌の読者には親切でした
読了日:2月10日 著者:保坂和志,湯浅学
五社英雄 (文藝別冊)五社英雄 (文藝別冊)感想
いやはやかっこいい。フジテレビをケンカして辞めて逮捕や不遇の時期を経て、鬼龍院でカムバックも、独自の映像世界で魅了してきた五社さんの生き様そのものが映像のように蘇る証言の数々。春日太一さんの責任編集だから、盟友でもある俳優座の仲代達矢氏の言葉の重みや欠かせない岩下志麻とか、まあ豪華でもある。太く短く濃厚な人生はかっこいい。真似できないけど(笑)
読了日:2月10日 著者:春日太一
健康はシモのほうからやってくる健康はシモのほうからやってくる感想
腸とか健康の話から、最後は書類送検された時に村西とおるのインタビューを読んで救われたとか先生の著書の中でもここまで心情を吐露していて面白い。前から気づいていたが腸のコンディションがまるで脳の役割のように生命を司る大事な部分であるという認識は、三木成夫先生の議論にも繋がるのだろう。しかし、本自体には難しい部分もなく、むしろ腸内環境を整えることで人間の免疫力や健康にもいいというもので、内容はまさにさらっとライトなエッセイだ
読了日:2月7日 著者:藤田紘一郎
仏像図解新書 (小学館101新書)仏像図解新書 (小学館101新書)感想
NHKのほとけの履歴書って番組があって結構、個人的には仏像知識のベースになっているんだけど、それをバージョンアップした内容でわかりやすさではかなりレベルが高いのがこちら。仏像の階層というか、それぞれの役割に応じて色々な仏像があるのがわかる。この本の書いてあることがわかるとかなり仏像の世界観に浸れることに気づいた。信仰とかでなく、親しみとかそんな感情がわいてくるのが不思議。だから仏像は楽しいのかも
読了日:2月7日 著者:石井亜矢子,岩崎隼
仏像は語る 何のために作られたのか (光文社新書)仏像は語る 何のために作られたのか (光文社新書)感想
結構、コンパクトに白鳳時代から鎌倉あたりまでの仏像のできた所以を紹介していて、やはり天皇や武士の台頭などの為政者の発願が多くて、時の仏教のありようのようなものが感じられた。コンパクトな文章でそれぞれのお寺の代表的な仏像の案内でもある。ただ、最後のあとがきを読んであれっと思った。著者が突然、難病にかかって云々…と原稿のトーンとは違う感じに違和感を持ってしまったのが残念。色々、評判もある人のようで他の著書を読む意欲が失せてしまった
読了日:2月4日 著者:宮元健次
たのしみを財産に変える生活たのしみを財産に変える生活感想
大分前に本多翁の本は随分と読んでいてその熱が再燃中。その時はまだライブドア騒動の前だったかな。蓄財という観点で読んでいたんだけど、実はその先にある努力主義とでも言うべきものが心に残りました。メンデルの法則をとりあげて、人間も運命論的に遺伝子によって才能もきまってしまうという説を退けていて、人間こそ、ある程度までは努力においてその人生が開花するという考え方が揺るがずあり、齢80歳を超えての著書の中で断言しているのだから説得力がない訳がない。明治神宮の杜を作った人として再び注目したけど長期視点を常に感じる人だ
読了日:2月1日 著者:本多静六

読書メーター
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2015年02月07日

2015年1月の読書

2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4654ページ
ナイス数:177ナイス

マンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家 ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンスマンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家 ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス感想
マンガだから簡単かと思いきや結構、ベースとなる知識は必要かな。でもこの本は、ルネサンスのダヴィンチにミケランジェロやラファエロあたりのよく知られた話もありから比較的読みやすかったかも。そうした中でも個人的にはあまり、その芸術家の人生に関心のなかったボッティチェリやティツィアーノのエピソードは結構、面白かったです。劇的という意味ではエルグレコの激しい性格を物語るストーリーもあまり興味のない人には面白いかもしれない。邪道かもしれないけどヴァザーリの列伝よりもマンガで芸術家の人生を覚えるのはわかりやすいです
読了日:1月31日 著者:
ロングセラーを呼ぶマーケティングロングセラーを呼ぶマーケティング感想
ショップジャパンというテレビ通販で定評のある会社の代表のエピソード集。思えば、この会社ってビリーズブートキャンプの大ヒットのイメージがあったんだけど、それはいきなり失敗だったと斬って捨てる。要は、一時的なブームになってもその後の売上が減ってしまっては意味がないというのはもっともな話。そこでデータを用いてアフターケアや顧客からのフィードバックを元に仮説を立てていくというマネジメントサイクルに到達する。そのストーリーをこの代表はブラピの映画「マネーボール」になぞらせる。地味な話だが実務で参考になる金言多い
読了日:1月31日 著者:ハリー・A・ヒル
マンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブランマンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブラン感想
スペインの宮廷画家だったベラスケスとゴヤのストーリーから始まる物語はいずれも読みやすいものばかり。宮廷をテーマにしている画家を題材にしているので、当時の時代背景もわかったりして、ベラスケスとルーベンスが交流があったこととか、つい記憶から落ちていたけど、同時代性を考えるとなかなかすごいものがある。この本では最後にマリーアントワネットの肖像で有名なルブランの女性ならではの苦労譚が新鮮でありました
読了日:1月28日 著者:
一夜漬け日本美術史 (BT BOOKS)一夜漬け日本美術史 (BT BOOKS)感想
読み進めながら一部既視感があったので、何事かと思ったらしっかり美術手帳の連載も読んでいたのでありました。それにしても連載時にはちょうど芝の増上寺でやっていた狩野一信の五百羅漢も紹介していた頃で、その後まさか、村上隆氏が芸術新潮で、インスパイアされた作品制作するとは思わなんだと懐かしいばかり。ここでの白眉は森村泰昌さんと山下先生の対談でありまして、横山大観や岡倉天心そしてそこに繋がる東大や東京芸大、院展という権威の系譜について異議申し立てをしていたのが面白かった。なるほどそれが辻先生や素朴に繋がるのかと合点
読了日:1月28日 著者:
老人力〈2〉老人力〈2〉感想
老人力の1冊目では書き漏らしたけど、小難しい本ではなくて、身辺雑記のネタ帳とも言うべき、面白い日常が綴られているのが、この本どころか赤瀬川さんの本の好きなところだ。貧乏育ちというか、日常の中におかしみを見つけるというのは、日本の紀行文学やエッセイ、説話集なんかにも通じるシンプルさがまたいい。知れば知るほど、その日本の文学界はもとより現代美術や批評家の側面も無視できないなあと思うばかり。飄々としているかっこよさもいい塩梅だ
読了日:1月28日 著者:赤瀬川原平
老人力老人力感想
おそらく本が売れた時に読んだ気もするけど、今の40代になって読むとまったく違う感慨に包まれる。この本が売れた98年ってまだ、失われた20年すら意識すらすることなく、どことなく閉塞感の漂う中、まだ社会の速度に合わせざるを得ない感じがあったんだけど、そこからちょっと外れてみるというのを意識的に言葉にしたのが、ヒットの要因だと思う。赤瀬川さんのどこかいつも「人の土俵に乗ってたまるか」というヒョウヒョウとしたスタンスは実はラジカルで、無抵抗主義にも繋がるような思想的な到達点のように思えてならない
読了日:1月27日 著者:赤瀬川原平
僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話感想
ぴっかぴかの一年生とかのコピーを考えた伝説のクリエイティブディレクターの人が若い現役世代のためのメッセージを集めたのが本書だ。実は、あんまり期待せずに読んだら、言葉のキラキラ感が尋常でなく、やはりコピーの人と思わせられてしまった。少し前に林真理子さんが「野心のすすめ」を出して、若者の野心をあおっていたのと同じ匂いのする本。タイトルの差がだいぶ、この本当の知名度を分けてしまったかもしれないけど、両書とも読んだ身としては言葉と肉体が直結していて清々しい気分のなれる本だと思います。自己啓発とは違う意味でも読める
読了日:1月27日 著者:本田亮
ニッポンの音楽 (講談社現代新書)ニッポンの音楽 (講談社現代新書)感想
佐々木さんの本は難解なイメージがあったのだが、今回ばかりはテーマもあるのだろうか、ものすごく読みやすい本であった。日本の音楽史をはっぴいえんどからYMOそして渋谷系から、小室、そして中田ヤスタカへ…。基本的にYMO直撃世代がたどってきた音楽体験がそのまま本書の構成になっているのだから読みにくいはずがない。最後の部分では、日本の内と外を巡る関係を持って日本の音楽がJに変質していった点を指摘しているけど、佐々木さんのような電子音楽に興味を持つ人の音楽経験って総じて似ている結論に落ち着くのではないかな。オモロ
読了日:1月27日 著者:佐々木敦
ネオンと絵具箱 (ちくま文庫)ネオンと絵具箱 (ちくま文庫)感想
主にクッキーシーンの連載をまとめていて、いつになく音楽誌だからかリラックスした文章の数々が結構好きです。ここでもスクラップや街で見かけた看板の文字や捨てられている日用品の中に「美」を見つけるのだけれど、無為の美とでもいうべき時間の経過によって、その役割を終えようとしているモノたちへの共感というのが素敵すぎる。結局、意図していないものにこそ、美しい。美しくしようと飾らないものこそ美しいという逆説的な文章の中には平凡の中から垣間見えるおかしみをあじわい尽くそうという日本的な侘び寂びが感じられるのは気のせいかな
読了日:1月21日 著者:大竹伸朗
見えない音、聴こえない絵見えない音、聴こえない絵感想
実は久々に読んだ。東京都現代美術館でやった「全景」展のスクラップブックは確かに圧巻だった。その前後の心の動きや、準備期間のこともまるで備忘録のように詳細にこの本の中では描かれていく。実際、多くの立体や鳴りもの(楽器をモチーフにしたオブジェ)なんかもあってインパクト満載だけど、30年近くにわたるコラージュ的なスクラップこそ、この人の内面そのものではないかと思ったものだった。その内蔵むき出し感は、そこはかとなく大竹さんの文章からも醸し出されるのだけれど、この本ではむしろおとなしめだったかな。でも元気出る本
読了日:1月21日 著者:大竹伸朗
職業、DJ、25年 沖野修也自伝職業、DJ、25年 沖野修也自伝感想
このはったりのかまし方とか痛快なことこの上ない。KYOTO JAZZ MASSIVEの中心メンバーで日本のクラブジャズシーンの中心人物である沖野さんの自伝だから面白くないはずがない。とにかくYMOからアジッドジャズにラリーレヴァンの影響とか90年代にクラブミュージックにハマっていた自分の体験と重なる部分も多いなあ。でも知らぬ間に京都に移住していたり、色々と後半にはくラブシーンの大きな地盤沈下もあったりしてなんとなく寂しい感じがするのも確か。でも何かまたでかいことしてくれそうな沖野さんの今後が楽しみ
読了日:1月19日 著者:沖野修也
残酷な20年後の世界を見据えて働くということ残酷な20年後の世界を見据えて働くということ感想
面白い。20年後に世の中が劇的に変化するのを具体的な例や、著者の周辺にいる知人のエピソードなどを交えて紹介している。人口減少にグローバル化、そして業界の栄枯盛衰、そんなことを言っていたらきりがないかもしれないが、未来予測としてはなかなか標準的なイメージかなあ。でも外資系でないワタクシのような人から見ると、最終的に投資と起業に解決策がおかれているのは、なんだか合点が行くような行かないようなはぐらかされたような気分になったのも確か。でも良い本だと思います
読了日:1月19日 著者:岩崎日出俊
インターネット的 (PHP文庫)インターネット的 (PHP文庫)感想
糸井さんがバラエティで釣り三昧な姿を見た時には、愕然としたのだがその後、「ほぼ日」というものを手に入れて始めた動きは本当にキラキラとして驚かされた。YOUという教育テレビの番組で見せていた時代の寵児感が、50歳を間近にして開花する。それがインターネットの世界というのが実に痛快で面白いという他ない。このネットの登場による論考は今読んでも新鮮なのはいうまでもないけど、それよりも人生を二毛作のように、2つのピークをモノにしていくこの人のバイタリティに何よりも魅了されるばかりだ
読了日:1月18日 著者:糸井重里
日本の素朴絵日本の素朴絵感想
自分の好きなジャンルの絵というのをここまで、タイトルで見せてくれたのにびっくり。よくよく考えれば、安西水丸サンもユネスコの世界無形文化遺産になった山本作兵衛さんの作品も素朴画の系譜に連なるなあと思うばかり。白隠さんや蕪村の絵とかはすでに見ていて眺めていても楽しいし、昔の絵巻物の「素朴」としかいいようのない味わいの深さに、もう顔がほころびっぱなしでした。言葉を通じてその世界を定義することで見えてくる世界があるんだなあと本の感想とは違うのだけれど、気づかされてものすごく、読んでいてうれしくなる本でありました
読了日:1月17日 著者:矢島新
はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)感想
私を含めて、世界史を苦手な人というのはカタカナの固有名詞が多いことがあげられるのではなかろうか。ローマという大きな時代の区切りにおいても然りだが、ここで出てくる人名や国名などは最小限に抑制されている。むしろ、往時のローマ人のポリシーや社会制度、法律や政治、元老院や貴族などについてより誌面が割かれておりこれはかなり親切な作りと言えよう。でもそこはローマ。膨大な研究テーマともなりうるものをかなりコンパクトに紹介している上、かなりの咀嚼力が必要なのは言うまでもない。ローマは一日にしてならずだから当然かもしれない
読了日:1月16日 著者:本村凌二
独学でよかった独学でよかった感想
映画評論家の佐藤忠男さんに関心がわいたのはNHKの「知の巨人」で思想の科学の鶴見俊輔さんの回を見た時に登場したのだが、そのイメージと映画評論が結びつかなかった。このなかば自伝のような著書の中では、工員出身の佐藤さんはヤクザ映画の評論で出てきたのも思想の科学だったそうな。梅棹忠夫先生も「市井の思想家」というものに評価してきたけど、そういう中で独学で育んでいった佐藤さんの人生は読んでいて清々しいものすら感じました
読了日:1月13日 著者:佐藤忠男
ニコニコ哲学 川上量生の胸のうちニコニコ哲学 川上量生の胸のうち感想
川上さんの本を読んでいると実に、ホリエモンやITのカリスマな佇まいから別の次元の経営者が出てきたなあと思わされる。飄々とした印象ながらベースにあるのは、やはりエンジニア的な視点だ。それはネットの原住民出身であるという自負とその世界のパイオニアであると言う懐刀をたたえつつも、それをおくびにも出さずに、経営者らしからぬ言動で、周囲を煙にまくのだからたまらない。ある意味の脱力したトリックスターみたいな部分が魅力だけれど、その視点の先にある情報社会のベースとなる考え方はセンス抜群だし、まだまだ現役感が強い経営者だ
読了日:1月13日 著者:川上量生
宮崎哲弥 仏教教理問答宮崎哲弥 仏教教理問答感想
宮崎さんがこんなに思想的なベースが仏教にあるというのは驚くほかない。この本を読むとそれぞれの宗派の人たちのキャラクターというのは、属する宗派によってかなりの部分規定されているのではないかと思うほど、アイデンティティと結びついているのは、ものすごく驚きでもある。そうした中で、いきなり白川密成さんと身体技法としての宗教が、仏教であるという指摘には、今更ながらうなづけるし、そうした中で、浄土真宗の身体儀式の欠如した教義というのも面白い議論だった。死についての議論もまたしかりで本書の通底した問題意識で実に興味深い
読了日:1月13日 著者:宮崎哲弥
青空としてのわたし青空としてのわたし感想
著者のお坊さんは今や注目の人なんだけど、曹洞宗から上座仏教へ。その後もアメリカで出会ったマインドフルネスを求めていくというストーリーは、僧侶としてのそれよりもまるで救いを求めるスピリチュアルな人の道程の物語である。オウム事件後に、日本にも一般的に紹介されるようになった上座仏教と大乗仏教の矛盾を乗り越えていこうというスタンスを仏教3.0と称して実践や悪戦苦闘していく様子は、なんとも壮絶。ただそれ以上にオウム事件の時に感じたグルへの絶対性や他力とも本願とも違う黒い雲や白い雲が消えた状態=青空として定義していく
読了日:1月8日 著者:山下良道

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